獣肉アレルギーについて

秋は学会シーズンです。地方の現地に行かなくてもウェブ講演でも先生方のお話を聴ける時代になって有難い限りです。毎日のように各メーカーさんの各先生方の講演会があり時間とタイミングで選ぶのも大変なくらいですが、どちらにせよ聴く側にとっては有難い時代です。

昨日久しぶりの外食で焼き肉屋にてお肉を堪能させていただきましたが、その際に“牛肉アレルギー”のことを思い出しました。
以前雑誌で読んだ思いもかけないアレルギーの一つに“獣肉アレルギー”があり驚きましたが、最近詳細が分かってきたこの“獣肉アレルギー”に関して、加古川医療センターの原田先生や島根大の千貫先生の論文を日皮会誌にて読みました。

獣肉アレルギーの主要抗原はα‐Gal(ガラクトースα‐1,3‐ガラクトース)であり、α‐Galへの感作とマダニ咬傷の関連が確認されています。また、α‐Galの他にも、ネコの感作によるpork-cat syndrome、コラーゲン抗原による肉・魚アレルギーなども報告されています。

α‐Galへの感作経路としては、数回のマダニ咬傷との関連が考えられていて、数回のマダニ咬傷により、マダニ唾液腺中のα‐Gal含有たんぱくに対するIgE抗体を産生することで発症する、一種の経皮感作による食物アレルギーと考えられています。地方の山の麓などで生活をしている方が犬など飼育し、屋外でマダニが犬の皮膚に付着し持ち帰ることにより飼い主のヒトが複数回咬まれることにより発症すると考えられます。

pork-cat syndrome とは、ネコ上皮の血清アルブミンであるFel d 2 に経気道的に感作されたあと、交差反応によって豚肉・牛肉などの摂取時に生じる症状です。ネコ以外にハムスターやイヌの感作の症例も報告されています。動物の毛の経気道感作以外にも、アトピー性皮膚炎や手湿疹の併存、トリマーなどの職業などの例もあるため、バリアの機能低下を生じた経皮感作を生じた可能性も考えられています。

マダニ感作による獣肉アレルギーは一度発症しても、マダニとの接触をさけることにより、牛肉や豚肉の特異的IgEが低下していき、治りうると報告されています。よかった~。

獣肉アレルギーの症状は、蕁麻疹は最も多く、次に口腔内腫脹、やアナフィラキシー(気分不快・嘔吐・血圧低下)も多く報告されています。場合によりエピペン所持も必要だと考えられます。

また、肉の摂取から発症までの時間が30分~長い方で7~8時間後、という例もあるので、何より、詳しい問診、またペットや動物との接触習慣、居住区などからまずは獣肉アレルギー疑うことが、何より大切だと改めて実感しました。現実的には7~8時間前のお肉摂取とアナフィラキシーや蕁麻疹は結び付けにくいと思います。このアレルギーを知っておくことが重要だと思いました。

 

今日娘達の学校の文化祭があり、一人の娘の演劇部の発表を見に行きました。普段、家での思春期プチ反抗期姿とは異なる姿をみて子供の成長を感じました。子供って親以外の先生方や、友人仲間、素敵な先輩、様々な経験のおかげで育っていくのだとしみじみ思います…

実家の実母は認知の症状がすこしすすみ時間の感覚やリハビリからの帰宅時に父を認識できなくなったり、自宅でもソファーで寝てることが増えてきました。ずっと一緒にいる父の苦労は想像以上かと思いますし、できるだけ自宅にいたいという二人の気持ちも十分分かります。
正解はないと思いますが、帰宅途中今後どうしたらよいのかすこし気持ちが暗くなります。どうしても母と将来の自分、今の自分と将来の娘達、を重ねてしまうと何となくもの悲しくなります。
いろいろ感じながら母と父から学んでいきたいと思います。後悔のないように毎日できる範囲で。

 

皮膚科の新薬について

いつのまにか10月に入りました…コロナも落ち着き本来の生活がだいぶ戻ってきていると感じます。この春からは毎週日曜日も夫とクリニックでコロナのレセプトチェックをしていましたが最近はだいぶ時間がかからなくなり、感染者数の減少を実感しています。

この1~2年で私たち開業医でも処方できる皮膚科の新しい薬が増えましたが、処方した患者様を通して効果が少しずつ分かるようになりました。

*デュピクセント(注射剤)

アトピー性皮膚炎の様々な炎症メカニズムに関与するIL4/IL13を選択的に抑制する薬で感染防御に与える副反応が少なく、炎症全体の赤みや痒み、皮膚バリアの改善による肌の質感の向上につながります。長期に注射しても結膜炎以外の重篤な副反応がないため安心です。最初躊躇している患者様でもペン型の針が見えない薬剤のため自己注射ができ、自宅で行うことができるため、便利です。薬剤費も当初よりかなり安くなり、1本17000円(3割)ですので2週間に一回打つと1か月あたり35000円と当初より値段も下がりました。副作用が結膜炎くらいで安心感もあります。できればスタートしたら1年は継続することが望ましい薬剤です(抗薬物抗体ができてしまうため)。

*オルミエント(内服)

痒みの強いアトピー性皮膚炎と難治性円形脱毛症に適応のある飲み薬です。アトピー性皮膚炎の炎症や痒み・円形脱毛症の局所の炎症に関与するJAK(ジャック)というサイトカインを抑制することによりアトピーの痒みをかなり早期から改善します。受験や就活・結婚式など短期間でかゆみや炎症を抑えたい場合にも短期間でも内服できて比較的早くからかゆみを抑えるためおすすめです。
円形脱毛症に関しては発症から6か月以上経過する慢性、かつ頭皮の50%以上の脱毛斑がある重症な場合に適応になります。またアトピー性皮膚炎と異なり内服後すぐに脱毛斑の改善がみられることは少なく飲み始めてから4か月後から改善率が高まるため、10か月~1年は継続して内服することがすすめられます。国際的には、50%以上の円形脱毛斑の方にオルミエント4mgを9か月内服した場合、4割の方が脱毛斑が20%以下に改善した、というデータがあります。
JAKを抑制するオルミエントは副反応として感染症のリスクや血液検異常(肝機能・腎機能・コレステロール値)やまれに間質性肺炎・血栓症・消化管穿孔が挙げられます。若い方に多い副反応は、上気道感染症・帯状疱疹・ニキビが挙げられます。
ですから年齢にかかわらず、内服前に胸部レントゲン検査(結核の有無)と血液検査(一般+B/C型肝炎ウイルス)が必要になります。薬剤費はまだ高額で大体3割負担の方で薬代・診察や検査代も含めると月5万円程度かかります。

*リンウ”ォック(内服)

オルミエントと同様にJAKを阻害することによりアトピー性皮膚炎の痒みや炎症に効果的な内服薬です。円形脱毛症には適応はありません。 オルミエントが15歳以上の適応であるのに比べて、12歳以上の適応があるため、難治性の中学生のアトピー性皮膚炎の方にも処方できます。
15㎎と30㎎がありますが、高容量の30㎎の錠剤の内服によるデータはデュピクセントの治療データを上回る効果で痒みや臨床症状をより早く抑えることができます。起こりうる副作用や事前の検査はオルミエントと同様で、30㎎の高容量だと感染症の出現も増えるためと必要な期間のみ30㎎内服後に15㎎に減量することが多いようです。薬価は15㎎で1か月43000円(3割)、30㎎で1か月62000円(3割)となります。

*ミチーガ(注射剤)

13歳以上の難治性アトピー性皮膚炎に適応のある注射剤で、アトピー性皮膚炎の中枢への痒みシグナル伝達や感覚過敏に関与するIL31を抑制する薬剤です。今のところ自己注射はなく、院内で4週間に1回皮下注射します。アトピー性皮膚炎に特有なIL13による痒みを抑えるので、引っ掻くことにより皮膚症状をより悪化させ、さらに痒みを増強させる悪循環(itch-scratchサイクル)をおさえます。
副反応は上気道炎や皮膚感染症(ヘルペスなど)が挙げられます。
薬剤費は1本(約1か月)35000円(3割)になり、通常は少なくとも16週(4か月)までに効果がみられます。

*コレクチム軟膏(外用)

2歳以上のアトピー性皮膚炎の方に処方できる塗り薬でJAK阻害効果により主にかゆみを抑えます。寛解導入時期には顔や首に、寛解維持期には体にも使用することが多く、塗ったときのホテリや刺激感はありません。また皮膚バリアを改善する効果もあるため、皮膚の薄い指先などにも使用することが多いです。プロトピック以来の非ステロイド外用薬で処方する機会が大変多くなりました。

*モイゼルト軟膏(外用)

コレクチムと同様、2歳以上のアトピー性皮膚炎に処方できる一番新しい非ステロイドの塗り薬で、サイクリックAMP(cAMP)を分解しアトピー性皮膚炎の炎症物質の産生を高めてしまうPDE4という細胞内の酵素を阻害する効果があります。コレクチムと比べて炎症やあかみ自体を抑える効果があるようです。人により、顔や首には十分効果あり、とおっしゃる方もいて今後も期待できる薬です。ホテリや刺激はないですが、軟膏がコレクチムに比べすこし固めの印象です。

*ロゼックスゲル(外用)

顔の毛細血管拡張による赤み=酒さ(しゅさ)に対する塗り薬で、主成分で抗原虫薬である“メトロニダゾール”が酒さのあかみに効果があります。即効性はないものの少しずつ効果を発揮し、抗生剤や漢方薬などの内服薬とともに治療します。

*エクロックゲル(外用)

日本人の10人に1人といわれる原発性腋窩多汗症の治療薬で、抗コリン作用により発汗を抑えます。1プッシュで片方のわきの下に広い範囲で毎日塗ること、眼圧が上がってしまうので目に入らないようにすることが大切です。

*エピフォートワイプ(シート状)

エクロックと同様、原発性腋窩多汗症のシート状の塗薬でシートで拭くように外用するためべとべとしないことが利点です。シート状で持ち運びしやすいため旅行中や学生さんにもおすすめです。

 

先日製薬会社さんの持ってきてくださった雑誌に減塩食事についての木村要子先生(広島国際大学栄養科教授)の記事がありました。最近は厳粛な減塩よりは美味しく減塩・適塩が継続しやすいと考えられています。
*“だし”などのうま味をうまく利用する
*汁物は一日一食にする
*食材の上から調味料はかけず、つけ食べ(お皿に調味料を出してつけて食べる)にする
*和食に乳製品を加えてコクやうま味を引き出す“和乳食”を試してみる

“つけ食べ”などはすぐにでも実践できる適塩生活ですので心掛けたいと思います。

 

歳を重ねるごとに1か月が、1年があっという間すぎて怖いくらいです。
今は仕事以外の時間は、運動を含めた自分自身の健康のメンテナンスと親のケア中心です。
年老いた親の断捨離を手伝っていると、まだ健康で元気いっぱいのうちにマメに断捨離しなくては、と実感します。体力やパワーがなくなると断捨離する気力もなくなってきます。
ただでさえ子供たちの学校教材や洋服などが毎日のようにあふれ、自分たちのモノや洋服も増えていきます。シンプルに過ごしたいと思いつつもいろいろ物は増える一方です。時々マメに捨てること、時々棚や扉を開けて使っていないものはすべて捨てること、を目標になるべく自分に合ったやり方で体力のあるうちにマメに断捨離していきたいと思いました。
年老いた親からも学ぶことがたくさんです。

掌蹠膿疱症について

夏の気温の変わり目などに生じやすい異汗性湿疹(汗疱)と似た手足の慢性病変として“掌蹠膿疱症”が挙げられます。汗疱と鑑別が難しいこともありますが、まず診断することが大切です。今月の皮膚科学会雑誌に掌蹠膿疱症ガイドラインが掲載されていましたのでじっくり勉強しました。

手足という人目につきやすい部位に生じること、長年のステロイド外用による皮膚委縮や皮膚菲薄化により亀裂が生じて痛みが生じること、また骨や関節の痛みが出る“掌蹠膿疱症性骨関節炎”を合併することがあること、よりQOLは損なわれます。

手のひら、足の裏~足縁に新旧の無菌性の膿疱が多発するのが特徴ですが、膿疱に混じり水疱がみられることもあります。その水疱と膿疱の移行病変と考えられる水疱内に小膿疱が形成される“膿疱化水疱”が観察されることがあります。 かゆみは膿疱になる前の段階に自覚することが多く、膿疱になると痒くないことが多いです。また、経過中に膿疱が出現しなくなり角化が目立つ皮膚症状になることもあります。
“ケブネル現象”という外的な刺激を受ける部位に皮疹が新たにできることもあり、足では靴のあたる部位に水疱や膿疱が発症することもあります。

また足や手の爪病変(爪の肥厚・凹凸・黄色変化)は約3割程度で乾癬の爪変化に比べて頻度は低いと言われています。
日本人の掌蹠膿疱症の特徴として  ・女性患者が多い ・男女とも喫煙者が多い ・時に前胸部の関節炎症状を伴う ・病巣感染巣との関連が大きいこと が挙げられます。

病巣感染巣は、体の中に限局した感染病巣がありそれ自身は軽微が無症状ですが、その慢性炎症が原因で遠隔臓器に障害をもたらす病態です。
日本では病巣扁桃や歯科病巣・慢性副鼻腔炎など無症状の病変が発症に関わることが多く、推測される病巣感染巣を治療することにより掌蹠膿疱症の皮膚症状は1~2年の早期に治癒または軽快することが考えられています。
金属アレルギーとの関連が昔から考えられていましたが、歯科などの金属の除去のみで掌蹠膿疱症が軽快した例は数%しかない、という報告が最近なされ、歯科金属除去の際の歯の感染病巣の治療による効果が大きいのではないかとも考えられています。

生活指導や治療として 推奨度Bで薦められるものとして、 *禁煙(喫煙者の場合) *歯科感染治療 *扁桃摘出術
*ステロイド外用 *ビタミンD外用 *ステロイド・ビタミンD合剤外用 *シクロスポリン(免疫抑制剤)内服 *トレムフィア(生物学的製剤)注射剤 が挙げられています。したらビタミン

ビタミンDの塗り薬はIL6/8の産生を抑制することで好中球の遊走を抑え、膿疱の形成を抑えることが考えられています。合剤はステロイド単独外用に比べて水疱・膿疱への改善率が高く、皮膚の角化かリンセツ(かさかさ皮むけ)を早くに改善する傾向がわかっています。
このことから初期療法としてはステロイド+ビタミンD合剤を外用し、軽快したらビタミンD単独外用へ切り替えることが薦められています。

皮膚のみを治療するのではなく、掌蹠膿疱症の10~30%に発症する胸鎖関節炎や脊椎炎を見逃さず、場合により整形外科と連携しながら患者さんのQOLを下げないことも大切です。
今後もまた最新の情報を吸収していきたいと思います。


実家の高齢両親のヘルプや、義母の通院や入院など、子育てが終わってきてもそれなりに忙しい50代です。実家で洗濯や掃除をしてくると自宅では疲れて“もうやりたくなーい”と思ってしまうのが歳とってきた証拠です…
実家からの駅までの帰り道の夕空を眺めていると、実家にいた子供時代の気持ち、妊娠中里帰りしていた時の気持ち、この夕空を見ながらいろいろ考えていたなーと思い出します。 思春期には将来の心療内科医の夢を胸に秘めながら、妊娠時は子供を授かった幸せと無事に生まれることを願いながら、この道をこの夕空を見ながら歩いていたことを思い出し、今の自分の幸せを改めて実感します。もっと先にある自分の親を助ける未来像までは考えていなかったですが、いつかこの今の帰り道も、後から懐かしく思い出すことになるのかとも思います。
いろいろ両方の親から学ぶこともありますが、出来る範囲でできることを続けていこうと思います。

アトピー性皮膚炎の痒みに対する治療

7月はクリニックのレセプト作業の手伝いが忙しく、あっという間に過ぎ去ってしまいました。今年の夏は6月から暑かったのでこの暑さにも24時間冷房にも慣れてしまいました。室内の時間が長いと冷房で乾燥も凄いので、時々ホットヨガや運動で汗を流すことが貴重です。

この夏休みになかなかまとめて勉強する時間がなかったアトピー性皮膚炎のJAK阻害剤の飲み薬使用ガイダンスを日本皮膚科学会雑誌にて勉強しました。

アトピー性皮膚炎の発症には数多くのサイトカインが関与していますが、このサイトカインのシグナル伝達経路(ジャック・スタット経路)を阻害することにより痒みや炎症に効果的な飲み薬が現在3種類処方出来るようになりました。

オルミエント(バリシチニブ)JAK1/2阻害 成人対象 4mg、軽快したら2mg減量可

リンウ"オック(ウバダシチニブ)JAK1阻害 12歳以上かつ30kg以上 15mg、成人では状態により30mg可

サインバルコ(アブロシチニブ)JAK1阻害 12歳以上 100mg、状態により200mg可

対象患者さんは
アトピー性皮膚炎の確定診断がなされていること
ステロイド外用やプロトピック外用など適切な治療を6ヶ月以上継続していること、または
これらの外用薬の副作用や過敏症で使用出来ないこと
重症度スコアが一定以上であること

処方前の検査  JAKを阻害することにより、感染症の免疫能に影響を及ぼす可能性があるため、肺炎・敗血症・結核などの重篤な感染症が現れる可能性があることから、処方前に検査を行い、処方後も3ヶ月に一度検査が必要となります。

胸部レントゲン検査・ツベルクリン検査 : 結核の有無をチェックします。
血液検査 : 血算・肝腎機能・CRP・B型肝炎・C型肝炎ウイルス抗原抗体検査

起こりうる副反応としては
・肺炎・結核・敗血症
・帯状疱疹 / 単純疱疹
・肝機能 / 腎機能障害、好中球・リンパ球・血小板・ヘモグロビン値の減少
・間質性肺炎(乾性せき・労作時呼吸困難・発熱)
・脂質コレステロール値の上昇
・CPK値上昇
・静脈血栓塞栓症(下肢の発赤変色・痛み)
・消化管穿孔(腹痛・嘔気)
・横紋筋融解症(手足全身の筋肉痛)

アトピー性皮膚炎の比較的若い患者さんでは、帯状疱疹・ヘルペス・ニキビの副反応が多く、その時々にそれに対して治療していくこととなります。

薬価(3割負担の方)ですがまだまだ高額で
オルミエント 1ヶ月4週間 44,270円(4mg/日)
リンウ"オック 1ヶ月4週間 42,700円(15mg/日)61,700円(30mg/日)
サインバルコ 1ヶ月4週間 42,300円(100mg/日)63,500円(200mg/日)
大体3種とも、1週間で1万円くらいの自己負担になります。


JAK阻害剤の内服の特徴として、早期に痒みが軽減することが最大の利点で、早い方だと飲んで2~3日で痒みがかなり少なくなるようです。
アトピー性皮膚炎の痒みは"itch scratch cycle" =痒みと掻破の悪循環 が特徴ですので、痒みがおさまると皮膚炎症も臨床像もかなりよくなります。
事前の検査・内服継続中の検査・副作用のチェックに気をつけながらにはなりますが、痒みコントロールの飲み薬(オルミエント・リンウ"オック・サインバルコ)、薬価はまだまだ高いですが、まずは短期間トライしてみるのもよいかと思われます。

他にもアトピー性皮膚炎の痒みの新薬として、注射剤の"ミチーガ”が挙げられます。
ミチーガは、痒みを中枢に伝達するIL-31を阻害する"ネモリズマブ”が有効成分である注射剤で、13歳以上の方に4週間に一回、院内にて注射します。痒みへの効果が高いのですが、掻痒のみでなく、角質バリア機能の改善や炎症にも効果があると考えられています。
新薬なので今後また講演会などにて情報収集に努めたいと思います。

 

義父が亡くなった後、千葉県で一人で生活している義母が膝の手術をすることになり、その主治医が偶然にも大学時代のテニス部時代大変お世話になった先輩ということがわかり、卒業以来でしたが久しぶりにご連絡をとり、大学の診察に同行してご挨拶することが出来ました。
30年ぶりにお会いしても以前と変わらない先輩に懐かしく、今回お世話になるこの偶然に改めて感謝しました。
テニス部の仲間や先輩方との思い出は大学時代そのもの‥
テニスは上達しませんでしたが、培われた体力と根性と仲間や先輩は宝物だと改めて振り返りました。
昔がとても懐かしい‥本当に歳をとった証拠です。
また出来る範囲でのヘルプをしていきたいと思います。

このお盆休みは2泊、立山黒部ルートの一部、黒部ダムや立山の山並みをみる久しぶりの家族旅行を2泊してきました。長男も大学4年なので最後の家族旅行になるかもしれません、立山温泉に泊まり1日登山(というほどでもなく、ロープウェーやトロッコ電車・バス乗り継ぎ+少し歩き)の思い出を家族5人で作ることが出来ました。付き合ってくれた長男にも思春期娘たちにも感謝感謝かな‥‥とても良い夏の思い出となりました。
まだもう少し続く今年の暑い夏をまた健康に乗り切っていきたいと思います。

 

 

 

 

円形脱毛症の新しい治療について

毎日猛暑の6月後半が過ぎ、あっという間の7月です。
最近皮膚科の新薬が多く、ウェブやメーカーさんの説明会や講演会・雑誌で簡単に薬剤情報が手に入る時代となり本当に有り難い限りです。

今までより効果的な新しい治療法がなかった"円形脱毛症”に対して最近適応になった"オルミエント”という飲み薬について、伊藤泰介先生と谷岡未樹先生の講演会記事を勉強しました。

本来、ヒトの体の免疫とは、自分の細胞の抗原タンパクを認識して攻撃しないようになっていて、"免疫寛容”といわれますが、円形脱毛症ではその"免疫寛容”が破綻してしまい毛根へ攻撃信号を伝えるサイトカインが過剰に作られ、免疫細胞が毛根を攻撃してしまいます。
それにより毛包組織がアポトーシスに陥り毛が抜けてしまいます。
この過程のうち、攻撃信号を伝えるサイトカインが受容体にくっつき、JAK(ジャック)というタンパク質を介して攻撃信号が細胞の"核”に伝えられることで、免疫細胞が毛根を攻撃するようになります。

オルミエントは、この、信号を核に伝える"JAK”にくっつき信号が伝わらなくなるような"JAK阻害剤”の飲み薬です。もともと、アトピー性皮膚炎や関節リウマチにも有効で適応のある薬です。
JAKを阻害することによりやや免疫力を下げることがあるため、胸部レントゲン検査(結核がないかどうか)や採血(肝炎ウイルスがないか、腎機能やリンパ球に異常がないかどうか)などが事前に必要になります。

主な副反応は、風邪症状(上気道感染)・顔ニキビ・帯状疱疹・ヘルペスなどになります。

オルミエントは通常4mgを1日1回、食事に関係なく内服します。
皮膚科の分野ではアトピー性皮膚炎の痒みにもとても有効でガイドラインにも記載されている薬です。
円形脱毛症の4割の方にアトピー性皮膚炎を合併しているといわれているので両方発症している方はとくにオススメです。
ただ薬価がまだ高く、保険3割の方で4週間(一ヶ月)で44000円もします。もちろん高額医療費や付加給付なども使用すれば自己負担はもっと下がることになります。
ただし内服治療を続けて効果が出て毛が再生しても、内服中止により円形脱毛症の再燃が起こることが報告されていますので、基本的には継続する必要があるようです。今後、さらなる情報収集に努めたいと思います。

円形脱毛症や尋常性白斑などの今まであまり良い治療がなかった"自己免疫性疾患”に対して、他の病気で適応がある薬が保険適応になると、事前に副反応や対策などもわかっている分、治療に取り入れやすいかと思います。諸先生方のオルミエントの円形脱毛症でのご経験をまた講演会などで聞いていきたいと思います。

円形脱毛症だけでなく、同じく難治性の自己免疫疾患である"尋常性白斑”も、現在同じJAK阻害剤の塗り薬である"ルキソリチニブクリーム”が有効性が高くこれから本格的に認可され、紫外線療法(ナローバンドUVB)との併用療法がすすむと考えられています。

JAK阻害剤の内服や外用は今後も多くの病気の治療の選択肢として臨床的に使われてくることと考えられます。また副反応含めて勉強していきたいと思います。

 

しばらく通っていた自宅近くの常温ヨガがお客さんが少なすぎてか、ついに閉じてしまいました‥‥一面がガラス張りで外のお庭の緑が見えるスタジオで、マンツーマンに近い少人数レッスンが贅沢な時間でしたが、やはり経営が前提です、1回経営母体が変わった後についにクローズしてしまいました。ですので、汗だくでも終わったらすぐ帰れる近くのホットヨガに行き始めました。お店も都内で数店舗ある生徒数も少し多いホットヨガスタジオなので閉じてしまう心配もなく、週末通っています。たくさん汗をかいて時に少しキツいトレーニング系、もしくはストレッチの気持ち良い汗をかいて。 Feel cycleと共に、汗をかいて暑熱順化し、熱中症予防とリラックスのために。そして汗をかくと皮膚も少しスベスベするのでしばらく楽しみたいと思います。そして特別暑い今年の夏を乗り切っていきたいと思います。

 

 

汗と体臭のコントロールについて

6月に入り暑くなり、ジメッとした汗と共に汗のニオイや体臭も気になる季節になりました。定期購読している美容雑誌で"体臭や汗のニオイ”について特集記事があり、御専門の須賀康先生(順天堂)・藤本智子先生(ふくろう皮膚科)・志水弘典先生(マンダム・北里薬学部)の座談会記事ですこし勉強しました。

外国人は体臭を個人の個性と肯定的にとらえているのに対し、日本人は体臭全体に対し否定的に捉えることが多いのは、海外では腋臭症に近いレベルの臭いを発生する遺伝子を持つ方は6~8割もいるのに対し、日本人では2割程度といわれているからだそうです。

特に臭いで悩む部位としては、腋窩が多く、足・頭部が挙げられます。

足の臭いは大人だけでなく子供も多く、汗腺の数は大人も子供も同じなので小さな子供の足では汗管密度が増えて臭いが強くなります。足の臭いは "イソ吉草酸” が本体と考えられ、汗に含まれるアミノ酸が皮膚の常在細菌により分解されてイソ吉草酸が産生されると考えられます。

頭部の臭いは40歳代男性で強くなることが多く、原因成分は最近では"ミドル脂臭”といわれる "ジアセチル” で中年男性特有の臭いと考えられていますが、最近ではこの中年男性頭部や首に特化したボディケア製品も出てきています。
この "ミドル脂臭” はいわゆる "2-ノネラール” が原因物質である "加齢臭” とは別物で、30歳から増加し40歳がピークである "ジアセチル” という劣化した油のような臭いということがわかりました。枕などにつきやすい油っぽい臭いです。"ジアセチル" は微量でも臭いやすく(嗅覚閾値が低い)、拡散しやすく、女性が気付きやすいといわれています。
機序としては、汗の成分が皮膚常在菌により代謝されて "ジアセチル” が発生し、毛穴から出る皮脂が常在菌により代謝されて発生する "中鎖脂肪酸” と合わさる結果、この 後頭部・首のウシロの "ミドル脂臭” が発生するといわれています。
対策としては、発生しやすい後頭部と首のウシロを1分以上丁寧に洗うこと、そして "加齢臭” 対策と同じですが、抗酸化力の維持!
具体的には、タバコや飲酒を控える・バランス良い食生活・適度な運動・肥満防止 などが挙げられます。確かに後頭部や首ウシロは意識しないと男女ともサラッと洗いやすい部位かと思います。1分以上は案外長いです。気をつけたいと思います。そして、当たり前のように分かってはいますが、改めて規則正しい生活・食事・運動、特に抗菌力を持つ汗をしっかりかくこと‥これらも引き続き心がけていきたいと思います。

腋窩の臭いは約7種に分類され、乳っぽいミルク型が多く、すっぱいような酸的なタイプ・カレースパイスタイプ・カビタイプ・蒸し肉タイプ・そのほかに分類されます。このうち、カレータイプの中の約3割、全体としての1割の方が非常に強い体臭であることが分かっています。このような方は入浴後も時間とともに元の体臭に戻るため、ケアが必要になります。
また、遺伝的な腋臭症の方の8割以上が耳垢が湿っていることが報告されています。

基本的には汗の治療をすると体臭も軽減するので多汗の治療+臭いの発生部位を清潔に保つ、という対策が基本となります。
従来の形成外科的な手術は効果的ですが、他の部位の発汗が増えてくる代償性発汗が問題となります。
エクロックゲルのような処方外用薬や塩化アルミニウム液の外用療法のほか、最近は"ミラドライ”という低周波マイクロ波治療器の有効性が知られています。
"ミラドライ” は汗腺をマイクロ波により焼却するため効果が安定していますが、何より皮膚に傷をつけないこと・ダウンタイムが短いのが魅力的です。
慈恵医大形成外科 宮脇先生や山梨医大形成外科 百澤先生のご報告によると、合併症としてごく小さな火傷+火傷による小さな皮膚潰瘍がわずかな割合で起こるそうですが、半年くらいで気にならない程度の痕になるそうです。
また、BMI20以下の痩せ型の方では瘢痕拘縮が起こりますが徐々に目立たなくなってくるようです。

今までタブー化され、治療の選択肢が少なかった多汗・体臭の治療にいろいろ選択肢が増えてきて悩んできた患者さんの生活の質が上がることは喜ばしいことです。また情報収集していきたいと思います。

6月以降、新しい外用薬としては、アトピー性皮膚炎の非ステロイド薬 ”モイゼルト軟膏”や、酒さの外用薬 "ロゼックスゲル”が処方出来るようになりました。またこちらも情報収集していきたいと思います。


都内に住む高齢の実両親は二人で過ごしていますが、姉と交代で週2日ほど訪問しています。ゴミ捨てや力仕事などもあり少しの時間でもすこし疲れます。でも普段二人で過ごしていてくれることに感謝し、特に認知のある母と過ごしてくれている父に心から感謝します。そして普段こうして自分の仕事に没頭できていることを改めて有り難いと感じながら‥‥そして姉と同じ思いを共有できることも有り難く感じながら、自分の出来る範囲でヘルプを続けていきたいと思います。

 

汗の重要性と、多汗について

腋窩の多汗症外用薬、"エクロックゲル”や"ラピフォートワイプ”が処方出来るようになってから、汗についての講演会や論文に触れる機会が多くなりました。先日、無汗症加療でご著名な埼玉医大神経内科の中里先生の講演を面白くうかがいました。

ヒトの汗管は生後2歳までに能動化するといわれていて、乳幼児期をどこで暮らしたか、が大きく関わっていると考えられています。例えば同じ人種でも2歳までロシアなど寒い地域に暮らした場合と、熱帯で多量の汗をかいて暮らした場合では、大人になってからの汗のかきやすさが異なります。日本人で日本でずっと暮らした場合は、寒い地域と暑い地域の方のちょうど中間ぐらいの発汗量といわれています。

また発汗には精神的発汗と温熱発汗があり、手足の汗は精神的発汗、手足以外は温熱発汗と考えられます。
発汗量は、"汗管密度”×"発汗能” で決まります。密度は加齢により変わりませんが、発汗能は年齢と共に低下していくので、若者の方が汗の量が多いのです。能動汗腺の密度が高い部位は、額、手のひら、足の裏で他の部位より発汗量が多くなります。

最近6,7月の真夏になる前に熱中症を発症する方がいるのは、暑さに慣れていないことが原因と考えられています。暑くなる前から少しずつ汗をかく刺激を与え、汗をかき続け、身体を暑さに慣れさせること、つまり"暑熱順化”の重要性が認識されてきています。

1日数時間の汗をかく刺激で7~10日で発汗が増え、順化してくるといわれていますが、そんなにハードに汗をかかなくても、やや暑い環境でややキツい運動や歩行を2週間程度行うことで暑熱順化してくるといわれています。特に汗をかきにくい低血圧の女性や、加齢にともない汗をかきにくくなっている中年以降の私たちは、真夏の前の今のうちから少し暑い環境化での汗かく運動や入浴などを行い、暑熱順化し、熱中症を予防していくことがすすめられます。
いつも音楽の楽しみと体力維持のために行っている"Feel cycle”で私自身もすでに知らずに暑熱順化できているのかもしれません。(週2日、45分間、暑い中で汗びっしょり、気分もスッキリ)

そんな大切な汗ですが、皮膚に残ってしまうと汗で増えるマラセチア(皮膚に常在している真菌)が痒みや皮膚炎症を悪化させたり、汗の中のグルコース濃度が増えるとアトピー性皮膚炎の炎症が悪化したり、また腋窩や身体の汗が多すぎると洋服にできる汗ジミで人目が気になる、制汗剤にお金がかかる、自分に自信が持てないなど、不都合な点もみられます。

汗をかいたらなるべくシャワーで流す、濡れたもので拭き取る、腋窩の多汗には"エクロックゲル”や"ラピフォートワイプ”で治療する、などきちんと対策を行いしっかり汗をかくことがすすめられます。これらの薬は大きな副反応もなく、他の部位がより汗をかきやすくなってしまう"代償性発汗”もないため、お子さんや思春期の方でも使いやすい薬剤です。エクロックゲルは12歳~、ラピフォートワイプは9歳~使用できます。
汗は夜間作られることから夜外用といわれてきましたが、朝でも夜でも有効性に差が無いことがわかったため朝起床後にぬる、でも大丈夫です。腋窩多汗は病気と考えられず諦めてしまっていた方にも本当にオススメです。

最近急に暑くなり、これからの時期早めに汗と上手に付き合っていくことが大切です。何より真夏になってから急に熱中症にならないために今のうちから汗をしっかりかいて暑熱順化することがおすすめです。若い時と違い、トシとともにまあまあキツメの運動や長めの入浴でもしないと汗をかく機会も少なくなりますので意識しないとなかなか汗もかけません。
ただ皮膚に残る汗は時間と共にメリットは損なわれ、デメリットの方が増えるのでしっかりとマメに流す、拭き取ることを忘れずに意識して汗をかき続けていきたいと思います。

 

6月1日からはアトピー性皮膚炎の新たな塗り薬・モイゼルト軟膏がようやく処方出来るようになります。

PDE4(ホスホジエステラーゼ4)はアトピー性皮膚炎の炎症細胞で増えている酵素で炎症を抑制するシグナルを分解し炎症を悪化させてしまいます。モイゼルト軟膏はこのPDE4を阻害する軟膏で、炎症を抑制するシグナルを上昇させ、アトピー性皮膚炎の炎症と痒みを改善します。
15歳以上は1%の緑のチューブ、2歳以上は0.3%の黄色のチューブが適応になります。塗ったときのホテリ感もなく、大きめ10gチューブで塗りやすく、効果が期待できます。コレクチム軟膏、モイゼルト軟膏と、非ステロイドの外用薬が増え患者さんの選択肢が増えることは素敵なことです。また今後も情報を集めていきたいと思います。


コロナ以前のようにはいきませんが、徐々に少人数の食事が出来るようになったり、久しぶりの同窓会などの話なども出てくるようになりました。この2年間本当に思うように会えなかった仲間や友人達と久しぶりに会えたり出来るようになるといいな~と願うばかりです。

 

かゆみの病態について

今年の連休は、コロナ関連のレセプトが大変で医療事務の方々の残業が続いたため1日休診にさせていただき、5連休とさせていただきました。あっという間の連休でしたが、義父のお墓参りや実父母の受診付き添い・娘達と買い物など、普段出来ないことも少し出来て良いお休みでした。旅行や帰省も少しずつ増えて、昨年よりは気持ちも明るい5月となりそうです。

今月号の日本皮膚科学会会誌の特集が"かゆみの病態”でしたので、森田療法を実践していくためにも患者様に"痒みのメカニズム”を簡単に説明するのも重要と考え、改めて勉強しました。まずは端本宇志先生(防衛医大)の論文です。

皮膚で生じた痒みイベント ⇒ 皮膚に存在する痒み選択的末梢神経(無髄C線維・有髄Aδ線維)を刺激 ⇒ 
脊髄内部の興奮性介在ニューロンと抑制性介在ニューロンで処理される(興奮性:痒みを伝達/抑制性:痒みを抑制)⇒
脊髄内の神経回路で処理された痒み刺激シグナルは"脊髄視床路”や"脊髄傍腕核路”を経由し、脳へ伝達され処理される

この中でまず、抑制性介在ニューロンは掻破・寒冷刺激・疼痛刺激で活性化されることが分かっていて、臨床的にも掻いたりクーリングしたりつねったりすると痒みが和らぐのは、この抑制性介在ニューロンが活性化して痒み刺激を抑制するから、と考えられます。
また、ある抑制性介在ニューロンはノルアドレナリン神経系にもコントロールされていて、交感神経優位(ノルアドレナリン優位)の昼間では痒みを感じにくいですが、副交感神経優位の夜間では痒みを感じやすくなります。

次に、脳と痒みとの関連ですが、
引っ掻く ⇒ 
脳の不快感を司る領域(前帯状皮質・島皮質)が抑制される+快楽を司る領域(線条体・中脳)が活性化される ⇒
痒いところを引っ掻くと、快感を覚える。
慢性的な痒みが続くと、これらの痒み関連の領域の機能や構造が変化し、痒み過敏/痒みの固定化が生じると考えられます。
また、アトピー性皮膚炎などの慢性的な痒みで引っ掻くことが癖になってしまうのは、脳のこれらの領域の関与が要因と考えられます。

痒みは *皮膚 *末梢神経 *脊髄 *脳 のステップが関与していて、"皮膚”に痒みの引き金が無くても、末梢神経や脳に異常や変化が生じれば痒みが出る可能性があります。このように皮膚に痒みの原因となる病変がみられない場合は"皮膚掻痒症”と呼ぶこともあります。

慢性的な痒みにおいて生じる、"痒み過敏”には"ハイパーネーシス”と"アロネーシス”があります。
"ハイパーネーシス”は痒み過敏に対して過剰に痒みを感じてしまう状態、"アロネーシス”は通常では痒みと感じない刺激に対しても痒いと感じてしまう状態です。
この2つの"痒み過敏”は、皮膚・末梢神経・脊髄・脳の全てのレベルにおいて痒みを感じる神経の感受性が高まることが原因であると考えられています。 
皮膚:炎症・神経の変化・加齢によるメルケル細胞の減少
末梢神経:痒み関連物質・受容体発現の変化
脊髄:痒み抑制介在ニューロンの機能障害・痒みを抑制するノルアドレナリン神経系の機能障害
脳:痒みに関連する領域の機能変化

次に、皮膚の痒みイベントにより刺激された痒み選択的末梢神経には、ヒスタミン(古典的な起痒物質)に反応する神経と、ヒスタミンに反応しない神経があります。
急性蕁麻疹のような急性の痒みではヒスタミンが病態の主役となるため、抗ヒスタミン剤は著効しますが、慢性の痒みであるアトピー性皮膚炎や結節性痒疹などでは抗ヒスタミン剤のみで痒みをコントロールできることは少なくなります。つまり、急性の痒みではヒスタミン依存性かゆみが主ですが、慢性の痒みではヒスタミン非依存性痒みが優勢となります。

最近ではこのヒスタミン非依存性痒みの一つであるTh2サイトカインの起痒物質をターゲットとした薬剤の開発がすすみ実用化されています。

デュピルマブ(デュピクセント)は、IL4,IL13を抑制する薬剤ですが、IL4,IL13は、痒み神経の閾値を下げてしまい”痒み過敏”を生じるとともにそのものが起痒物質としてアトピー性皮膚炎の痒みに関与しています。
IL31もTh2サイトカインでアトピー性皮膚炎や結節性痒疹や疥癬などの痒みを伴う皮膚疾患の皮膚病変部で発現していて、神経を直接刺激し痒みを生じることが分かっています。
ミチーガ(ネモリズマブ)はIL31を抑制する薬剤ですが、アトピー性皮膚炎や結節性痒疹の痒みに著効するといわれています。
このIL31はTh2細胞から産生されるサイトカインと考えられていましたが最近の研究では、全身の組織に存在するマクロファージ(貪食細胞)もこのIL31を産生し痒みに深く関与していることが分かりました。

従来のステロイド外用や抗ヒスタミン剤の内服だけではなく、痒みを担当する物質をターゲットとした薬剤の開発が今後も進むことが予想されます。痒み、奥が深く、まだまだです。皮膚の疾患と"痒み"は切っても切れない関係ですので今後も新しい情報を学んでいきたいと思います。

 

最近娘の一人は思春期のためか、22歳の兄に対して厳しい。実家にて自分の事をしない兄に対して、"自宅育ちで何も片付けない彼”を持つ女子の嘆きのツイートを送りつけて、あんたと同じ!何もしない!自分のことは自分でしろ!女にもてない!と口うるさく私の代わりに注意してくれます。ママがやっちゃうからダメなんだよ!!と私に対してもトバッチリが‥将来口うるさい女子になること間違いなしです。

思春期の娘たちを観ていると最近本当に面白いです。お化粧や美容、ファッションに興味津々。異性に対しても理想像が出来てくる頃なのでしょうけれど、いずれ将来そんな理想像は打ち砕かれて、所詮みな"兄”と同じ、ということが分かってくるのでしょう‥
この情報過多の時代にどんな思いでどんな将来を思い描くのか、とても“お利口さんで理想的な娘たち”ではないけれど、どんな女性に育っていくのか親としても今後が面白く楽しみです。そんな子供達とぶつかり合いながらも一緒に過ごす賑やかな毎日は、後から考えると貴重な日々なのだと思います。余裕があれば楽しみたいものです…





皮膚科の外来における森田療法について

前回に引き続き、毎月通ってきてくださる慢性疾患の患者さんに対し、心身医学的な皮膚科診療を実践していらっしゃる皮膚科医 細谷律子先生の、外来でできる森田療法について勉強しました。
少ない外来の時間の中で、患者さんに行動への動機付けを行ったり、考え方を転換させることは簡単なことではありませんが、まず一番大切なことは患者さんの心情に十分に"寄り添う”ことです。

* 慢性化・難治化した患者様には心理的な側面も考慮する必要があり、まずは真剣に耳を傾けて、患者さんの感じた私的な世界をまるで自分のものであるかのように感じ取り、それでもその怒りや恐怖に巻き込まれない態度で接するように心がけます(共感的理解)。

* 習慣化した行動に対する指導や治療 
1.気が付かせる
患者さんは自分の搔破(掻く)習慣に気が付かないことも多いので、まずはノートに書くなどセルフモニタリングを行うように指導し無意識に行われている行動に気が付かせること、気が付くだけで皮膚症状が良くなる方もいますが、いつのまにか掻いていないと不安という依存状態になり、掻くことを意識すればするほど掻いてしまうこともあるようです。

2.行動変換の指導
無意識に動いてしまう手に対して、"気が付いたら手や腕を組む” などの反射的な練習を指導したり、深呼吸して緊張を解く・健康的な代替えの行動を時間を決めて行う、など習慣化した行動の変換を試みます。

3.悪循環が背景にあることを気付かせる
かゆみに対して意識が高まるほどかゆみを敏感に感じ取ったり、掻くのをやめなければと意識するほど掻いてしまう、という悪循環に気が付かせること、患者さんが没頭して掻き続ける時は、"なんとなく触っているうちに痒くなり止まらなくなる” "はじめは痒くて掻くが,かゆみがとまっても掻くのを止められない”など、 itch scratch cycle (搔破の悪循環)が生じ、クセ的搔破や触りグセが加わり悪化していくことが多いのです。

4.不安のすり替えに気付かせる
仕事や受験・学校の不安から免れようとして掻いたり叩いたりすることがありますが、それらの行動はいくら行っても不安の解決にはならず、掻くことを止められなくなってしまうこともあります。そして搔破が進むと皮膚症状は重症・難治化していきます。いつの間にか不安の原因が現実の不安から皮膚症状へとすり替わり、皮膚さえ良ければ何でも出来る、と思ってしまうこともあります。

5.不安は"そのままに”行動するよう指導
感情は意志で変えられないので、操作不可能な不安は"そのままに”行動するように指導します。不安やイライラでとっさに皮膚に手がいってしまう場合は、とりあえず目の前の机を拭いたり、目の前の家事に取り組むなど、身体を動かすことを指導します。
何かあったらとりあえず掃除、などと自分の得意な動きを身につけておくことが得策です。心配や不安の気持ちや体力を取りあえず行動に向けさせます。
無心に行動する中、解決策が浮かぶこともあり、またそうした生活習慣が徐々にイヤな気分を "持ちながら” 物事に取り組む姿勢を身につけさせていきます。
その際、ポイントとなる言葉として、"まあいいか”・"変えられないものは変えようとしない”・"取りあえず”やってみる などが挙げられます。これらの言葉を心で唱えながら実行するのもオススメです。

6."とらわれ”や悪循環からの解放
完璧や理想の自己像にとらわれず、今できる一歩を積み重ねていくよう指導します。自分の"足りない”部分を嘆くのでなく、"持っている”部分を生かすこと、すなわち理想自己をけずり現実自己を膨らましていきます。

7.あるがままの体得
不安はそのままにやるべき事を行う"あるがまま”の体得により行動本位の生活を実戦するうちに自己肯定感が生まれ、肯定的に解釈する習慣がつき、自分の過去のネガティブな経験も意味あるものと肯定的に捉えられるようになります。
いつのまにか、自分の気分や皮膚症状に執着した自己中心的な意識は外に広がり、かゆみや搔破行動のとらわれから解放されていきます。

最後に細谷先生はこう書かれていらっしゃいます。

治療は、医師と患者の人間関係で行う場であるので、医師側の治療的自己の重要性が言われています。
森田療法を実践する治療者が、いかに"あるがままに”生きているか、が大切です。治療者自身がどうあるか、が大事なのでしょう。

私自身も必要なときに少しだけでも森田療法を実践していけるように、まずは"治療的自己”を顧み、"とらわれ”から脱却しあるがままの実践を心がけたいと思います。


本日はサンファーマさんのルコナック液発売6周年講演会があり、鳥取大学の山元修先生・さとう皮膚科の佐藤俊次先生・順天堂大学の小川祐美先生のご講演を聞きました。

・ルリコナゾールは、3層構造の厚い糸状菌(水虫菌)の細胞膜のみでなく細胞壁も傷害して薬液の浸透を高めること。
・爪の患部のみに塗るのではなく、正常部位に広がらないように、まずは周りの正常部位の爪に塗ってから患部に塗るようにすること。
・可能な範囲でニッパなどで、爪甲削除やデブリを行いマーカー型のルコナック液を塗り続けることにより、塗り薬だけでも完治できること。
・臨床的に治ったと思われても再発防止のためには、臨床的治癒から4ヶ月は外用を続けること、初診から数えて約2年程度は続けることが重要であること。臨床的なイメージでは重度の爪白癬だった場合は爪の濁りが消えて透明になるまで続けることが大切であること。

などを改めて認識し、なかなか少ない爪白癬の講演会を聴けて有意義な時間でした。特に最後の小川祐美先生は順天堂の医局の数年後輩にあたりますが、以前から理知的で明るく真面目な先生でしたが子育てもしながらこうしてご講演もされていらっしゃる姿に深く畏敬の念を抱きました。


まだしばらくはコロナはゼロにならないかと考えられますが、ほとんどの方が軽症~中等症となる中、1.6%の方が重症化しています。最近コロナの重症化と"腸内細菌”との関連を報告する研究が報告もされていますが、東京都医師会雑誌に山梨県の窪田良彦先生が"腸内細菌バランス”の重要性を書かれていらっしゃいました。
腸内細菌は *食べ物の消化 *ビタミン産生 *腸のエネルギー産生 *有害物質の解毒 *病原菌が増えるのを抑制 *免疫の刺激 などの働きを担います。
3歳くらいで成人に似た腸内細菌叢に近づき、この時期が最も理想的な腸内環境と言われているそうです。その後は加齢に伴い生活環境や食生活に影響を受け、乳児期のビフィズス菌(善玉菌)は老年期には100分の1に激減していきます。
この、加齢に伴う腸内細菌のバランス変化は、大腸ガンや炎症性腸疾患・さらには肥満や糖尿病・動脈硬化やアレルギー疾患にも関与します。

健康な人の腸内では、善玉菌:悪玉菌:日和見菌=2:1:7 の割合で腸内環境が維持されていますが、このバランスが崩れると免疫力低下による健康被害が起こってきます。このコロナ禍で自分自身の免疫機能を高めていくこと=腸内環境を整えていくことがとても大切です。

運動やストレス軽減、食生活をすこし気をつけて腸内環境を少しでも上手にコントロールしていきたいと思います。
我が家でも成長期の娘たちは少しずつ体型を気にして野菜中心に自分で気をつけたり、筋トレにはまる長男はタンパク質+野菜中心に自分で適当にやっています。今はコンビニも健康的で野菜や食物繊維・タンパク質豊富なものがたくさん売っていますので、忙しい時は無理せず大いに活用しています。本当に便利な世の中に感謝です‥。



皮膚科と心身医学:森田療法について

今月の日本皮膚科学会会誌のテーマは一番興味のある"皮膚科の心身医学”です。まずはわかりやすい"外来でできる森田療法”について、細谷皮膚科の細谷律子先生の論文を読みました。

経過の長い皮膚疾患の方の中には皮膚症状だけでなく、痒みや摩擦に影響を受け難治化していることがあります。分かってはいても掻くことをやめられない、など"とらわれ”や"こだわり”から解放させる手助けとなる一つが心理的側面を配慮した治療です。
森田療法の創始者である森田正馬氏によると、"とらわれ”の背景には"こうでなければならない”・"そうであってはならない”という考えの癖の根底に"神経質性格”の存在があるとしましたが、この神経質さは多くの人が少なからず持っている性格傾向であるので、もともと神経症の治療として用いられた森田療法は、多少の不安や葛藤を抱えながら生きる方々ならば誰でも有効な治療法となります。

1919年に創案された森田療法(森田正馬氏)は従来の西洋医学的な心理療法と異なり、患者さんが抱える不安を取り除くこと目的とはせず、"全てはあるべきようにある、逆らわずありのままを受け入れる生き方が大切である”とします。
人生は流れる川のようであり、心は絶えず流動変動する。自分中心で組み立てられた考えで全てをコントロールしようとする生き方はやめて、ありのままを受け入れて、本来持っている向上発展の欲望に向かって行動していこうという考えです。
具体的には、

1.感情は操作不可能:自然と湧き上がる感情は操作不可能で、不安だけを取り除こうとしても取り除けないものですが、それでも感情は放置すれば山形をたどってついには消えていきます。つまり感情はその感覚に慣れるに従い鋭さを失って徐々に感じなくなっていきます。刺激か続くとき、注意を集中するときに感情は強くなります。

2."とらわれ”の悪循環:不安や恐怖などの感情に注意を集中すると、さらにそれらは強く感じられ、その結果さらに注意が集中してしまいます。 この"とらわれ”の感覚(正式には"精神交互作用”)は痒みや痛みの感覚・搔破や摩擦などの行動にもみられ、難治化した皮膚症状の患者さんにもみられます。

3.不安と欲望:不安はこうありたい、という欲望と表裏一体であり、欲望が強いほど不安も大きくなります。つまり失敗への不安の背景には上手くやりたいという欲望があり、不潔恐怖の裏には清潔・安全でいたいという欲望があります。

4.不安はそのままに:不安や感情はそのままにし、今やるべきことをやっていくことを指導する(行動本位)。"外相整えば内相自ら熟す”の理念のもと、行動することによって心理的変化が生じるという考えのもと、不安はそのままに、とりあえず日常の雑事などの目の前の事に手を付けるように指導します。その後にやがて他者や社会に役立つ行動も勧めていきます、なぜなら他利的に生きること、貢献感は充足感や幸福感を生みだすからであります。

5.行動本位と目的本位:不安はそのままにやるべき事を行う"行動本位”とともに"目的本位”に行動することを指導するようにします。例えば、人前で話すと赤くなるのが不安、という人には、赤くなっても伝えられれば良いので話そう、というように、不安になりながらも目的本位に行動することを指導します。

6.認知の歪み:自己の心身の自然な反応を取り除こうとすること、つまり自分の感情や身体の感覚などを知識や概念で思い通りに操作しようとする心のあり方は"とらわれ”や悪循環を強めます。真面目で目標設定が高い患者さんほど、理想と現実のギャップに葛藤して"こうあらなくてはくてはならない”と苦しんでいることが多く、特に思春期はこうありたいという理想欲が非常に高く、頭で作りあげた理想の自分と、現実の自分のギャップに苦しむことも多いと考えられます。統計でも、成人型アトピー性皮膚炎の方の93%が思春期以降に皮膚症状が広がったという報告もあります。

7.生きる力:不安と表裏一体である"生きる力”、よりよく生きたいという"生の欲望”を重んじ、それが"完全欲”や"理想の自己への縛られ”に空回りしないように、生きる力を現実の行動へと結びつけさせていきます。それが、その人らしく生きることを可能とし、ありのままの自分を受け入れていくことにつながります。

8."はからい”と"とらわれ”:不安や落ち込みを何とかしようとあれこれ考え行動することを"はからい”とよび、はからえばはからうほど不安や苦しみを強めて"とらわれ”の状態となる、すなわち症状を消そうとすればするほど症状は強まっていきます。

9.両面観:一見マイナスである事柄や性格にも見方を変えるとプラスの面があるということ。病気をして命のありがたさを実感するなど、苦楽は両面観でみると単純に幸/不幸を判断することはできません。

10.流動観:事物は動き、変化し、心も流動していくものである、いま苦しみの中にいても時の流れとともに人も心も社会もかわっていくもので、喜怒哀楽も流れに任せていくことが大切であると考えます。こだわりや"とらわれ"は苦しみを増大させます。

11.あるがまま:
*現実や解決不能な問題に対してのあるがまま 
*人間の意欲や向上心に対してのあるがまま 
*見落としがちな今の事実(身体が動ける・事故/犯罪に巻き込まれなかった等)を観るあるがまま
 あるがままの体得が"とらわれ”からの脱却と生きる姿勢に変化を生じ、その結果症状に改善がみられるようになり、人生に対する受容の心も生まれてくるようになります。

皮膚科医細谷先生の論文にはこの森田療法の概念を基本として、皮膚科の外来にて治療や指導に生かすすべが具体的に記載されています。習得には時間がかかりそうですが、これから勉強して出来る範囲で実践していきたいと思いました。

あるがまま、の概念で子育ても、自分自身のこれからも、過ごしていきたいものです。
桜咲く春の季節、まさに今、竹内まりやさんの"人生の扉”の歌詞が素敵で、満開の桜を観ながら口ずさみたくなります。

I say it's fun to be 20. 
You say it's great to be 30. 
And they say it's lovely to be 40. 
But I feel it's nice to be 50.
その後も fine to be 60 / alright to be 70 / still good to be 80 と続きます。

あるがままに、自分の年齢の変化を意識したいと思います。
確かにこれから訪れる50代はそう悪くないのかな、まあまあ nice なのでしょう、40代のようにlovelyとまではいかないまでも。そんなことを思いながら今年の桜を楽しみたいと思います!

 

 

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