最近の新しい治療薬について

暖かかった11月が本来の秋らしい気温になりあっという間に乾燥の季節になりました。
先日、といっても少し前になってしまいますが、レオファーマさんのアトピー性皮膚炎の治療薬(生物学的製剤・皮下注射剤)"アドトラーザ” についての勉強会をやっていただきました。
 生物学的製剤とは、最先端の技術により生物から産生されたタンパク質を有効成分とする薬で、体内のタンパク質を補うものや、病気の発症に関わる物質を抑えるものがあります。
 生物学的製剤はタンパク質からできているため、内服(口からのむと)すると消化酵素で分解されてしまうため、皮下や静脈への注射剤として投与します。
 アドトラーザはIL­13を抑える薬ですが、このIL13は皮膚の炎症・かゆみやバリア機能低下に関わるサイトカインで、アトピー性皮膚炎患者さんにおいて増えていることがわかっています。アドトラーザでIL13を抑えることにより、皮膚炎症やかゆみなど皮膚症状を改善させます。
具体的には腕/太もも/腹部のいずれかにシリンジ型のアドトラーザを皮下注射します。
初回が4本、2週間ごとに2本ずつを継続注射していきます。いまのところシリンジ型なので自己注射できず、来院にて注射することになります。

デュピクセントがIL4/13両方の受容体にくっついて蓋をして抑制するのに比べ、アドトラーザはIL13そのものにくっついて抑制します。
IL13の2型炎症反応を抑制し、それにより皮膚のバリア機能および微生物叢の多様性を回復させて、炎症赤み・かゆみ・皮膚肥厚を軽減すると考えられています。
 適応になる方は15歳以上で、今までの治療で効果不十分な中等度以上のアトピー性皮膚炎の患者さんとなります。薬価がまだやはり少し高く、1か月目が3割の方で約52,000円、2か月目以降が3割の方で約35,000円くらいとなります。まだまだ高額ですが、デュピクセントの副反応で起こりうる結膜炎の発症率もアドトラーザではかなり少ないようですし、選択肢の一つになるかと思いました。
また今後も情報収集をしていきたいと思います。

もう一つの新しい治療薬として、リットフーロという難治性円形脱毛症の内服薬です。

円形脱毛症の従来の内服薬"オルミエント”がアトピー性皮膚炎など他疾患にも適応がある中で、"リットフーロ”は円形脱毛症唯一に対して開発された飲み薬です。円形脱毛の炎症に関わる"JAK3”(ヤヌキナーゼ3)と"TECファミリーキナーゼ”という炎症性サイクルを阻害する内服薬で、従来の難治性・全頭型脱毛症の患者さんの脱毛面積の改善が大きく期待のできる薬です。
従来の薬が15歳から適応であったのに対し、リットフーロは12歳からの適応になり、12ー15歳の患者さまにとって朗報となります。

昨日リットフーロ発売記念講演会(坪井良治先生・大山学先生・木下美咲先生・乾重樹先生・原田和俊先生・植木理恵先生・伊藤泰介先生)がありウェブ聴講いたしましたが、幼少時期より罹患する方にとっては12歳になれば治療スタートでき、低年齢だからといって副反応(帯状疱疹や感染症)や安全性に変化がないということは喜ばしいことです。
 全頭型(100%脱毛面積)の方も多く含めた対象患者さんデータで、半年(6か月)内服で23%の方が脱毛面積20%以下へ改善、1年内服で43%の方が脱毛面積20%以下へ改善する結果は、とても期待できる薬だと思います。
坪井先生が最後に、「リットフーロは円形脱毛症唯一に開発された待望の薬なので、本日の情報を明日からの臨床に生かしながら、皮膚科医が慎重に大切に育てていきましょう」という言葉がとても印象に残りました。

 

 ずっと闘病していた実父が亡くなりました。最後まで頭はしっかりしていたのでずっと在宅医療をうけながら自宅で一人電動ベットの上で過ごしていたのでこの1~2か月は私と姉も交代で夜までもしくは一時は泊まり込みましたが、最後は父の不安も大きく5日間だけ病院に入れていただき最後は穏やかに旅立ちました。私も姉もできる範囲でやり尽くしたので後悔はありませんが、最後まで生への意欲のある父の最後の様子はとても勉強になりました。5人の孫にも会え私たち二人の娘の夫達にも最後まで良くしてもらい幸せだったと思います。
まだまだ姉も私もやることがたくさんありますが、父の希望通り祖先のもとに導かれていけますように納骨まではしっかりとやるべきことをやっていきたいと思います。
娘たちも息子も、身近な祖父が亡くなった後も一時ショックを受けたとしてもすっかり全く通常運転。もちろん当たり前ですが、若さの生命力を感じます。若いって素晴らしい。たくましい。と改めて思います。私自身も昔はそうで、母や父ももしかしたらそう思っていたのかもしれないなあと思うと自分の年齢経過を心から実感しました。

 

 

わかりにくい膠原病:皮膚筋炎について

50歳前くらいから夜洗顔後や起床時に瞼だけ赤くはれることが多く、乾燥もあるのかと年齢を実感します。
瞼が赤くはれる皮膚疾患として忘れやすい疾患が、膠原病の一つ、皮膚筋炎です。

皮膚科学会雑誌の最新号に金沢大学松下貴史先生の皮膚筋炎についての論文が掲載されていましたので改めてチェックしました。

骨格筋を障害する自己免疫性筋炎である"多発性筋炎”の中で、筋肉の症状に加え特徴的な皮膚症状を伴うものを"皮膚筋炎”と呼びます。特徴的な皮膚症状とは、
ヘリオトロープ疹:うわ瞼の紫紅色の浮腫性紅斑
ゴットロン丘疹:手指の伸側の紫~赤い丘疹
ショールサイン:背中上方~肩の紅斑と線状の掻把痕
Vサイン:首前面~胸上部の紅斑

また、筋症状としては、近位筋(体に近い方の筋肉)障害が主で、腕が挙げにくい・階段が登りにくい・椅子から立ち上がりにくい などの症状が出てくることや、筋肉自体の痛みも出てきたり、重症例では嚥下障害も伴います。
また、30%~40%に間質性肺炎を合併し咳・息切れ・呼吸困難などが現れ、一部の症例では急速進行性間質性肺炎を合併して死亡率が高くなり、早期に発見・加療が重要になってきます。

皮膚筋炎では通常の膠原病で陽性になる抗核抗体は陰性になってしまうことが多く、代わりに皮膚筋炎に特異的な抗体が近年判明してきていて、特にその抗体の種類により予後良好・間質性肺炎が急速に進行してしまうタイプ・高齢者で悪性腫瘍が合併されやすいタイプ などと特異的な抗体により早期の治療が可能になり、今までだと予後不良であった方も救命できるようになってきました。

東海大学リウマチ内科の佐藤慎二先生の記事によると、実際の臨床では、皮膚筋炎といっても筋肉症状がない方も、肺症状がない方もいて、逆に多発性筋炎の中には皮膚症状がない方、また筋肉・皮膚症状が目立たず呼吸器症状だけが出る方など、一つの症状が目立って他の症状が目立たない場合は見逃されてすり抜けてしまっている可能性もあります。一番重篤な急速な進行性間質性肺炎を見逃さないためには、必要な場合は判明してきたそれぞれ特異的な抗体を測定するなど、まず疑うことが重要です。
具体的には、若い方で明らかな原因がなく間質性肺炎を併発している場合は膠原病の可能性があり、特徴的な皮膚症状や近位筋の症状がないかどうかを問診し、必要であれば抗ARS抗体・抗MDA5抗体を測定することがすすめられます。特に抗MDA5抗体が陽性の場合は80%に急速進行性間質性肺炎が合併するため早期の強力な加療が必要となります。この予後不良な抗MDA5抗体陽性の皮膚筋炎の場合は典型的な皮膚症状に加えて、手指の内側の赤い丘疹(逆ゴットロン)や手指の皮膚潰瘍が特徴です。

このような予後不良な皮膚筋炎の症状のみでなく、通常の典型的な皮膚筋炎の皮膚症状をも皮膚科医として見逃さないことが大切だと改めて感じました。マブタの浮腫性紅斑・手指の赤い丘疹・背中や首胸の紅斑など一見見過ごしやすい皮膚症状から時には皮膚筋炎を考える必要性があると思いました。

 

2学期が始まり、高1の娘の一人は男子校の文化祭に行きまくっています。わざわざ制服のセーラー服を着ておシャレして気合い入れていく姿をみると思春期の生命力パワーを感じます。男の子と仲良くなりたい時期ですね、JK生活をenjoyしていて何よりです。
夏休みの担任面談で、家庭が100%心を許せる場であるか、心を100%許せる友人がいるか、などのアンケートの結果を先生が教えてくださり、普段知ることができない思春期の娘たちのことが少しだけわかりました。それぞれの娘たちが親の遺伝子を受け継ぎ、父・母の似ている面をそれぞれ受け継いでいるなあ、と思います。一人は友達といつもワイワイとするのが大好き、一人は友達もいるけど一人の時間がないと疲れちゃう、一人が好き。双子でも違っていて面白いです。

実家の母は施設に入所して一か月経ち、時々姉と交代で面会にいっていますが、かろうじて私たち娘たちのことはまだ分かり、行くとすこし喜んでくれます。入所前は朝にも夕方にも帰らなきゃ、と徘徊がありましたが、今は周りにスタッフの方々の目があり、それだけでも安心です。
少しずつ今の生活に慣れて穏やかな毎日になるといいと思います。
父は実家に一人ですがほとんど食べられず、唯一飲むことができる抹茶クリームフラペチーノを相変わらず姉と交代で持っていっています。終活にむけていろいろ自分のお葬式についての希望も考えるようで、その終活の様子はとても参考になります。とにかく穏やかに苦痛がないように過ごしてほしいと思います。元気いっぱい娘達を連れていくと、"その若さ生命力を少しでいいから分けてほしい” "アタシもホントにわけてあげたい”と冗談を言い合っています。本当に、アンパンマンのように少しでも分けてあげられればいいのですが、その生命力は対比的でなんともいえない気持ちになります。
人生あっという間、やりたいことをやれるうちにやったほうがいいですね…

手の美しさについて

コロナがあけて、ヒトと交流する機会や直に会う機会も多くなりました。マスクを外した今ニキビ・いぼ・ミリウムなどの治療にいらっしゃる方も増えてきました。顔と同様、人前に出やすい部位が手や指です。手が荒れていたり、爪がきれいでないと顔以上に恥ずかしい思いをすることもあります。今月の美容皮膚科雑誌”ベラペレ”の特集:ハンドケアの中で川島先生(女子医大)・古山先生(自由が丘クリニック)・金子えみさん(手のパーツモデル)のお話を読みました。

歳を重ねると、手根骨や筋組織の萎縮・皮膚が薄くなることによって手の甲に影ができたり、血管が浮き出て見えてきます。若い時の血管が見えないふっくらしたシミのない手の甲を取り戻すには、美容医療では、ヒアルロン酸注入やシミへレーザー加療も有効です。ただ手背のシミへのレーザーは炎症後色素沈着が起こりやすいため、IPL(光治療)を何回か重ねる、もしくは、ハイドロ・トレチノイン外用療法を薦める先生もいらっしゃいます。手のパーツモデルで有名な金子さんが日常で気を付けていらっしゃることは、

顔と同じくらいに、化粧水・保湿クリームをマメにつける

手が濡れたら水分をすぐ拭き、早めに保湿する

洗剤使用時のゴム手袋使用前に保湿クリームをたっぷり塗り、ポリエチレン手袋をはめてからゴム手袋をはめて密封療法を兼ねる

日焼け止めを毎日使用する

だそうです。何より継続ですね。 毎日のちょこっとの気遣いで、美しい手を目指したいていきたいと思います。

 

手湿疹のある方は、7割をしめる"刺激性接触皮膚炎”と、"アレルギー性接触皮膚炎”・"アトピー型手湿疹”に分けられます。

刺激性接触皮膚炎は物理的・化学的刺激により利き手の指先や爪周囲・手のひらなどに好発し、乾燥やカサカサした紅斑が湿疹化し、慢性化すると皮膚が厚くなり亀裂が出来たりします。夏は汗ぽうが生じ、種々の接触物質や自己汗に対する過敏反応で湿疹化していきます。冬は乾燥で皮膚バリアが低下し、経皮的に接触物質が刺激を生じやすくなります。

アレルギー性接触皮膚炎は、職業性のことが多く、美容師さんや飲食店勤務の方などは手以外に全身に広がることがあり、しっかりとした防御と治療が必要です。

アトピー型手湿疹の治療はアトピーの治療に準じますが、外用もステロイド以外に、コレクチム(JAK阻害剤)軟膏や、モイゼルト(PDE4阻害剤)軟膏、など選択肢が増え、治療しやすくなりました。

手の表皮の下の真皮の8割を占める膠原線維の間に存在する弾性線維は、紫外線により変性し"しわ”を形成します。皮膚に弾力性を与えるために真皮を良い状態を保つことが手の若さの秘訣です。
毎日の紫外線ケアとマメな保湿=地道な努力を続けていきたいと思います。

 

今月半ばに母が実家近くの施設に入居し2週間がたちました。実家には満身創痍の父が一人でいるため、実家通いは変わらずですが、父の負担が少なくなり、私と姉の気持ちの負担も少し少なくなりました。母は夕方になると帰りたいということもあるようですが、それは入所前の自宅にいるときと同じ夕暮れ症候群だと思います。基本的には機嫌のよい時は穏やかに過ごしているようですこし安心です。
私も将来娘たちの負担にならないように母のように認知といえども素直にいたい、と思います。何とか穏やかに暮らしてくれてありがたい限りです。
父は食欲が低下し、一日DAKARAをなんとか2本、ヨーグルトドリンクを1本、おかゆがわずか、の食生活ですが、唯一スタバの"抹茶クリームフラぺチーノをゆっくりと飲むことができます。貴重な322kcalです。姉と交代で週に何回か届けています。体が思うようにならない、食事があまりとれない日々を"情けない。”とこぼす姿に涙が出てきますが、その最後まで日常を続けようとする生きざまは立派です。学ぶものがあります。 とにかく穏やかに毎日過ごせますように、できる範囲でヘルプしていきたいと思います。

 

実家のことで運動時間が取れなくなると、歳のせいか腰の痛みや重さが出てきます。体力維持のためのFEEL CYCLE と最近マシンを使用するピラティスを始めました。ただただ汗をかいてすスッキリするFEEL CYCLEと違い、マシンピラティスは姿勢を意識して終わると背骨がまっすぐに修正されたような気分になります。ピラティスの先生は皆さまとてもスタイルが良く、その姿を見ているだけで気持ちが上がります。マシンを使った方が初心者にはとてもやりやすく、ピラティスはきつい、というイメージが覆りました。しばらく普段の姿勢の修正治療のために続けていきたいと思います。

アトピー性皮膚炎の内服薬"サイバインコ”について

あっという間のお盆時期になり台風の影響が心配されるこの週末です。

7月はあっという間に毎日が過ぎ、勉強会でうかがったJAK内服薬の"サイバインコ”をまとめるのが遅くなってしまいました。

サイバインコはJAK(ジャック)というアトピーの炎症に関与するサイトカインが活性化させるのを阻害させてアトピーの炎症や痒みを抑える飲み薬です。具体的には、IL4,IL13,IL31のアトピーの炎症や痒みに大きく関与するサイトカインを抑えることで効果を発揮します。

対象として、今までの治療で効果が乏しかった12歳以上のアトピー性皮膚炎患者に処方できます。
海外のデータですが、アトピー性皮膚炎の患者さんが青少年の場合、症状がある程度悪化するとその両親のQOLも低下させることがわかっています。特に、頭部・顔・首・手指・手に病変がある場合よりQOLが下がります。
具体的にはある程度の検査のうえ、12歳以上の方に一日1回、100mg錠もしくは200mg錠を投与します。飲み薬のため注射剤と異なり痛みもなく内服できます。痒みは早い方で2週間でかなり実感され、2週間で200mg錠の場合はデュピクセント注射剤よりも痒みの抑制が優れているという結果も出ました。

副作用として、免疫機能を下げることより、帯状疱疹や単純ヘルペス、ニキビ、風邪症状が代表的で、まれに肝機能障害・血小板減少・間質性肺炎・静脈血栓塞栓症などがおこるため、定期的な採血や検査が必要になります。

事前の検査でも、肝機能・肝炎ウイルスを含めた血液検査と、結核を否定するために胸部レントゲン検査が必要です。

内服開始してからは、具体的な目標を設定しそれに向けて寛解(良い状態を保つ)維持することが大切です。痒みに早期に効くJAK内服薬は何種類か処方できるようになり、ますます期待できる治療薬です。
具体的には、痒みで眠れなかった夜が眠れるようになり、勉強や仕事に集中できるようになる・痒みを感じない日はなかったが痒みを感じない日が増える・痒みが出たとしても薬を外用すればすぐ良くなる・半袖を着られるようになる・など、通常の方では当たり前のことが可能になります。

薬価はまだ高額で、3割負担の方では100mg錠の場合1か月で45000円、200mg錠の場合1か月で68000円となります。会社の付加給付制度や高額医療費制度を利用して負担を軽くできる場合もあります。
今まで諦めていたような痒みを伴うアトピー性皮膚炎に対し様々な内服薬や注射剤が出てきたことは本当に良いことです。
今後も諸先生方の講演会で情報を集めていきたいと思います。

 

この夏の間に実父の体調や体力もだいぶ落ち、認知の母を面倒見ることにも限界がきたため実家近くの有料介護付き施設への母の入所契約を行い、いよいよ入所することになりました。契約の手続きや部屋へ入れる家具の購入など、姉とともにバタバタとこの夏休み中に行いました。
母もいざ入所すると元来の社交的な性格で徐々に慣れてくれることと思います。
ショートステイ中も最初は"帰りたいコール(認知の母にとっては帰る=今の自宅へではなく、祖父母と昔住んでいた母の実家のようです)”だったようですが慣れてくると施設の若いお兄さんスタッフとお喋りしてもらって少し楽しそうな様子に少し安心。本当に自分の子供が幼稚園に入園し慣れてくれるかしら、と心配する気持ちにそっくり。
認知になってからも仲間の集まりに誘って面倒を見てくださっていた母の古い友人たちにも少し報告しました。本当に皆さまに感謝です。

母の認知の症状も時と場合により、突然怒りの感情が出てきたりお金に厳しくなってきたり、教科書通りに進行していると感じることもあります。突然怒りだす母をみると今だ涙が出てきてしまいますが、なるべくそのような母の姿はすぐに忘れて良い面だけをみるようにしています。自分の感情を守るためにも…

母の姿は将来の私たち姉妹の姿と重なり、学ぶことがあります。比較的明るく社交的だった母の面影を残す現在の様子に、同じ認知症でもこうありたいと思ったり、昔と変わらず接して面倒をみてくださる古い友人方の真似ができるようになりたいと思ったり。
人生なんてあっという間。私が今度はその番になるのだろうな、そして今私や姉が感じていることを将来娘たちが感じるようになるのかな…と思うとなかなか娘たちに強いことが言えなくなってしまうのが難です…

高1の娘たちは夏休みの宿題としていくつか大学のオープンキャンパスに行っています。高1の秋以降少しずつオープンキャンパス後大学受験にむけてスイッチが変わるお子さんもいるようですが、娘たちはキャンパスの場所と雰囲気を感じるのみ。高1JK夏休みを満喫!と遊びの計画でご多忙な夏の日々です。あっという間に夏休みも終わりますね。

 

新しい薬 ベピオローション・アポハイドローション について

あっという間に7月です。皮膚科の講演会や勉強会も多い6月でしたが、6月から処方できるようになった外用薬がいくつかあります。
まず一つ目は、ニキビ面皰の治療薬のベピオゲルの乳液タイプ、ベピオローションです。角質剥離作用のある従来のベピオゲルはそのピーリング作用により、慣れるまで乾燥や赤みが出ることがありますが、ローションタイプはそのピーリング作用はそのまま、乳液状になり、乾燥しにくいのが大きな利点です。出した感じもまるでヒルドイドローションのように白い乳液状でまるで保湿剤のよう。皮膚にのばした感じも乾燥感がなく、毎日夜使用できます。今まで以上に抗菌剤のポイント使いと併用して面として外用できそうです。こうして処方できるようになるまではマルホの研究者の方の長い開発の苦労があったようです。今までのゲルタイプより処方しやすくなりました。思春期の方の赤ニキビの前の面皰にベピオローション、良いです。

6月からの新しい皮膚科薬2つ目は、手のひらの多汗症の塗り薬"アポハイドローション”です。二宮君のテレビCMでも認知度が上がり、今まで悩んでいた患者様から相談を受けることが多くなりました。

腋窩多汗の発症する平均年齢が19.5歳であるのに比べて手掌(手のひら)多汗症の発症平均年齢は13.8歳で若いことが特徴です。
紙やノートやテストを汗で濡らしてしまう、スマホやPCの操作がしにくい、スポーツや音楽楽器が手汗のため制限されてしまう、など、若い方でも学校生活にも支障をきたすことがあり、周囲の目が気になり人との接触を避けるようになってしまうケースもあります。治療法があることの認知が広がっていないために成人になっても手汗のために困っている方は多いと考えられています。
アポハイドローションは、エクリン汗腺に発現している"ムスカリン受容体”に対して抗コリン作用により発汗を抑制しますが、抗コリン薬なので目の中に入ると眼圧が上がるため、寝る前直前に手のひらに塗り、朝は水洗いすることが必要になります。

具体的には、さらっとしたローションタイプの薬を寝る直前に5プッシュを両手のひらに塗り、就寝。翌朝手を水洗いします。治験では12歳からのデータがありますが、それ以下の子供に処方できないわけではありません。
今までは薬もなく我慢してきた方にとっては塗れば効果がある”アポハイドローション”は朗報です。

 

また先日、比較的新しいアトピー皮膚炎の新しい外用薬:モイゼルト軟膏の1周年記念講演会がありました。
アトピー炎症に関与する"PDE4”というサイトカインを抑制する塗薬ですが、炎症を抑えることにより、アトピー性皮膚炎の"寛解維持”(良い状態を維持させる)の治療薬に適している塗り薬です。
辻学先生(九州大学病院油症ダイオキシン研究診療センター)の講演ではアトピー性皮膚炎では、皮膚の角質バリアの "フィラグリン・ロリクリン” が低下することにより皮膚バリアが下がることが分かっていますが、"PDE4B”という成分がフィラグリン・ロリクリンの発現を下げていることが分かりました。モイゼルト軟膏の成分"ジファミラスト”はその"PDE4B”を抑制することにより、フィラグリン・ロリクリンの発現を誘導させてアトピー性皮膚炎の皮膚バリアを改善させます。
つまりモイゼルト軟膏はアトピー性皮膚炎の炎症を抑えるのみでなく、皮膚のバリアが上がることがわかりました。

また、免疫担当細である好塩基球の研究で著名な鳥山一先生の講演では、モイゼルト軟膏の"ジファミラスト”は好塩基球のIL4産生を抑制することがわかっています。アトピー性皮膚炎の方の約半数の方が急性掻痒フレア(急に悪化して強い痒みが出る)を経験していますが、この急性掻痒フレアに好塩基球が関与していると考えられています。
好塩基球が分泌する"ロイコトリエンC4”が "急性掻痒フレア” を引き起こすことがわかっていて、モイゼルト軟膏により急性フレアが予防できるのでは思われます。

アトピー性皮膚炎の治療は、炎症を抑える"寛解導入”の治療と、良い状態を保つ"寛解維持”の治療に分けられますが、モイゼルト軟膏は皮膚バリアを上げる・急性掻痒フレアを予防するという観点からも、寛解維持の時期に有用な治療薬と考えられます。

6月は実家の父が暑さのせいもあり、食事量が減って体力がなくなり姉と交代でヘルプに行く日が増えてきました。できれば施設やホスピスでなく家で過ごしたい希望があり、在宅医療に切り替えるための準備や点滴のために短期間入院することになりました。認知症の母を一人にできないため、母のショートステイ先を探してもらい、バタバタと準備。母には申し訳ないですが父入院期間は近くの施設へショートステイしてもらっています。姉と良く話すことは、認知発症前にはよく、"(親のことよりは)自分たちの家族・生活を第一にね” と言っていた母なので、今のこの状況も多分許してくれるだろうと思います。
自分たちのことを考えると、自分が元気なうちにいずれ娘達には同じように伝えておかなきゃ、と思います。娘たちが罪悪感なく母親を施設に預けられるように。認知を発症してしまうと伝えたくても伝えられないですし……

 

もうすぐ高1の娘たちは夏休みの課題で"オープンキャンパスに行く”ことが必須となり、少しずつ調べたりしています。まだまだ大学受験には危機感ゼロの様子ですが、徐々に大学、それに向けた受験の認識が出てくるのかしら…出てきてほしいところですが、まだまだメイクと美容ダイエットに夢中なJKです。まあ楽しく学校にいくのが一番ですね…そう考えることにします。

 

フットケアの重要性について

通常の保険診療をしていると、足についての相談・治療が案外多いことに気付きます。足にトラブルがあると歩行がスムーズでなくなり、特にご高齢者では"サルコペニア”(歳とともに筋肉が減少していくこと)の原因にもなります。
私自身も、今のところは痛みなくスムーズに歩行できることの大切さを実感しながら、なるべく歩くようにしています。
今月号の美容皮膚科雑誌"ベラペレ”は"フットケア特集”でしたが、各方面の専門家の方々のお話を読み、足のケアの重要性を再確認いたしました。

*外反母趾について(下北沢病院 菊池恭太先生・高田研先生)

足の親指の根元から指先までを”第一列”といい、荷重を支える意味でも、足のアーチの一部としても構造的な安定性おいても重要な部位ですが、外反母趾ではこの"第一列”が途中で曲がり、破綻するため、親指の荷重支持機能が低下し、代わりに第2・3列(第2・3指)への荷重が増加します。転倒リスクも増加しやすくなり、軽症であっても脚の不安定性を訴える方が多いようです。

外反母趾の原因としては内的要因として、遺伝、性別(女性が多い)、年齢、個別の解剖学的要因(扁平足・親指が長い・第一列の可動性が大きすぎる)などが挙げられ、外的要因として、長時間の圧迫(ハイヒール、先細りの靴)が挙げられますが、ヒールでなくても足底アーチへの負担が大きいバレエシューズなどの"ペタンコ靴”もより症状を悪化させることもあるようです。

靴としては横幅のせまい靴は避け、ヒールは1~1.5cmが理想、靴の中で足が前後にずれないように靴ひもやストラップなどで調節できるものが理想です。
また"Hoffmann体操”のような、左右踵をつけた状態で両親指をゴムにかけ、親指を外転させる運動は軽症例では有効であることと、アキレス腱のストレッチも重要だそうです。アキレス腱が硬くなることで歩行時の足底アーチが低下させ、外反母趾が悪化するそうなので、アキレス腱を柔らかく保つことが大切なようです。


*足底の角質増殖について(順天堂 小川尊資先生・須賀康先生)

①胼胝・鶏眼
外的な荷重や圧が常にかかってできる胼胝(たこ)、繰り返し1点に荷重がかかりできる鶏眼(ウオノメ)は削り処置やスピル膏貼布により角化部位を除去して圧迫を解除します。

②VSLDN(verrucous skin lesion on the feet in diabetic neuropathy)
糖尿病神経障害を持つ方の足底が乳頭状に角化・増殖し出血や潰瘍ができる状態で、糖尿病歴が長くコントロール不良の方に多くみられます。患部から二次感染を生じると感染が重症化することもあるため、慎重な処置が必要であるのと、インソールなどで荷重を除去することも必要になります。

③遺伝性の掌蹠角化症
点状のウオノメ様角質増殖が多発する”点状掌蹠角化症”や、足底に痛みの強い胼胝様の角質増殖がみられる"線状掌蹠角化症”はともに、外的刺激なく遺伝子変異による遺伝的な角化症で、処置や外用(尿素軟膏・サリチルワセリン・ビタミンD外用)の対症療法を継続していくことになります。

④更年期角化症
更年期以降の女性の足底に円形に角化局面を生じ、亀裂を生じ歩行時の痛みを伴うことも多く、ホルモン減少の関連が考えられています。若い方でも卵巣摘出を受けた方、甲状腺機能低下の方にも発症することがあるといわれています。

⑤掌蹠膿疱症
炎症期の水疱や膿疱が落ち着くと角質増殖や落屑(カサカサ厚い角質がむける)が主体となることもあり、鑑別が必要です。ビタミンD外用や免疫抑制剤内服・生物学的製剤の注射など治療の選択肢が増えてきたため、あきらめずに加療して寛解維持を目指します。

どのような病態においても基本は対症療法にはなりますが、患者さんの日常生活が良好に保てること、外観上だけでなく痛みなく歩行することができ、筋力低下に進まないようことが目標となります。

また、自由診療ではありますが、踵や足の足底関節にヒアルロン酸やハイドロキシアパタイトなどを注入し歩行時の痛みを緩和させる治療もあります。なにより、足の形や骨格は人それぞれですので個人に合ったインソールや靴を選択し、正しい歩き方を学ぶこと。体幹を鍛えて足の負荷のみで歩かないように心がけること、など足に関するフットケアはますます奥深いと実感した特集でした。私たち皮膚科医も局所の皮膚の治療のみでなく、足から全体のアドバイスができるように心がけたいと思いました。

 

あっという間に6月に入り一年の半分が過ぎてしまいました。 私も姉も、仕事が半日の日と週末は実家のヘルプが増えてきました。実母は認知の症状が徐々に進み、外出時に見失うと迷子になりやすく、また夜間も突然出かけようとすることがあります。自分の体調も限界の父が一人でみるのはすでにいっぱいいっぱい、私と姉のヘルプも精一杯で、実家近くの有料老人施設でショートステイを行って慣れてから入所してもらうことになりました。いざショートステイも初めは大変かもしれませんが、徐々に慣れていってもらうしかない、ということで姉と意見が一致していて話を進めています。父もいろいろ思うことがあることと思いますが、その時々にまた姉と父と相談して母がなるべく穏やかに暮らせるように願っていきたいと思います。

そして変わらず、何事にも体力は必要、運動と休養を忘れずに残り半年を過ごしていきたいと思います。

腋窩多汗症治療のためのワークショック

製薬会社マルホさん主催の大変小規模な皮膚科医師ワークショップに本日午前中参加してきました。全国各地からの先生方のご講演や、少人数での率直な意見交換を通して普段お話できないような先生方とお話が出来て、とても有意義な時間でした。また、直接先生方とお会いし話ができて、コロナが明けたことが実感しました。

まず、盛岡市の佐々木豪先生のお話では、他の疾患の2次的な多汗でないかの見極めの大切さを確認しました。例えば、甲状腺疾患でも多汗を生じることがあるので、そのような続発性の多汗の方が処方薬の"エクロックゲル”や"ラピフォートワイプ”を使用しても、せっかく効果が高い薬が"効かない薬”になってしまいます。また、本来は腋窩の多汗がない方が使用しても同様に"効果がない”と判断されて薬の評判を下げてしまいますので、まずは何かの疾患がベースに無いことを確認し、患者さんにも続発性の多汗症があることをお話し、多汗の原因となる病気の症状が出てきたときに気が付いてもらうことが大切だとうかがいました。また、きちんと多汗症の診断をした方にだけ処方すること、思い込みだけの患者さんを除外することなども確認しました。
次に、患者さんと医師側の治療ゴールの差を埋めるお話をききました。腋窩多汗の患者さんの約40%は"ワキ汗が完全になくなること”をゴールと考えているのに対し、医師側は患者さんが"日常生活を快適に送れる程度に多汗を治療する”ことをゴールと考えます。
少しの汗は必要であること、皮膚にとっても体にとっても汗をかくことは大切であること、を患者さんに伝えることも大切だと確認しました。とても臨床的で実践的なお話でした。

次に福井県の石黒和守先生のお話では、汗のメリットについてのお話がありました。
*皮膚に潤いをもたらし、乾燥から守る 
*汗の中の抗菌タンパクが皮膚の常在菌のバランスを整える 
*ダニなどのアレルゲンを失活させる 
*角質層が剥離してしまうをブロックする(=皮膚バリアを保つ)
また、"汗”(=かいた後の汗)と"発汗”の違いを患者さんに説明し、発汗(=適度な汗をかくこと)は良いことであることを伝えることをうかがいました。

講演の後のグループディスカッションでは、松本市の飯島みわ子先生と佐々木豪先生と、日常の外来での多汗症患者さんとの向き合い方、話し方、治療薬の選択方法など、具体的な情報交換ができました。
普段東京の先生方とお話することはあっても、東京以外の地域の開業医の先生との情報交換はとても濃密で有効な2時間でした。早速明日からの腋窩多汗症の方の診療や、処方薬 "ラピフォートワイプ”と"エクロックゲル”の説明に役立てていきたいと思います。

 

この週末は娘二人が修学旅行で不在、夫も母の日の親孝行の旅行で不在、長男だけのとても家が静かな土日でした。実家にいき家事をやったり、ヨガやfeelcycle(暗闇バイクエクササイズ)を思う存分やろう!と意気込んでいたものの、実家のヘルプのあとは少し疲れて1コマだけのフィールサイクルで終了。40代半ばまでなら何コマまでもこげていたのに…と体力の低下を感じます。今日は講演会のあとの1コマでしたので、多量にかく汗の重要さを実感しながら気持ちよく運動出来ました。やはり、何も考えずに運動することは気持ちよいな~特に帰宅後の子供たちへの家事を考えずに運動することも久しぶりで、修学旅行の有難さをかみしめました。 肌寒い日もありますが、体力維持のためにも、熱中症予防の"暑熱順化”(汗をかくことで体を夏の暑さに慣らすこと)のためにも、汗をかく運動を続けていきたいと改めて感じました。

酒さ様皮膚炎や口囲皮膚炎、また酒さとニキビダニについて

長いマスク生活やこの春の多かった花粉や黄砂の影響により、顔の肌荒れ・バリア機能低下の方が多かった今春です。痒みやあかみ・ニキビ様の赤い丘疹が見られたり、長くステロイドやプロトピックを外用していた方の中には顔全体に赤みや赤い丘疹・膿疱が見られる“酒さ様皮膚炎”となっている方がいます。
同じく口の周りに赤い丘疹や膿疱ができる"口囲皮膚炎”はステロイド外用歴がない方にも生じます。
現在で分かっている研究や実際の治療について記載のある、東京女子医大の福屋康子先生のマルホセミナーの記事を読みました。

酒さ様皮膚炎・口囲皮膚炎ともに抗生剤の内服が有効であることより、原因として細菌の関与が考えられますが、いわゆる感染症というわけでなく、細菌は炎症を誘発する因子として働くのではと考えられます。つまり、細菌の増殖(+ほかの因子)により何らかの機序を介して炎症が引き起こされると考えられています。

福屋先生によると、
もともと体質的にある細菌を保有 または、 どこからか定着しステロイド外用で細菌が増殖して発症。
⇒ ステロイドやプロトピックを外用している間は抗炎症効果で、症状が抑えられ、軽快しているようにみえる
⇒ 外用を続けると細菌はさらに増殖
⇒ 外用を中止すると炎症は一気に進み、皮膚症状は悪化
⇒ 抗菌剤を開始すると、細菌が減少するまで時間がかかるために炎症は少し長引くが、細菌が減少すると炎症も徐々に軽快

酒さ様皮膚炎は、ステロイド外用を行うすべての人に生じる訳ではないため、トリガーとなるような細菌の保有や、自然免疫機構の異常などの体質的要因があるのではと考えられています。確かにステロイド外用している全ての方に生じてはいないような気がします。

一方、以前から、ステロイド外用歴の長い方や、外用歴のない方でも、顔の血管拡張系の赤みやニキビ様の丘疹のあるいわゆる“酒さ”の方とニキビダニとの関連が指摘されてきました。
田邊 洋先生(天理よろづ相談所病院)の論文によると、顔の毛包脂腺に寄生するニキビダニ(毛包虫)は、一定数では病的害は起こさず、むしろ脂質の分解や真菌・細菌の貪食を通じて皮膚常在菌の恒常性を保ち皮膚の健常化に役立っているため、無症状の皮膚ではニキビダニを治療する必要はありません。
顔の赤みや毛細血管拡張・膿疱が特徴の"酒さ”の方では、通常の方に比べてニキビダニの有病率が高く、70%といわれています。
過剰なニキビダニの増殖は毛包や皮脂腺の閉塞させて皮膚バリア障害を生じます。
酒さの方は皮膚が過敏になり皮膚バリアが低下していますが、これにもニキビダニの増殖が関連しています。
ニキビダニの増殖を防ぐには、一番は適切な洗顔、適切で新しいスキンケア商品や清潔な化粧パフの使用、むやみに触らない、などが挙げられます。当たり前のようですが、多忙でストレスフルな日々のなかでは気をつける重要な事項です。

ニキビダニ増殖に伴う"酒さ”の治療としては、テトラサイクリン系抗生剤の内服・メトロニダゾール(ロゼックスゲル)外用やイオウカンフルローション外用(カサカサしない程度に上澄みのみ)などが挙げられ、有効性も高いです。スキンケア製品ではアゼライン酸入りの製品などもすすめられます。この1年くらいで酒さの赤みにも有効なロゼックスゲル(メトロニダゾール)が保険適応で処方できるようになり(ゆっくりとジワジワ効いてくる)少し治療の選択肢が増えてきました。
単なる"ニキビや肌荒れ”ではない"酒さ・酒さ様皮膚炎・口囲皮膚炎”の情報を今後も集めていきたいと思います。

 

認知症の実母の今後のケアを考え、姉と一緒に何か所か有料老人施設の見学にいっています。二人の行きやすい場所で実際の入居者の方々の様子を見て母の姿をイメージできる場所、都会でも毎日のダイニングからお庭の緑が見える場所、など実際見に行くと良くわかります。今はスタッフも皆さま若く明るく、お元気な方も多く入居されていらっしゃる様子で、どこも穏やかな明るいイメージです。
ずっと母と過ごしてきた父の思いや体調も考えながら、私たち自身の生活や体調も上手にバランスをとるのは難しい限りですが、姉と思いを共有しながら相談しながら考えられるのは有難いと実感します。現実には一人ですべて背負うのはなかなか大変です。

親たちのヘルプをするためには自分たち自身の体力と気力が重要です。
引き続き有酸素運動で体力を、出来ればヨガなどでストレッチ、あとは毎日前向きに仕事をすること、を引き続き心掛けていきたいと思います。

高校生になった娘達はまあまだ日々機嫌は変わりますが、よく喋るときはうるさいほど喋ります。ついつい色々親としては言いたくなってしまいますが、SNSで高田純次さんんがおっしゃっていた事をなるべく心掛けるようにしています。
高田さんが、若者に対して気をつけていること=説教をしない・自慢話をしない・昔話をしない
案外難しいことです。特に相手が自分の子供だと…。 でも高校生になると徐々に反抗期も過ぎ、少し大人として冷静に対等に関係を築いていく、ということを今年の目標にしたいと思います。

 

 

フェムゾーンの美容医療について

マスクも外す時間も増え、4月からの新生活を楽しみにしていらっしゃる若い患者さんに接すると春がきた喜びとともに嬉しくなってきます。ニキビの治療や顔のいぼや稗粒腫治療で来院される方も増えてきました。

美容皮膚科雑誌“ベラペレ”の特集で慶田朋子先生(銀座ケイスキンクリニック)・関口由紀先生(泌尿器科 女性医療クリニックLUNA理事長)・川島眞先生(東京女子医大皮膚科名誉教授)のフェムゾーンに対する美容医療を読みました。

近年VIOのレーザー脱毛をされる方も多くなり、脱毛後に自分のフェムゾーンの変化に気が付き受診される方もいらっしゃるようです。外陰部の黒ずみやたるみなど外観上の変化や、外陰部のかゆみ・乾燥・いたみ、また頻尿・尿漏れ・再発性膀胱炎など、主訴は様々で、2014年からは閉経関連尿路生殖器症候群(GSM:genitourinary syndrome of menopause)と提唱されています。関口先生によると、閉経後女性の約50%が何らかのGSMの症状が認められるそうです。外側の大陰唇はたるみ、内側の小陰唇は肛門部位から徐々に短くなり、最終的には消失していきます。前側にある陰核(クリトリス)は徐々に奥まって閉じていきます。また、尿道口は本来は縦長に締まっていますが徐々に丸く変形し、尿漏れなどの症状をおこします。日本人女性は欧米人にくらべセクシャルアクティビティを行う方が少ないため、GCMに悩む方がまだ少なく、少し痒みが出ても市販薬を外用したり、自主的な骨盤底筋トレーニングを行っているのが現状です。

とはいえ、私たち皮膚科医がご相談を受けた際は以下のような皮膚疾患を除外することが大切です。

性器ヘルペス、梅毒(扁平コンジローマ)、ボーエン様丘疹症、尖圭コンジローマ、
硬化性萎縮性苔癬、女房外パジェット病、有棘細胞がん、
亜鉛欠乏性皮膚炎、固定薬疹、扁平苔癬、乾癬、
外陰部カンジダ症、股部白癬、紅色陰癬
外陰部皮膚掻痒症、脂漏性皮膚炎など

黒ずみに関しては、50歳ごろまでは女性ホルモンにより黒くなるのが正常で年齢とともに徐々に薄くなってきます。慶田先生はそれでも気になる方に対して、ピコレーザーによるトーニングを3~4回程度、以降3か月ことにメンテナンス、関口先生は弱いモードのフラクショナル炭酸ガスレーザーにて治療されていらっしゃるそうです。すこしでも薄くなる治療があるようだと心強いですね……また、50歳以降の黒ずみの原因は主に痒みや炎症後の色素沈着が多いそうなので、摩擦を徹底的にさける、かぶれを早く治す、なども大切だそうです。

また、おりものの汚れを気にするあまり肌に合わないシートを毎日使用しかぶれてしまったり、過剰な清潔志向による洗いすぎもトラブルのもととなります。何となく触れるのは怖いと思いがちですが、関口先生によると、入浴時など清潔な時に膣に指を入れて触ってみる、指を入れて指を締めるようにしてみる、中の筋肉を押してほぐすこともお勧めだそうです。

GSM(閉経関連尿路生殖器症候群)に対して普段のお手入れとして、保湿と骨盤底筋トレーニングが重要だそうです(関口先生)。
保湿に関しては、まずは全身用保湿クリーム、効かなければ膣専用保湿剤、さらに効果不十分な場合は性ホルモン入りのオイルやクリームがすすめられます。塗る場所は、大陰唇~小陰唇のほか、膣の前方と、膣内部(指の第一~第二関節入るくらいまで)です。
骨盤底筋トレーニングとしておすすめが、“指を膣に入れ、指を締めつけて持ち上げるように膣と尿道をギュッと締めます。ギュッと締めて息を吐きながら上にグーっと持ち上げ、5秒そのまま、その後リラックス” これを10回繰り返しです。

また、膣のゆるみに対してはHIFU(ハイフ)やEr:YAG(エルビウムヤグ)レーザーが、閉経後の萎縮性膣炎に対してはフラクショナル炭酸ガスレーザーが皮膚粘液を増やして皮膚浅層をふっくらさせるそうです。

今は様々な美容医療器具により、顔だけでなくフェムゾーンの悩みまで治療できる時代になったことがすごいと感じる一方で、恥ずかしいことと蓋をせずに、正しい知識をもった上で自分自身のフェムゾーンに関心を持ち続けることも大切だと思いました。

 

先月は実家の両親のヘルプが増え、子供たちの春休みや行事のお付き合いがあり、自分の運動時間が減ってきたなあ、と思っていましたが、案の定、急に首肩が痛くなり、関節がかたーくなってきました。 これはまずい、と今日は早起きして朝から久しぶりにホットピラティスを1時間しただけですが、股関節がスムーズに、首の痛みも軽減。やはり、運動は何が何でも続けねば、と改めて感じました。
母のショートステイを申し込むのにも少しだけ父にも気を使い、施設にも気を使い、ケアマネさんの意見を聞き……
姉とこの思いを共有できることが唯一救いです。今の自分自身でも分からない少し揺れ動く親への気持ちを、自分の娘たちも将来感じてしまうのかしら、などと考えてしまうともう、娘達にも何も言えなくなってしまいそうです。
考えても100%正しい正解はないと思い、あまり深く考えすぎず、毎日毎日を、真面目に仕事と運動を続けながらその他は “ケセラセラ” で過ごしていきたいと思います。

多汗症治療について

3月に入り急に暖かくなり春の訪れがうれしくなります。
4月の新生活に向けて、そしてマスクオフにむけてニキビの患者さんも増えてきた気がします。マスクは自由の新生活、久しぶりの少し解放感のある春です。

最近初夏に向けて腋窩多汗症のウェブ講演会も増えてきました。また先月号の日本皮膚科学会誌には治療ガイドラインが掲載されています。
腋窩のみでなく、手のひら・足の裏の多汗・顔の多汗など悩みは人それぞれですがそれぞれ気にしながら生活するとQOLが下がります。皮膚科で治療や指導ができる範囲も増えましたので他の受診のついでに相談を受けることも増えています。

エクリン汗腺は汗を出すことにより体温調節を行うほか、皮膚の表面に湿度をもたらす、そして汗の中の抗菌タンパクによる自然免疫作用により細菌・ウイルスから守る作用もあり、汗をかくことは重要なことと考えられています。ですが、頭・顔・手のひら・足の裏・腋窩に、温熱や精神性の負荷により大量の汗がおこり、日常生活に支障をきたす状態を、原発性局所多汗症といいます。

多汗症の患者さんの汗腺の数や大きさは変化がないことから、汗腺の発汗機能の亢進と考えられます。

まず、手のひら・足の裏の発汗は温熱刺激には反応せず、恐怖・痛み・不安などの精神的負荷により誘発される精神性発汗です。脳の中の精神性発汗中枢へ入る刺激に対し、病的に多量の発汗が持続的に生じる場合に原発性の掌蹠多汗症と診断されます。掌蹠の多汗症は若い青年期までに発症し、多くは多汗症の家族歴があることから、遺伝的に生じた交感神経(発汗系)の病的な過活動と考えられています。

つぎに、頭と顔の発汗の生理的意義は、高温に弱い脳を守るための"脳の冷却”であり、温熱により出る頭・顔の汗は体温調節性の発汗です。ほかの全身に比べて発汗の閾値が低いため、体では汗が出ないような低体温でも頭部の発汗が始まることがあります。
加えて緊張が強い時も頭・顔に発汗することがあり精神性発汗と考えられます。この時、低体温で発汗するため "冷や汗”といわれます。
"冷や汗”は他にも発汗閾値の低い腋窩にも生じますが、精神活動の亢進した脳を冷却するための発汗と考えられます。

頭部・顔の発汗は緊張など精神的負荷に対し反射的に病的に多量発汗が生じることがあり、持続的に数時間続くことがあり、頭部顔面多汗症と診断されます。また、頭と顔はトウガラシに含まれる辛み成分"カプサイシン”が温度感受性のレセプターを刺激して発汗が生じる部位です。(味覚性発汗)

腋窩は温熱による発汗が生じる温熱性発汗が主体ですが、ほかの部位に比べて汗の出始める体温の閾値は最も低いため、体が発汗しない低い体温でも発汗が生じることが特徴です。
低い体温で早めから発汗が生じること、腋窩は蒸れる部位で汗が蒸発しにくいこと、により少しの汗でも多汗症と認識されやすい部位です。
腋窩は精神性刺激でも発汗しますがほかの体の部位でも生じる現象です。この精神的負荷に過剰に反応し、病的に持続的な発汗が出現する場合にも腋窩多汗症と診断されます。精神的発汗と温熱性発汗が共存する腋窩では、洋服に汗の影響が出やすく、市販の制汗剤など衛生用品の年間コストは国内245億円と言われています。

多汗症の診断として
①発症が25歳以下であること
②左右対称性に発汗すること
③睡眠中は発汗が止まっていること
④1週間に1回以上多汗のエピソードがあること
⑤家族歴があること
⑥日常生活に支障をきたすこと

の6症状のうち2項目以上当てはまり、症状が6か月以上認められる場合を多汗症と診断しています。

 

この2~3年で新しい治療も多汗症の治療として以下のような選択肢があります。

塩化アルミニウム液(10%~20%) 
 皮膚角層内の汗管に塩化アルミニウムが沈着して閉塞させることにより汗を止めます。具体的には腋窩・手のひら・足の裏に20%~30%の塩化アルミニウム液を夜寝る前に外用し、効果が出るまで毎日外用することが薦められています。重症例には外用後に手袋やサランラップで密封療法を行います。顔には10%~20%塩化アルミニウム液を寝る前に外用、昼間に外用しても良いそうです。
塩化アルミニウム液の副作用としては、刺激皮膚炎(かぶれ)が多く、その場合は短時間外用で洗い流すなどが薦められています。現在のところでは処方できる塩化アルミニウム液は存在しないため、市販のものとなります。市販の塩化アルミニウムの中で代表的なものはデンマーク製の"パースピレックス”があり、15%のオリジナル、8%の敏感肌用、25%のストロング、などの種類があります。肌に合わせて濃度が選べることと、ロールオンタイプでどこにでも塗りやすいのが特徴です。

抗コリン薬の塗り薬
 2020年にエクロックゲルが、2022年にシートタイプのラピフォートワイプ処方できるようになりました。汗管のコリン作動性の反応を阻害してエクリン汗腺の発汗を抑えます。抗コリン薬の飲み薬に比べ全身の副作用がほとんどなく使いやすいですが、毎日継続すること、目の中に入らないこと(眼圧上昇のため)が大切です。

抗コリン薬の飲み薬
 外用しにくい顔の多汗症や掌蹠多汗に対して薦められますが、副作用として抗コリン作用による口の渇き・ドライアイなどがあり緑内障・前立腺肥大の方には使用できません。また高齢の方が長期間抗コリン薬を内服すると認知症の発症リスクが20%増加させることがわかっていて高齢者の方が抗コリン薬を3か月以上内服することは避けたほうがよいとされています。

マイクロ波
 マイクロ派照射により、汗管が多く存在する真皮の深い部位が加熱され、水分の多い汗管が最も加熱されて変性することで発汗が抑制されます。効果は高いですが自費で高額です。


これから薄着になり多汗症の方が悩ましい時期になります。適切な解決策を指導できるように今後も情報を集めていきたいと思います。

 

先日、斎藤彩さん著の "母という呪縛 娘という牢獄” を一気に読みました。これは2018年に起きた事件のノンフィクションですが、医学部受験を母から強要された娘が9年浪人のあと看護学部に入学し看護師になり、その後も助産師試験を強要された末に母を殺してしまった事件です。最近の事件なのでニュースでも記憶に残っています。当時はこの残酷な殺人の様子を表面的にしかわかりませんでしたが、当初は否認していた殺人を最後に認めた心理がすこしわかり救いを感じることができました。この母はとても非現実的な強要の仕方で信じられませんが、この母の一部くらいは私にもあるのでは…と思いました。
息子のときより娘には、自分が人生の先輩という意識のもとで進路以外にもなにかと口出ししてしまいがち、でも自分の進んだ生き方しかわからないので狭い範囲の中での価値観で考えてしまいがちです。
具体的には、娘達には同性にも異性にも頼りすぎることなく、自信をもって"自分”を持っていてほしいと思い、そのための対人関係やうまく世の中生きていくためのアドバイスをついついしてしまいます。これも自分の価値観を押し付けているという意味では、この事件の母のほんの一部は持っているのかもしれない。
母と娘の関係は永遠の課題だと思いました…。

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