酒さの病態と治療について

12月もあっという間に過ぎ去り、一年がアッという間過ぎて…とついぼやくと、患者様のお一人にそれは健康だからそう思えるんだよ、と教えていただきハッとしました。確かに一日中病床についていたら一年が長く感じられることと思います。
改めて健康に今現在を生きることを感謝して、新年を迎えることができました。
このお休み中に、延山嘉眞先生(慈恵医大)相原良子先生(あい皮膚科)共著の “酒さアトラス” という本を読み、複雑な“酒さ”の病態と治療を再確認しました。

酒さとは、頬・鼻・額に持続的に顔の紅斑・丘疹・膿疱・毛細血管拡張が特徴のある慢性的な皮膚症状ですが、皮膚バリアも低下し過度な表皮からの水分喪失が生じ、見た目のみでなく、皮膚の乾燥・知覚過敏・灼熱感などをも生じます。

皮膚のみでなく、眼の症状が主の“眼型酒さ”があり、皮膚の酒さと合併することが多いですが、20%では目の症状の方が皮膚より先行するそうです。知っておかないと分かりません。
眼型酒さでは、異物感・ヒリヒリ感・乾燥や視力障害が出現し、他覚的にも涙目・結膜炎・充血・眼瞼炎や眼瞼の毛細血管拡張・目周囲のむくみなどが見られます。

皮膚の酒さにはヒトの皮膚に寄生する毛包虫(ニキビダニ)の関与が分かっていますが、酒さ皮膚の表皮だけでなく深い真皮までも、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)が増殖しそれにより免疫を担うT細胞の機能不全がおこり、その結果毛包虫が増えやすい状況になると考えられています。

そしてこの血管内皮細胞増殖因子により血管新生作用が生じ、酒さや毛包虫では常に紅斑が出ると思われます。

従来のステロイド外用によるものだけではなくアトピー性皮膚炎の治療薬のプロトピックの外用によるものやマスクの接触刺激によって紫外線の感受性を増やしてしまいVEGFの産生が増え、酒さの病態を悪化させるなど様々な誘因が関与していると思われます。いろいろ複雑な病態です。

まず外用の治療では、アゼライン酸・メトロニダゾール・イベルメクチン・ミノサイクリン・イオウ製剤・トラネキサム酸・オイラックスなどが挙げられますが、それぞれ刺激感や乾燥、保険外のものもある、効きが遅めなどのマイナス点もありどのように組み合わせて加療するかが難しいところです。メトロニダゾールはロゼックスゲルが保険適応で処方できます。

内服の治療では、ビブラマイシン・ミノマイシン・の従来の加療に加え、イソトレチノイン(ビタミンA・レチノイド製剤)・プラケニル(免疫調整薬)・アーチスト(β遮断薬)などの報告例もでてきていて、今後の報告が注目されます。もちろんそれぞれ副作用や保険外のものもあるため慎重さが求められます。

それぞれの方の治療歴や血管拡張の度合い・病態を判断したうえで外用や内服の副作用も考えながら治療方法を選択していきたいと思います。そしてひき続きアップデートしていきたいと思います。

 

12月はアトピー性皮膚炎の治療薬“イブグリース”の全国講演会が福岡であり、子供3人も合流して初めての福岡を満喫してきました。とにかく食事が美味しい!街も空港からすぐで行きやすい!
ラーメン・おすし・屋台・もつ鍋・あまおうパフェで2日間で本当に食い倒れ旅でしたが、子供3人もおそらく最後の兄弟での旅行、良い思い出になったのではないかと思います。また福岡、ぜひ行きたいと思います。

新年は義母の一年に一回のおせち料理を満喫し、いつものお正月に改めて感謝。
今年は予定では長男がようやく一人暮らしで家からいなくなり、娘たちは高3で家にいる時間も少なくなりそうなので、私も家に引きこもらないで積極的に外に出て運動や活動や勉強をしていきたいと思います。

実家近くの有料施設に入所している実母は、調子が良い時は面会時に話をあわせたり娘と分かっていなくても感じよく対応しています。調子が悪い時は、目を閉じたまま話もせず。そんなものですね……認知症。でも母が迷子にもならず、なるべく美味しい、気持ちいい、と感じる時間が少しでも多い一年であるとよいなあと思いながら今日も面会から帰ってきました。今年も面会いきたいと思います!

小児アトピー性皮膚炎のデュピクセント治療について

11、12月は講演会が多く、先日も小児科医・皮膚科医を対象としたデュピクセントの講演会で福岡市立こども病院の皮膚科医長である工藤恭子先生のお話を聴きました。

デュピクセントは、アトピー性皮膚炎の炎症のサイトカインであるIL4,IL13を抑制する生物学的製剤で、生後6か月から適応となります。

工藤先生のお話では、乳児期のアトピー性皮膚炎は1歳半で7割が寛解するといわれていますが、生後1~2か月でアトピー湿疹があると3歳時の食物アレルギーが7.3倍になり、生後3か月で湿疹があると半数以上の55%が卵白のRASTが陽性になると言われています。
乳児期の湿疹をしっかりコントロールしないと、高親和性IgEをもたらし、皮膚のみでなく他のアレルギー疾患を発症させてしまうことがわかっています。乳幼児期から、見た目も触覚的にもツルツルの状態に寛解導入することが大切です。

デュピクセントで治療すると4か月でIgE抗体が6割下がり、1年で8割も下がります。それにより、デュピクセントを継続すると食物アレルギーの症状は軽くなり、花粉症状も軽快することが分かっています。もともと気管支喘息にも適応があり喘息も改善します。
また、炎症や痒みのみでなく、低下した皮膚バリアを改善することにより皮膚の細菌感染症を9割へらすことがわかっています。

これらのことより、幼児期や思春期のアトピー性皮膚炎患者さんのうち、治療薬の外用を一日休んだだけでも再燃する方、顔や頭部・頸部の症状が重症の方、ニキビを合併する方、他のアレルギーを合併する方、中等度の炎症でも皮下に炎症がくすぶっている方 にはデュピクセントを考慮してもよいかといわれています。

現在、生後6か月からはデュピクセント、2歳からはオルミエント内服(JAK阻害剤内服)、6歳からはミチーガ(IL31阻害剤注射剤)、12歳からはイブグリース(IL13阻害剤注射剤)が適応になります。
それぞれの患者さんの背景に合わせて、きちんと情報提供していきたいと改めて感じました。

今週末は、福岡で行われるイブグリースの全国講演会に参加し、また情報収集してきたいと思います。

 

先日、高2の双子の保育園時代の幼馴染の男の子が、高校生ながら画家であり、賞をもらったということでママ仲間で国立新美術館に観にいきました。絵で生きていくの?と聞いたら “いけるとこまで絵一本で生きていきます!”と頼もしい言葉が… 同じ16歳でこんなに自分のやりたいことが決まっている彼がまぶしくて、成長がうれしくて。本当に凄いなあ。私も16歳の時、ここまで自分の未来に道を見出していたのかなあ。もちろん娘たちはここまで自分のやりたいことがはっきりとわかっていないだろうなあ、まあそんなものかしら、と思いながらも、赤ちゃんから知っている彼の成長を、おばちゃん達で一緒に祝えて私たちも幸せだね~と話は尽きず。
若さや希望に満ちた自信は周りも明るくさせてくれます。
娘たちもいつかそんな未来を見つけてくれると良いのですが…まだまだだろうなあ。成長を焦らず見守っていけると素敵な親なのでしょうが、現実にはなかなか理想の母親にはなれず…まだまだ私も発展途上です。

 

 

見た目のアンチエイジング研究会

先日の日曜日、皮膚科医・形成外科医・美容外科医・美容内科医が参加するアンチエイジング会にて、各分野の著名な先生のお話を聴いてきました。それぞれ エクソソーム・シミ・たるみ・メソセラピー・美容漢方・足病予防・アトピー・日本人に特化したノンサージカルな美容外科医療 の専門の著名な先生方のお話で、大変有意義な一日でした。
中でも、普段はなかなか聞くことができない美容内科の専門医 青木晃先生(ウェルエイジングクリニック南青山理事長)の GLP-1製剤とダイエット自由診療について初めて知ることが多く勉強になりました。

GLP1受容体作動薬であるリベルサスはもともと2型糖尿病の治療薬です。血糖値を下げるインスリンの分泌を促進し、血糖値を上げるグルカゴンの分泌を抑制する作用があり、血糖値を安定させる飲み薬です。
ダイエット目的に無意味に誰もが飲んでも効果がある訳でないので、きちんと青木先生のような専門医が正しい飲み方を指導して行うとダイエットの効果が高いそうです。(すべて自費診療)
リベルサス7㎎を内服すると、甘いものや脂質の多い食材を好む食の嗜好が変化します。空腹感が下がり満腹感が持続し、結局食事量も摂取カロリーも減り、総合的に体重減少につながる治療法ですので、リベルサスを内服しても食べる量が減らないともちろん無効です。

具体的には メタボリックシンドロームの中年男性・ 血中のインスリンレベルが高い糖尿病予備軍・早食いで過食傾向・脂質糖質の食事が多い・糖質摂取過多の肥満者 などに効果的だそうです。逆に小食でそんなに食べていないのに太ってきた人には効果が無いそうです。
脂質糖質摂取量が多い方が内服すると、摂取量が減るためコレステロール値・脂質値・中性脂肪・尿酸値などメタボに関わる数値も下がるので、体重減少だけではなく、内科的なアンチエイジングにも効果的だそうです。

イベルサスの副作用としては吐き気や嘔吐・便秘下痢などの胃腸症状・膵炎・腎障害・うつ・低タンパク などがあるため、定期的な検査が必要であり、きちんとした専門医のもとで治療を行うことが重要です。そして順調にうまくいくと最初の1か月が一番減量効果が大きいため、開始から1か月でなるべく減量させることがポイントのようです。

内服方法も、できるだけ少ない水で飲む・割ったり2剤まとめて飲むと効果が無くなるなどの注意点もあるので、ただ飲ませれば良いものではありません。また、食事の量が減ることによりダイエットにつながる治療であるので、満腹感があるのにいつもの量を食べてしまわないように指導する、食事後に吐き気や気持ち悪さがしたら食べ過ぎなので食べる量をとめるように指導するなどがポイントだそうです。

患者さんもきちんと医学的な作用を理解したうえで、専門医の下で、なるべく最初の1か月を頑張るのがポイントだと思いました。

今は皮膚のみでなく、内科的・足病学的(歩行が減るとフレイルにつながる)アンチエイジングも、長寿の日本人の健康年齢を高く保つことに様々関わってくることを改めて実感しました。
また来年も是非出席したいと思います。

 

今月から、自宅マンション敷地内にオープンしたパーソナルのピラティスを始めました。いろいろ用事が入っても必ず行ける毎週日曜日の朝7時半から1時間、まだ静かな朝の時間にひっそり最初のレッスンを受けました。集団で音楽に合わせて行ったピラティスより、素敵な先生がマンツーマンでその日の私の体のゆがみや不調を見てくれて、贅沢ですが素敵な静かな時間と空間。
ピラティスは、汗はかかないですが体の知らないゆがみや不調を治す、本当に“治療”のようでした。
歳を重ねると体のメンテナンスが必要になってくるのを実感、少しでも健康年齢を維持するために淡々と日曜早朝に続けていきたいと思います。

アトピー性皮膚炎・乾癬の新しい塗薬"ブイタマークリーム” について

10月末に、アトピーにも乾癬にも適応になる塗薬の新薬 “ブイタマークリーム"(鳥居薬品)が処方できるようになります。

ブイタマークリームの成分・タピナロフは“AhR”という芳香族炭化水素受容体を活性化することにより、炎症性のサイトカインを低下させ、抗酸化分子の発現を誘導し、皮膚炎症を抑制し皮膚バリア機能を改善する効果があります。

タピナロフは治療用のAhR調節薬のうち皮膚炎を抑制する成分で、コールタールと同じ皮膚炎抑制に特化したAhRリガンドですが、IL4(インターロイキン4)を抑制することによりアトピー性皮膚炎の炎症を抑制、Th17サイトカインを抑制することにより尋常性乾癬の炎症を抑制します。また、抗酸化分子を活性化して酸化ストレスを低下し、皮膚バリア機能を担うフィラグリン・ロリクリンの発現を強めて皮膚バリア機能を増加させます。

ブイタマークリームは12歳以上のアトピー性皮膚炎、15歳以上の尋常性乾癬に適応があります。1日1回の外用、外用量の制限がなく、軟膏ではなく、クリーム基材になります。一本15gで3割負担の方で1350円となります。

副作用は、毛包炎、ざ瘡、接触皮膚炎、頭痛があげられます。毛包炎(無菌性)やざ瘡は外用開始からアトピー・乾癬ともに25%くらいの割合で、1か月後から出現ししばらく持続してからおさまってくるようです。接触性皮膚炎(かぶれ)はアトピーで7%の割合で、乾癬では20%の割合で、2か月後から出現しステロイド外用にておさまるようです。意外な副作用の頭痛ですが、アトピーの21%、乾癬では7%の割合で比較的すぐに(2~3日後)出現し3日間くらいでおさまるようです。

アトピー性皮膚炎・乾癬ともに、赤みや痒みに対しての効果は立ち上がりは早くないようですが、ジワジワと効いてきて外用し続けると6か月後から効果が上がり始め1年以上たっても有効率が上がっていくそうです。ゆっくりジワジワと効いていくようです。

久しぶりのクリーム基材の外用薬で一日1回なので朝でも外用しやすいかもしれません。また情報をアップデートしていきたいと思います。

 

実家近くの施設に入所して1年になる実の母が急に食事をとらなくなってしまいました。1週間前は面会でも元気に会話して元気でしたが今週面会に行くとケアマネさんから“急に昼間も活動力が下がって車いすでも寝るようになったり食事も急に食べなくなってしまったと報告されました。薬も変更されてないし、認知症の症状が進行したのか、単なる季節の変わり目なのか、、いざ自分の家族となると、やはり、単なる老いや生命力・認知の進行だけで片付けがたい、複雑な気持ちになるものだと実感します。やはりいつまでも、どんな状態であっても、食事が美味しく食べられて(施設の食事はとても美味しそうですし)、家族としては少しでも元気でいてほしいと思うものです。頭で理論で考えることと、実際その立場になると気持ちがわかったり、考えが変わることもあると実感しますが、まだ私はこの思いを姉と共有できるぶん幸せなのかと思います。
また面会にいきながら様子をみていきたいと思います。

夏前に始めたカーディオバーという有酸素+筋トレピラティスのようなレッスンを週に2日続けていますが体幹がお尻がスッキリして、筋肉にも良い感じです。股関節やお尻にも効いている感じがしますので、ぼちぼち続けていきたいと思います。
この年になると瘦せるためでなく、体の維持のために運動やマッサージなどを淡々と継続することが欠かせなくなってきました。
これから冬になり体が硬くなりやすくなりますが、運動筋トレとほぐしと、続けていきたいと思います。

 

アトピー性皮膚炎の皮膚バリア障害の原因について

夏休みにデュピクセントやイブグリースなどの注射剤を開始したアトピー性皮膚炎のお子さん、学生さんが多くいらっしゃいますが、1~2か月経過した現在、痒みや紅斑、皮膚感染症のコントロールの成果が少しずつ出てきています。これらの注射剤は、アトピー性皮膚炎で低下がちな皮膚バリアを上げ、感染症の予防のみでなく、皮膚をもっちり肌に変えていくような効果があります。

アトピーにおいて皮膚バリア機能が障害される原因としては、遺伝的な要因・炎症や掻把による2次的な要因のほか、皮膚や腸内に常在する微生物コミュニティである“マイクロバイオーム”などが挙げられます。

医学雑誌“皮膚アレルギーフロンティア”に杉田和成先生(佐賀大学)・出原賢治先生(佐賀大学)・中島沙恵子先生(京都大学)の座談会が掲載されていました。

まず皮膚バリア機能障害の改善には、炎症をしっかり抑制しなければバリア機能は充分に回復しないことが分かっていますし、炎症・かゆみ・皮膚バリアそれぞれが密接に関わっていてどれか1つを良くしても長期に良い状態を保てないようです。
この3つ=かゆみ・炎症・皮膚バリアをどう治療していくか、それぞれの患者さんごとにどれを主に抑えていくか、その方その方の特徴をつかみ、指標となるバイオマーカーが少しずつ増えてきています。
アトピー性皮膚炎の病勢を示すマーカーとしては、好酸球数・LDH値・TARC(タルク)値・SCCA2(squamous cell carcinoma antigen 2)値が挙げられ、さらに、“ペリオスチン”はアトピー性皮膚炎の知覚神経に作用して痒みを引き起こすバイオマーカーが最近判明しています。それらを指標にしながら、個別にカスタマイズされた治療方法を組み合わせていく、オーダーメイド治療が今後将来考えられていくものと考えられます。

また、アトピー性皮膚炎の皮膚に生着する黄色ブドウ球菌が増殖すると、皮膚バリア障害を引き起こしたうえ、皮膚Th2の免疫誘導が行われ皮膚炎症を悪化させることが分かっています。
松岡悠美先生(大阪大学)の論文によると日本人乳児の頬の皮膚における実験にて、生後1か月の乳児(1歳児のアトピー発症有無に関わらず)の約45%に黄色ブドウ球菌の定着を認められ、また、生後6か月の乳児の黄色ブドウ球菌の皮膚定着が認められるとアトピーの発症リスクが顕著に高まったというデータがあります。このことから、もともと存在する黄色ブドウ球菌が何らかの要因で排除されるとアトピーは発症しにくく、逆に黄色ブドウ球菌の病原性が保持されると、ブドウ球菌が定着しアトピー発症を引き起こすことが予想されています。
今後、アトピー性皮膚炎の治療の1つの選択肢として、黄色ブドウ球菌のアトピー性の皮膚に対する病原性を低下させるような治療の研究がすすめられることも期待されます。

同じアトピー性皮膚炎において、同じ治療を行っても効果の高い方と効果の低い方がいるのが事実ですが、アトピー皮膚炎の多様性を考えると仕方ないとも思われます。今後はその方その方のバイオマーカーや指標をもとに、アトピー性皮膚炎患者さんの膨大なデータに基付く治療の可能性も面白いと思いました。
デュピクセントやイブグリースなど皮膚バリアも改善する治療法も外来でできるようになり、選択肢はかなりこの数年で増えてきました。
注射剤や外用薬・内服薬も現在でもその方その方に合わせたオーダーメイドで医師の経験をもとに行っていますが、今後はさらにそれに加えてデータベースをもとに治療法を判断するような時代がくるのかもしれません。


秋になり高2の娘たちの塾も増え、その後の食事や図書館へのお迎え(過保護?)などで毎週があっという間に過ぎていきます。本当に大学受験は本人たち次第で、いくらママ高2の秋は既にめちゃくちゃ勉強してたよ、と言っても全く響かず~。本当に苦労します。比べても仕方ないですが長男の時とは違い本人たちに任せきれない不安感がありますが……。まあ下の子たちって、そんなものですね。
私も今年は真面目に講演会や学会で勉強してその姿を見せていくしかないとも思います。
バレエエクササイズとバイクエクササイズの運動と、食物繊維タンパク質を心掛けた食事と、睡眠と、勉強と、今年残り数か月を健康に過ごしていきたいと思います。

 

 

 

白斑の治療について

この連休のなか日は、専門医のポイントを取るため仙台の講習会に行き、最新の白斑加療について話をうかがいました。まずは白斑の病態について近畿大学奈良病院の大磯先生に、最新の加療について大阪大学の種村先生にうかがいました。

まず、白斑とは、メラノサイトの選択的消失しますが、これはほとんどがメラノサイトの自己免疫(自分の細胞を攻撃してしまう)により生じると考えられ、遺伝因子と環境因子によって生じます。

尋常性白斑の病型は、分節型(皮膚の分節に一致して片側に生じる)と、非分節型(分節に関係なく多数生じる)、未分類型(1か所のみや、粘膜型)に分かれますが、分節型は若年者発症が多いと言われています。

発症の起因として遺伝因子が80%、環境因子が20%と言われますが、最近の傾向として環境因子の影響が強くなり、中高年発症者が増加しています。環境因子として海外では肥満傾向・マグネシウム・ビタミンD欠乏傾向・豆類摂取不足傾向の報告がありますが、そのほか紫外線や皮膚掻把などの物理的因子・薬剤や化学物質による化学的因子・微生物細菌叢やCOVID19関連などの生物学的因子があげられます。

病態時期は、メラノサイトが自己免疫性に障害される過程の前の、
・自己免疫感作期 ・自己免疫反応期(非顕在性) 
細胞障害性T細胞(キラーT細胞)がメラノサイトを障害し病変部が進行する
・進行期  
局所免疫応答が残存し、その後消失する
・非進行期/安定期 
に分類されます。

次に、白斑の治療についてですが、病態時期と年齢・分節型か非分節型かなどにより異なります。

・外用 ステロイド、タクロリムス(プロトピック)、ビタミンD3 海外ではJAK阻害剤外用

・紫外線(ナローバンド、エキシマ) 白斑メラノサイトと幹細胞を活性化

・ステロイド内服 

・外科的治療 分節型+1年以上進行しないとき

が挙げられます。

外用ですが、アメリカでは日本のコレクチム軟膏より濃度の高い、JAK阻害剤1.5%濃度のルキソリチブ(オブゼブラ)クリームが承認され、有効性が報告されています。(1日当たりの単価が、JAK阻害内服薬と同じくらい高額ですが。)

また、タクロリムス(大人用プロトピック)外用と紫外線の併用が、再発の予防に有効であるという報告もあります。

紫外線は週3日が理想的であまりに頻度が少ないと効果がうすく、total 200回まで照射可能、earlyレスポンダーで48回(週2回で6か月)、lateレスポンダーで72回(週2回で9か月)と考えられ、できれば週2回で最低半年(6か月)はトライし、9か月過ぎても反応がなければ再考することがすすめられます。

また、12歳未満の小児の発症の特徴として 
・体幹や四肢に生じやすい ・治療により色素再生しやすい ・家族歴が多い ・分節型が多い ・自然寛解が期待できる
が挙げられ、進行例でも早期に治療介入すると高い効果が得られるようです。

子供でも大人でも、進行例ではステロイドもパルス療法が必要になるため、専門の先生に紹介する必要があると思いました。

また体幹は改善しても手指は白斑が残存しやすく、種村先生はステロイド(ケナコルト)局注を行ったり(痛みも強いですが)、首や胸背中などの体幹難治例ではフラクショナルCO2レーザーで表面を少し削った後にエキシマ(紫外線)を照射することもあり、効果を上げているそうです。

それでも難治な例の部分的なカモフラージュとして、GRAFA社のダドレス液(5%DHA Dihydroxyacetone)は塗布して約6時間で角層内へ浸透完了し、約3日間肌色が持続するというもので、患者さんのQOL が上がります。

今後の展望として、アメリカではJAK阻害剤(キラーT細胞がメラノサイトに遊走する過程にJAK-STAT経路が関与)の内服薬 “リトレシチブ” の有効性が報告されていますので、日本でも円形脱毛症に適応のあるこの“リットフーロ”などJAK阻害剤が難治例の治療の主流になってくるのではないかということでした。今後も新しい治療や、来年に更新される新しいガイドラインもチェックしていきたいと思います。


週1‐2回ほどしか運動する時間がないと腰が痛くなり、トシを実感しますので、必要に迫られて“カーディオバー”やFEEL CYCLE で運動するようにしています。60分や45分だけでも思いっきり有酸素運動して汗をかくと腰も軽快し、体がスッキリすると気持ちもスッキリします。
まだ蒸し暑い9月ですが、運動でなるべくサラッとした汗をかきながら少しでも気持ちよい毎日を過ごしていきたいと思います。

 

 

 

 

慢性蕁麻疹の治療について

先週の夏休み前にいただいた資料に慢性特発性蕁麻疹についての専門の先生方の講演がいくつかあり、休み中にゆっくりチェックしました。
(大阪医科薬科大学の福永先生、昭和大学の猪又先生、日本大学の葉山先生、島根大学の千貫先生)
特に誘因なく生じる特発性蕁麻疹の中には血管性浮腫(顔やまぶた、口唇が腫れる蕁麻疹)も含まれ、臨床症状も病態も様々です。

標準の治療である抗ヒスタミン剤の治療でコントロール不良の慢性蕁麻疹患者さんは60%もいると言われていて、ステップアップ治療が提唱されています。

まずは抗ヒスタミン剤2倍量増量、または2剤併用を試みます。次のステップは、さらに加えて胃薬で用いるヒスタミン2拮抗薬や抗ロイコトリエン薬を重ねます。それでも効果が乏しい場合は抗IgE抗体であるゾレア注射剤(オマリズマブ)へ変更もしくはプレドニン内服、シクロスポリン内服(保険外)内服というステップになります。最近はこれに加えてIL4/IL13阻害剤であるデュピクセント注射剤が蕁麻疹の適応にもなり、期待できる治療の一つになりました。

IL4はB細胞から産生されるIgEタイプの自己抗体やIgGタイプの自己抗体を誘導し、蕁麻疹の慢性化に関与することがわかっています。また、IL4/IL13は自己免疫性のシグナルの増強やかゆみ、そして浮腫などを起こします。
デュピクセントはIL4/IL13を抑制するため、これらの蕁麻疹の原因を直接抑え、IgEの働きを抑えるのではなくIgEの産生部分を抑えるため、葉山先生によると"蛇口から出てくる水を止めるのではなく、蛇口の元栓を閉める”イメージだそうです。

また、デュピクセントはアトピー性皮膚炎・気管支喘息・結節性痒疹・慢性副鼻腔炎にも適応がある薬なので、これらの疾患が合併している蕁麻疹患者さん、IgE高値の方には使いやすいと考えられています。また、事前にIgE値の採血が必要で通院注射が必要なゾレアと異なり、デュピクセントは事前の採血は必須ではなく自己注射が可能ですので患者さんにも負担が少ないと考えられます。

以前に比べると慢性蕁麻疹の治療も選択肢が増え、その分その方々それぞれに合った治療方法を的確に情報提供していく必要があると感じました。

夏休みも後半に入り、本日、高2の娘達の学校個人面談が二人分ありました。
付属校でもないため、話はどうしても大学受験の話です… 学校で受けた河合塾模試の結果を見せられて低ーい偏差値やら今後の残りの高2の進め方など、耳が痛ーい話を聞いてきました。結局のところ学校推薦は到底取れないし考えていません!一般受験で学科実力一本で頑張るしかないです、結局勉強やるしかないですよね……という話に。お二人ともご経験豊かな男性の先生である程度おおらかで細かくなく、私としては大助かりの面談でした。大学受験……長男のときの親も辛い苦しい受験期がまたやってくるかと思うと今から少し憂鬱です。でも、一般受験の苦しさを乗り越えるくらいの逞しさ、社会に出てこの先自分で生き抜いていかなければならない彼女達の今後の長い人生に必要だと思いながら、親として(あくまでも理想では)美しくスマートに支えてあげたい、と思いました。
娘たちの面談のあとにホームに入所している母の面会にいきました。昔から大好物のアイスを差し入れると子供のように目を輝かせて“食べたい!”と食べる母を見ながら、自分と娘達の将来の姿を重ねてしまい複雑な気持ちになります。私が娘達の将来を案じ考えるのと同じように、目の前の母も私や姉のことを考えてくれていたのだと思うと涙が出てきましたが、母の残りの人生が穏やかで幸せであるように、とにかく笑顔でまた面会にいきたいと思いました。

円形脱毛症とオルミエントについて

猛暑が続く7‐8月です。少し外を歩いただけでも熱中症になりそうな暑さです。皮膚科の講演会も週末ごとにありますが、今回はウェブで拝聴させていただきましたが、先週末Lillyさんの講演会で円形脱毛症で有名な杏林大学の大山学先生のお話をうかがいました。

まず、円形脱毛症は2つのフェーズに分かれ、まずは成長期(伸びる毛)の毛根部に炎症性のIL15(インターロイキン15)などのサイトカインが集まり炎症により免疫寛容が破綻して生じる"急性期”が1-1.5か月続きます。その後、疑似的な休止期(抜ける毛)に入りますが、この時期は炎症細胞が毛根でくすぶっていていわゆる "慢性期”に入ります。
オルミエントはこのうち、急性期が終わった慢性期(疑似的な休止期)に適応になる飲み薬です。炎症細胞がくすぶるときに関与するJAK(ヤヌキナーゼ)を阻害することにより、円形脱毛症の慢性期に効果のある飲み薬です。
最近円形脱毛症は(AA)、AAcubeといって3次元の3つの軸(病期・年齢・重症度)のポジションによって治療法を選択することが提唱されています。オルミエンとはこのうち、慢性期・成人・重症の円形脱毛症に適応となります。

治験では、慢性期、18歳以上、脱毛面積50%以上の方にオルミエント4mgを内服してもらった場合、内服9か月目で脱毛面積20%以下に改善する割合が50%と有効性が確認されました。

Lateレスポンダー(遅れて治療効果が出てくる方)がいるのも事実で、9か月目まで効果なく9か月目から急に生えてくる(効果が出てくる)方は、罹患時期が長く脱毛面積も多いいわゆる重症の円形脱毛症の方が多いそうです。
また、ゆっくりジワジワと効果が出る方もいるので、諦めずに2年近く続けてようやく反応が出る方もいるようです。薬代が高くお金もかかりますし、なかなか途中で諦めてしまいそうですが、2年を目安に継続できれば理想的です。

オルミエント内服を1年1か月継続して有効である方は飲み続けると、2年2か月までは治療効果が維持されることがわかっています。

逆に1年1か月継続で効果的な方は、内服をやめてしまうと治療効果が2割程度に落ちてしまい、オルミエント4mgを2mgに減量すると、治療効果は5割に落ちてしまうことが分かっています。早期にビシッときくearlyレスポンダーの方に比べ、効果が持続せずゆらぎがある方は減量すると効果が落ちてしまうようです。
内服を"やめる”と"減らす”を比べると、まだ減量のほうがまだ良く、減量中で悪化した場合また増量するとまた良くなるそうです。
また、オルミエントを内服しているのにも関わらず脱毛が再発してしまう場合、脱毛量が少ない場合は内服を続けると良くなるが多いそうです。

気になるのは、どの方が early レスポンダーなのか、 late レスポンダーなのかの見分けが重要になります。大山先生によると、開始9か月の段階で、拡大鏡で黒い硬毛化の気配が見られるとレスポンダー(効果がでる)の可能性が高いそうです。

円形脱毛症は従来有効的な治療法が少ない疾患でしたが、オルミエントやリットフーロなどの新しい内服薬がスタートしそれらの有効性も報告が多くなっています。今後も情報をアップデートしていきたいと思います。

夏休みに入り高2の娘達のお弁当がなくなり少し余裕の日々ですが、毎日寝てる二人に向かって"図書館行きな~”と声をかけて朝出かけるものの、適当にゆっくり起きて二人で化粧して重役出勤で図書館やら塾やら遊びやら、そんなあっという間の夏休みです。
保育園時代のママ仲間に合うと、お互いに大学受験の話や自分たちの仕事の話や兄弟の話、親の話……話は尽きません。でも、赤ちゃんや子供達の時代からお互い知っているママ達がどんなに有難いか実感します。昔に比べその子その子がどのように成長しているのかがわかり、ヒトの子ですが親戚のおばさんのような気分になり、お互いに慰めあったり褒めあったり。表面的でなく心からのアドバイスをくれる仲間たち、子供がいなかったら出会えなかった仲間たちの有難みが歳とともに感じます。
歳をとると気を使いながら人と会うことがもったいなくなって、本音で話せる仲間との時間が何よりの自分のご褒美になります。

誰も不在になった実家の売却が決まり、実家の全撤去や決済がようやく終わりました。最終日、空っぽになった部屋を見渡すと少し寂しいような気持ちになりましたが、片付けが終わりすっきりした気持ちも。入所している母に報告に面会にいくと、実家の写真を見てももう忘れちゃったわ~と、私のことも娘とはわかっていないと思いますが、警戒心なく、でも昔の母のように、愛想よく、話を合わせてくれます。そんな母の姿に安心し、社交的であった昔の母の面影を思い出し変わらないな~と少し嬉しくなりました。有料施設に入所して最初は少し不安もありましたが、穏やかな母をみて安心です。姉と二人でまた洗濯物交換にせっせとまた通いたいと思います。

 

イブグリース注射剤について

6月は毎週日曜日に学会講演会が続き、あっという間に過ぎ去った1か月でした。この思いもよらない暑い梅雨の時期、汗でアトピー性皮膚炎症状がいつも以上に悪化する方が多くいらっしゃいます。新しい治療薬が様々出る中で、先週日曜日は一番新しい注射剤である、イブグリースの講演会があり、治験に参加された先生方(立川皮膚科の伊東秀記先生や野村皮膚科の野村有子先生)のお話やとてもたくさんイブグリースを使われている巣鴨千石皮膚科の小西真絢先生、そして帝京大教授の鎌田昌洋先生のお話をうかがいました。

イブグリースはアトピー性皮膚炎の炎症や痒み、皮膚バリアに関与するサイトカインであるIL13にくっつく抗体で、IL13との結合親和性が、同じIL13抑制の"アドトラーザ”よりも高く、より抑制しやすいといわれています。また、デュピクセント(半減期5.1日)と比べて、半減期が21日と長いため万が一やめた後も効果が持続しやすい、つまり、やめた後も急に悪化しなく効果が続くと言われています。
もう一つの利点として最初の1か月は2週ごとに注射ですが、2か月目からは4週に1回で(月1回)効果が変わらないことが分かっているため、最初だけ2週間ごとに来院して打てば、1か月の1回の来院注射ですみます。(まだ自己注射がこの1年できませんが)
1本が3割負担の方で18000円なので、2か月目からは月2万円以内で続けることができます。
また最初の2回だけは2本打つため、他の薬剤に比べて早くから痒み抑制効果が出やすいと言われています。

また治療をやめてしまった後の、他の薬剤との効果の比較ですが、デュピクセントはやめると40%の効果低下が見られ、アドトラーザはやめると35%の効果低下がみられるのに対し、イブグリースは15%の効果低下がみられるのみで、やめてしまったあともあまり効果が下がらないという大きな利点があることがわかっています。

副作用に関しては8.5%に結膜炎がみられるのみで他に大きな副反応もみられません。

小西先生によると、デュピクセントよりも、注射時に圧倒的にイブグリースの方が痛くない患者様が多いそうです。注射剤もペン型で針を見ないのでほとんどの方が大丈夫です。

各先生の印象としても、イブグリースは、
*やめた後も寛解維持している方が多い *顔の紅斑の残る方に効果がある *12歳以上に使用できる *通院注射ですが月1回でよいので利便性が良い *患者さんの自己負担額も月1回の場合一番低い
等の良い点が多く、今後のアトピー性皮膚炎の治療の主流になる可能性が高いと各先生がおっしゃっていました。

また患者様に情報提供を続けていきたいと思います。

 

昨日は数年ぶりに千葉大の同期テニス部の8人で飲み。皆大学に残ったり、教授になったり、基幹病院の部長になったりそれぞれですが、きちんとまじめに変わらず社会貢献していて、いつも会うと、まだまだ私も真面目に頑張ろう、という気持ちになります。
昨年見送った実父の人生の終わり方から学んだ感想を聞いてもらい、違う見方を教えてもらったり……久しぶりに会っても今の立場や環境の自慢や比較話にならずに楽に素を出せるんだろうと思ったら、医師になる前の、何者でもない学生時代を良く知る仲間だからだよ~と言われて納得。

仕事や子育て、親のこと。話は尽きませんが、昨夜同期にすすめられた"子育ての大誤解”という本を読んでみようと思います。ヒトの能力や性格は半分は遺伝あとの半分は環境といわれていますが、環境とは親の育て方でなくて同世代の仲間からの影響……というような内容のようですが、じっくり読んでみようと思います。

たまに会っても思ったことを言い合えて、意見しあって、ふざけて、でも同じ医師として今は刺激を受けて。大学時代の仲間は宝物で、そんな仲間と出会えて幸せだと改めて感じました。また明日から頑張ろう…っと。

細胞外マトリックス(ECM)ブースター加療について

風邪や花粉の時期も終わってマスクも外す生活も増え、コロナ以前より美容などのご相談も受けることが多くなってきました。美容の専門加療は行っていませんが、適切な病院や先生へご紹介できるように、ある程度の美容知識も必要だと実感します。

定期的に購入している美容皮膚科雑誌 "Bella Pelle ベラペレ” に細胞外マトリックス加療の特集があり、川島眞先生・今泉明子先生・鎌倉達郎先生の座談会のお話をチェックしました。

美肌を表面のみからでなく、土台から作ろうとする傾向は今後も注目されていく分野です。
細胞外マトリックス(ECM)は真皮の中の線維や細胞の間質成分で柔らかいゼリーのような物質です。具体的には線維芽細胞から生成される、コラーゲン・エラスチン・ヒアルロン酸・コンドロイチン硫酸などで構成されています。

ECMが減少するとシワやたるみ等の形態変化だけでなく、皮膚の免疫力低下をもたらすと考えられています。ECMは細胞間のみでなく、細胞と骨格を結び付けているため、骨格も維持できなくなり表皮・角質のバリア機能や破綻が起こり、皮膚老化やトラブルのきっかけとなります。
ECMを刺激することで線維芽細胞の機能を高めて美肌効果を高めようと、ECM加療が注目を浴びるようになってきました。

ECM治療は、線維芽細胞を介してコラーゲンやヒアルロン酸を増やす治療ですが、従来の直接注入ではいわゆる"過注入症候群”や、血流障害の可能性がゼロではなく皮膚壊死などのリスクがあることから、慎重に行う必要があります。また、自分の線維芽細胞を取り出して培養や凍結保存して再び戻す治療の研究も進んでいますが、若い時の線維芽細胞でないと効果が期待できないため、若い時に凍結保存しておかなくてはいけないという課題があります。

また、同じように線維芽細胞を介してコラーゲンやエラスチンを増やす目的で用いられるものに、線維芽細胞増殖因子(FGF)があります。高い効果が期待できそうですが、FGFは増殖因子である以上、いったん過剰な増殖が起こってしまうと抑えきれなくなる危険性や、注入後かなり時間が経ってから増殖が起こるリスクがあることが問題です。ですから、FGFの注入は単独では行わず、十分に濃度を希釈したものを他製剤に混ぜて使用するのが一般的であり、使用経験豊富な専門医が使用することが必要です。

ECM製剤(ECMブースター製剤)は多くの製剤がヒアルロン酸とアミノ酸の組み合わせで構成されています。単にボリュームを出すだけでなく、ECM(細胞外マトリックス)に働きかけて土台からリモデリングし肌を再構成させ、自然の若々しさをめざします。
製剤の中には、低分子・中分子・高分子ヒアルロン酸すべてが含まれたハイブリッドヒアルロン酸製剤もあり、低分子が血管増生・中分子が線維芽細胞からのコラーゲン・エラスチンの産生増加、高分子は保湿と抗酸化の目的で配合されています。
ECMブースター製剤の短所としては、直接注入に比べて効果発現まで時間がかかること、注入回数を重ねる必要があることです。回数を重ねた場合問題となるのが異物反応ですが、製剤により(低分子の架橋製剤)遅発性結節が起こることがまれにあるそうです。
一般的には、ECMブースター製剤を目の周りに打ち、従来のヒアルロン酸(架橋剤)で顔全体のリフトアップを行うなど使い分けることが一般的だそうです。

ECMブースター製剤は
・注入する層が製剤により異なるため、正しい深さに注入する必要があること
・コラーゲン・エラスチン増生による美肌・引き締め効果または、ナチュラルなボリュームアップと保湿効果、どちらを目的にするかにより製剤も異なるので使い分けて薬剤を選択すること
・注入部の膨隆は薬剤の拡散により消失しますが、そのダウンタイムはヒアルロン酸濃度が高いほど時間がかかること
・従来の架橋ヒアルロン酸のみで表層変化まで出そうとすると過注入が起こるため、皮下浅層や真皮のリモデリング効果に対しECM製剤が効果的なため、層により製剤を使い分けるコンビネーション使用することが一般的であること
・即効性と劇的な変化を求める患者さんには向かない一方、自然なアンチエイジングを追求する昨今の考えの中では、主流となりつつあること

など、初歩的なことがよくわかりました。
今後も初歩的な美容皮膚科の知識を少しずつ吸収していきたいと思います。

 

自宅近くに先月オープンした、”カーディオバー”というバレエエクササイズに3回ほど体験参加してきました。まだ初心者クラスの1時間ですが、バレエのバーを使いながら、体幹トレーニングと少しの有酸素という感じでじっとり汗もかき、ちょうど体幹を整えるにはいい感じでした。少し続けてみたいと思います。

先日、順天堂皮膚科医局の同期3人と10年ぶりに再会し、いろいろ現在の環境と今後の自分達の後半人生について語り合いました。皆開業医として家族もいる環境でなんのために働いているのか、もちろん開業医としての幸せやりがいだけでなく、家族や子供のためだけなく、"自分自身”の幸せのためにこれからも頑張っていこう!ということになりました。一人の同期は趣味のゴルフの日に、晴天の中ゴルフ場を歩いている際にふと、俺って幸せだなあ~と口に思わず出たそうで、そうだよね~、一度しかない人生、"自分自身の”幸せだなあ~と思う瞬間を増やしていきたい、という結論になりました。
私自身も、患者さんからここに受診してよかったです!と言われた時や、安心しました!と自分のことを信頼してくれてると思う瞬間、とても嬉しく幸せになります。そして、日曜日のFEEL CYCLE ・カーディオバーで汗をかいた後、クールダウンをしている瞬間、幸せだなあ~と感じます。健康で気持ちも穏やかに仕事や運動ができているそのことが幸せだと感じます。
今後も健康に気を付けながら、自分自身の"幸せだなあ”と心の声が出る瞬間を増やしていきたいと思います。

 

 

 

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