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2022年3月

皮膚科と心身医学:森田療法について

今月の日本皮膚科学会会誌のテーマは一番興味のある"皮膚科の心身医学”です。まずはわかりやすい"外来でできる森田療法”について、細谷皮膚科の細谷律子先生の論文を読みました。

経過の長い皮膚疾患の方の中には皮膚症状だけでなく、痒みや摩擦に影響を受け難治化していることがあります。分かってはいても掻くことをやめられない、など"とらわれ”や"こだわり”から解放させる手助けとなる一つが心理的側面を配慮した治療です。
森田療法の創始者である森田正馬氏によると、"とらわれ”の背景には"こうでなければならない”・"そうであってはならない”という考えの癖の根底に"神経質性格”の存在があるとしましたが、この神経質さは多くの人が少なからず持っている性格傾向であるので、もともと神経症の治療として用いられた森田療法は、多少の不安や葛藤を抱えながら生きる方々ならば誰でも有効な治療法となります。

1919年に創案された森田療法(森田正馬氏)は従来の西洋医学的な心理療法と異なり、患者さんが抱える不安を取り除くこと目的とはせず、"全てはあるべきようにある、逆らわずありのままを受け入れる生き方が大切である”とします。
人生は流れる川のようであり、心は絶えず流動変動する。自分中心で組み立てられた考えで全てをコントロールしようとする生き方はやめて、ありのままを受け入れて、本来持っている向上発展の欲望に向かって行動していこうという考えです。
具体的には、

1.感情は操作不可能:自然と湧き上がる感情は操作不可能で、不安だけを取り除こうとしても取り除けないものですが、それでも感情は放置すれば山形をたどってついには消えていきます。つまり感情はその感覚に慣れるに従い鋭さを失って徐々に感じなくなっていきます。刺激か続くとき、注意を集中するときに感情は強くなります。

2."とらわれ”の悪循環:不安や恐怖などの感情に注意を集中すると、さらにそれらは強く感じられ、その結果さらに注意が集中してしまいます。 この"とらわれ”の感覚(正式には"精神交互作用”)は痒みや痛みの感覚・搔破や摩擦などの行動にもみられ、難治化した皮膚症状の患者さんにもみられます。

3.不安と欲望:不安はこうありたい、という欲望と表裏一体であり、欲望が強いほど不安も大きくなります。つまり失敗への不安の背景には上手くやりたいという欲望があり、不潔恐怖の裏には清潔・安全でいたいという欲望があります。

4.不安はそのままに:不安や感情はそのままにし、今やるべきことをやっていくことを指導する(行動本位)。"外相整えば内相自ら熟す”の理念のもと、行動することによって心理的変化が生じるという考えのもと、不安はそのままに、とりあえず日常の雑事などの目の前の事に手を付けるように指導します。その後にやがて他者や社会に役立つ行動も勧めていきます、なぜなら他利的に生きること、貢献感は充足感や幸福感を生みだすからであります。

5.行動本位と目的本位:不安はそのままにやるべき事を行う"行動本位”とともに"目的本位”に行動することを指導するようにします。例えば、人前で話すと赤くなるのが不安、という人には、赤くなっても伝えられれば良いので話そう、というように、不安になりながらも目的本位に行動することを指導します。

6.認知の歪み:自己の心身の自然な反応を取り除こうとすること、つまり自分の感情や身体の感覚などを知識や概念で思い通りに操作しようとする心のあり方は"とらわれ”や悪循環を強めます。真面目で目標設定が高い患者さんほど、理想と現実のギャップに葛藤して"こうあらなくてはくてはならない”と苦しんでいることが多く、特に思春期はこうありたいという理想欲が非常に高く、頭で作りあげた理想の自分と、現実の自分のギャップに苦しむことも多いと考えられます。統計でも、成人型アトピー性皮膚炎の方の93%が思春期以降に皮膚症状が広がったという報告もあります。

7.生きる力:不安と表裏一体である"生きる力”、よりよく生きたいという"生の欲望”を重んじ、それが"完全欲”や"理想の自己への縛られ”に空回りしないように、生きる力を現実の行動へと結びつけさせていきます。それが、その人らしく生きることを可能とし、ありのままの自分を受け入れていくことにつながります。

8."はからい”と"とらわれ”:不安や落ち込みを何とかしようとあれこれ考え行動することを"はからい”とよび、はからえばはからうほど不安や苦しみを強めて"とらわれ”の状態となる、すなわち症状を消そうとすればするほど症状は強まっていきます。

9.両面観:一見マイナスである事柄や性格にも見方を変えるとプラスの面があるということ。病気をして命のありがたさを実感するなど、苦楽は両面観でみると単純に幸/不幸を判断することはできません。

10.流動観:事物は動き、変化し、心も流動していくものである、いま苦しみの中にいても時の流れとともに人も心も社会もかわっていくもので、喜怒哀楽も流れに任せていくことが大切であると考えます。こだわりや"とらわれ"は苦しみを増大させます。

11.あるがまま:
*現実や解決不能な問題に対してのあるがまま 
*人間の意欲や向上心に対してのあるがまま 
*見落としがちな今の事実(身体が動ける・事故/犯罪に巻き込まれなかった等)を観るあるがまま
 あるがままの体得が"とらわれ”からの脱却と生きる姿勢に変化を生じ、その結果症状に改善がみられるようになり、人生に対する受容の心も生まれてくるようになります。

皮膚科医細谷先生の論文にはこの森田療法の概念を基本として、皮膚科の外来にて治療や指導に生かすすべが具体的に記載されています。習得には時間がかかりそうですが、これから勉強して出来る範囲で実践していきたいと思いました。

あるがまま、の概念で子育ても、自分自身のこれからも、過ごしていきたいものです。
桜咲く春の季節、まさに今、竹内まりやさんの"人生の扉”の歌詞が素敵で、満開の桜を観ながら口ずさみたくなります。

I say it's fun to be 20. 
You say it's great to be 30. 
And they say it's lovely to be 40. 
But I feel it's nice to be 50.
その後も fine to be 60 / alright to be 70 / still good to be 80 と続きます。

あるがままに、自分の年齢の変化を意識したいと思います。
確かにこれから訪れる50代はそう悪くないのかな、まあまあ nice なのでしょう、40代のようにlovelyとまではいかないまでも。そんなことを思いながら今年の桜を楽しみたいと思います!

 

 

乾燥肌・敏感肌のバリア機能改善を目指す

寒ーい冬から徐々に暖かくなってきましたが、乾燥に加えて花粉や紫外線などの影響も受けやすくなる3月です。
先日、女子大川島名誉教授もアトピー性皮膚炎の方の薬からの切り替え化粧品としてオススメしている"ラメラボ”の論文を読み、メーカーさんへご連絡し資料とサンプルをいただきました。特徴として、保湿成分である生体リン脂質と類似したリポソーム(RNA/タンパク複合体)に水溶性コラーゲンを巻き付けて吸着させてコラーゲンを角質に浸透させることが特徴です。水溶性コラーゲンはもともと角質への浸透が難しい素材ですが保湿力が高く、水分蒸散量も下げて角質の水分量増加をもたらし、表皮ターンオーバーを正常化します。また、コラーゲンの塗布により被膜が形成されてさらにバリア機能が補強されます。使用していくと、クレンジング/洗顔でつっぱらずにしっかり落とせて、水溶性コラーゲン美容液は使い始めは少しつっぱり感を感じますが徐々に皮膚内部が潤う感じになります。クリームはさっぱりとベトつかないけれど乾燥しにくい感じでした。
スキンケアもシンプルなので、余計なものを沢山塗ることが裏目に出てしまい肌荒れを悪化させることが防げます。
川島先生によると、アトピー性皮膚炎の顔皮膚症状に塗り薬を週1日、もしくは月数回外用のみでコントロールできるようになったら、保湿の薬から機能性の化粧品に切り替えるのが良いかと考えられます。

スギ花粉、マスク摩擦、PM2.5、日光など外的刺激から全てブロックことは難しいですが、自分自身の皮膚のバリアを高め、内側からしっかり潤い、キメの整ったもっちりした肌を保つために少し水溶性コラーゲンシリーズを続けていってみたいと思います。

 

もう一つ、新しい美白剤であるシステアミンクリームのWEB講演会をうかがいました。従来のハイドロキノンが合わない方やハイドロキノンで効果が薄かった方などに対象になります。

ステップ1. システアミン・アイソバイオニックアミド配合体がメラニン生成を抑制し、抗酸化作用を発揮します。AHA酸が配合されることによりシステアミンが皮膚に浸透しやすい酸性環境をつくります。そしてアイソバイオニックアミドとAHA酸の相互作用により角層の色素を還元し色を薄くします。(塗布後15分待ちますが赤くなる場合はすこし時間を短縮します)

ステップ2. 中和ステップです。ステップ1のアイソバイオニックアミドとAHA酸との反応を止めます。


ステップ3. アイソバイオニックアミド・レチノール・抗酸化物質の複合で成り立ち、ステップ1の炎症を抑えるのに加え、色素を含まない皮膚層の代謝を促し皮膚ツヤを改善させる。

使い始めはステップ1の赤みが出ることもあるようですが、徐々に慣れてくるようです。もう少し勉強していきたいと思います。

 

今月号の東京都医師会雑誌を見ていたら"仕事の報酬は仕事”という言葉を紹介している先生がいらっしゃいました(大橋誠先生)。「仕事の報酬はなに?」と聞かれたソニー創始者の井深大氏は、「仕事の報酬は、金でも地位でも名誉などでもない、いい仕事をすれば、引き続きいい仕事、面白い仕事、自分のやりたい仕事が回ってくる、それが何よりの報酬だ。」と答えたそうです。webで検索するとこの言葉がコーチングメッセージとして色々な記事が出てきます。大橋先生の記事にもありますが、普通に丁寧に仕事をしているとさらに良い仕事に出会えることは普通なのかもしれませんが、本当に大切なのは仕事に対する姿勢がワンランク上であること、つまり"誰かから求められてするでも、お金のために仕方なくするでもなく、仕事自体に喜びや自分なりの意義を見出している”こと、という内容にとても共感しました。
自分の仕事に誇りを持って、さらに良い仕事や出会いが巡ってくるように真面目に仕事をしていきたいと改めて感じました。

卒業や入学の春になり、新しい生活を始める方も多いと思います。あっという間に子供達の学年も上がり子供の成長の早さを感じます。

それと対照的に老いていく親たちのヘルプも増えてきました。先日実父の受診付き添いで大学病院の土曜日午後外来にいきました。とにかく沢山のヒトで予約時間も3時間待ってようやく検査、そのご1時間待ってようやく診察、その後に看護師さんの説明。終わるとすっかり暗くなってきました。先生も土曜日夕方の外来で大変お疲れの様子です、私も大学医局時代を考えると、予約数を超えた患者さんの待つ外来が朝から夜まで続くこともあり、トイレもいけない、ご飯も食べれない、昔はそんなことが当たり前の時代でした(今は医師も働き方改革で状況は変わっているのかもしれないですが‥)。ですからあまり先生も愛想も少なく、でも必要なことはお話する、そのような感じでした。過去の私ももしかしたらそうだったかもしれません、患者側の立場になってくると見えてくるものが色々あるもの、とすこし勉強になりました。

サザンガーデンクリニックもこの春は少し職員の入れ替わりがあります。新しい転居先や新しい職場で新生活が始まるスタッフを感謝で送り出し、同時に息子と同年代の新しい方々を迎えていきます。気持ち新たに私自身も人を管理する側としてより成長していきたいと思います。

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