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皮膚科と心身医学:森田療法について

今月の日本皮膚科学会会誌のテーマは一番興味のある"皮膚科の心身医学”です。まずはわかりやすい"外来でできる森田療法”について、細谷皮膚科の細谷律子先生の論文を読みました。

経過の長い皮膚疾患の方の中には皮膚症状だけでなく、痒みや摩擦に影響を受け難治化していることがあります。分かってはいても掻くことをやめられない、など"とらわれ”や"こだわり”から解放させる手助けとなる一つが心理的側面を配慮した治療です。
森田療法の創始者である森田正馬氏によると、"とらわれ”の背景には"こうでなければならない”・"そうであってはならない”という考えの癖の根底に"神経質性格”の存在があるとしましたが、この神経質さは多くの人が少なからず持っている性格傾向であるので、もともと神経症の治療として用いられた森田療法は、多少の不安や葛藤を抱えながら生きる方々ならば誰でも有効な治療法となります。

1919年に創案された森田療法(森田正馬氏)は従来の西洋医学的な心理療法と異なり、患者さんが抱える不安を取り除くこと目的とはせず、"全てはあるべきようにある、逆らわずありのままを受け入れる生き方が大切である”とします。
人生は流れる川のようであり、心は絶えず流動変動する。自分中心で組み立てられた考えで全てをコントロールしようとする生き方はやめて、ありのままを受け入れて、本来持っている向上発展の欲望に向かって行動していこうという考えです。
具体的には、

1.感情は操作不可能:自然と湧き上がる感情は操作不可能で、不安だけを取り除こうとしても取り除けないものですが、それでも感情は放置すれば山形をたどってついには消えていきます。つまり感情はその感覚に慣れるに従い鋭さを失って徐々に感じなくなっていきます。刺激か続くとき、注意を集中するときに感情は強くなります。

2."とらわれ”の悪循環:不安や恐怖などの感情に注意を集中すると、さらにそれらは強く感じられ、その結果さらに注意が集中してしまいます。 この"とらわれ”の感覚(正式には"精神交互作用”)は痒みや痛みの感覚・搔破や摩擦などの行動にもみられ、難治化した皮膚症状の患者さんにもみられます。

3.不安と欲望:不安はこうありたい、という欲望と表裏一体であり、欲望が強いほど不安も大きくなります。つまり失敗への不安の背景には上手くやりたいという欲望があり、不潔恐怖の裏には清潔・安全でいたいという欲望があります。

4.不安はそのままに:不安や感情はそのままにし、今やるべきことをやっていくことを指導する(行動本位)。"外相整えば内相自ら熟す”の理念のもと、行動することによって心理的変化が生じるという考えのもと、不安はそのままに、とりあえず日常の雑事などの目の前の事に手を付けるように指導します。その後にやがて他者や社会に役立つ行動も勧めていきます、なぜなら他利的に生きること、貢献感は充足感や幸福感を生みだすからであります。

5.行動本位と目的本位:不安はそのままにやるべき事を行う"行動本位”とともに"目的本位”に行動することを指導するようにします。例えば、人前で話すと赤くなるのが不安、という人には、赤くなっても伝えられれば良いので話そう、というように、不安になりながらも目的本位に行動することを指導します。

6.認知の歪み:自己の心身の自然な反応を取り除こうとすること、つまり自分の感情や身体の感覚などを知識や概念で思い通りに操作しようとする心のあり方は"とらわれ”や悪循環を強めます。真面目で目標設定が高い患者さんほど、理想と現実のギャップに葛藤して"こうあらなくてはくてはならない”と苦しんでいることが多く、特に思春期はこうありたいという理想欲が非常に高く、頭で作りあげた理想の自分と、現実の自分のギャップに苦しむことも多いと考えられます。統計でも、成人型アトピー性皮膚炎の方の93%が思春期以降に皮膚症状が広がったという報告もあります。

7.生きる力:不安と表裏一体である"生きる力”、よりよく生きたいという"生の欲望”を重んじ、それが"完全欲”や"理想の自己への縛られ”に空回りしないように、生きる力を現実の行動へと結びつけさせていきます。それが、その人らしく生きることを可能とし、ありのままの自分を受け入れていくことにつながります。

8."はからい”と"とらわれ”:不安や落ち込みを何とかしようとあれこれ考え行動することを"はからい”とよび、はからえばはからうほど不安や苦しみを強めて"とらわれ”の状態となる、すなわち症状を消そうとすればするほど症状は強まっていきます。

9.両面観:一見マイナスである事柄や性格にも見方を変えるとプラスの面があるということ。病気をして命のありがたさを実感するなど、苦楽は両面観でみると単純に幸/不幸を判断することはできません。

10.流動観:事物は動き、変化し、心も流動していくものである、いま苦しみの中にいても時の流れとともに人も心も社会もかわっていくもので、喜怒哀楽も流れに任せていくことが大切であると考えます。こだわりや"とらわれ"は苦しみを増大させます。

11.あるがまま:
*現実や解決不能な問題に対してのあるがまま 
*人間の意欲や向上心に対してのあるがまま 
*見落としがちな今の事実(身体が動ける・事故/犯罪に巻き込まれなかった等)を観るあるがまま
 あるがままの体得が"とらわれ”からの脱却と生きる姿勢に変化を生じ、その結果症状に改善がみられるようになり、人生に対する受容の心も生まれてくるようになります。

皮膚科医細谷先生の論文にはこの森田療法の概念を基本として、皮膚科の外来にて治療や指導に生かすすべが具体的に記載されています。習得には時間がかかりそうですが、これから勉強して出来る範囲で実践していきたいと思いました。

あるがまま、の概念で子育ても、自分自身のこれからも、過ごしていきたいものです。
桜咲く春の季節、まさに今、竹内まりやさんの"人生の扉”の歌詞が素敵で、満開の桜を観ながら口ずさみたくなります。

I say it's fun to be 20. 
You say it's great to be 30. 
And they say it's lovely to be 40. 
But I feel it's nice to be 50.
その後も fine to be 60 / alright to be 70 / still good to be 80 と続きます。

あるがままに、自分の年齢の変化を意識したいと思います。
確かにこれから訪れる50代はそう悪くないのかな、まあまあ nice なのでしょう、40代のようにlovelyとまではいかないまでも。そんなことを思いながら今年の桜を楽しみたいと思います!

 

 

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