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皮膚科の外来における森田療法について

前回に引き続き、毎月通ってきてくださる慢性疾患の患者さんに対し、心身医学的な皮膚科診療を実践していらっしゃる皮膚科医 細谷律子先生の、外来でできる森田療法について勉強しました。
少ない外来の時間の中で、患者さんに行動への動機付けを行ったり、考え方を転換させることは簡単なことではありませんが、まず一番大切なことは患者さんの心情に十分に"寄り添う”ことです。

* 慢性化・難治化した患者様には心理的な側面も考慮する必要があり、まずは真剣に耳を傾けて、患者さんの感じた私的な世界をまるで自分のものであるかのように感じ取り、それでもその怒りや恐怖に巻き込まれない態度で接するように心がけます(共感的理解)。

* 習慣化した行動に対する指導や治療 
1.気が付かせる
患者さんは自分の搔破(掻く)習慣に気が付かないことも多いので、まずはノートに書くなどセルフモニタリングを行うように指導し無意識に行われている行動に気が付かせること、気が付くだけで皮膚症状が良くなる方もいますが、いつのまにか掻いていないと不安という依存状態になり、掻くことを意識すればするほど掻いてしまうこともあるようです。

2.行動変換の指導
無意識に動いてしまう手に対して、"気が付いたら手や腕を組む” などの反射的な練習を指導したり、深呼吸して緊張を解く・健康的な代替えの行動を時間を決めて行う、など習慣化した行動の変換を試みます。

3.悪循環が背景にあることを気付かせる
かゆみに対して意識が高まるほどかゆみを敏感に感じ取ったり、掻くのをやめなければと意識するほど掻いてしまう、という悪循環に気が付かせること、患者さんが没頭して掻き続ける時は、"なんとなく触っているうちに痒くなり止まらなくなる” "はじめは痒くて掻くが,かゆみがとまっても掻くのを止められない”など、 itch scratch cycle (搔破の悪循環)が生じ、クセ的搔破や触りグセが加わり悪化していくことが多いのです。

4.不安のすり替えに気付かせる
仕事や受験・学校の不安から免れようとして掻いたり叩いたりすることがありますが、それらの行動はいくら行っても不安の解決にはならず、掻くことを止められなくなってしまうこともあります。そして搔破が進むと皮膚症状は重症・難治化していきます。いつの間にか不安の原因が現実の不安から皮膚症状へとすり替わり、皮膚さえ良ければ何でも出来る、と思ってしまうこともあります。

5.不安は"そのままに”行動するよう指導
感情は意志で変えられないので、操作不可能な不安は"そのままに”行動するように指導します。不安やイライラでとっさに皮膚に手がいってしまう場合は、とりあえず目の前の机を拭いたり、目の前の家事に取り組むなど、身体を動かすことを指導します。
何かあったらとりあえず掃除、などと自分の得意な動きを身につけておくことが得策です。心配や不安の気持ちや体力を取りあえず行動に向けさせます。
無心に行動する中、解決策が浮かぶこともあり、またそうした生活習慣が徐々にイヤな気分を "持ちながら” 物事に取り組む姿勢を身につけさせていきます。
その際、ポイントとなる言葉として、"まあいいか”・"変えられないものは変えようとしない”・"取りあえず”やってみる などが挙げられます。これらの言葉を心で唱えながら実行するのもオススメです。

6."とらわれ”や悪循環からの解放
完璧や理想の自己像にとらわれず、今できる一歩を積み重ねていくよう指導します。自分の"足りない”部分を嘆くのでなく、"持っている”部分を生かすこと、すなわち理想自己をけずり現実自己を膨らましていきます。

7.あるがままの体得
不安はそのままにやるべき事を行う"あるがまま”の体得により行動本位の生活を実戦するうちに自己肯定感が生まれ、肯定的に解釈する習慣がつき、自分の過去のネガティブな経験も意味あるものと肯定的に捉えられるようになります。
いつのまにか、自分の気分や皮膚症状に執着した自己中心的な意識は外に広がり、かゆみや搔破行動のとらわれから解放されていきます。

最後に細谷先生はこう書かれていらっしゃいます。

治療は、医師と患者の人間関係で行う場であるので、医師側の治療的自己の重要性が言われています。
森田療法を実践する治療者が、いかに"あるがままに”生きているか、が大切です。治療者自身がどうあるか、が大事なのでしょう。

私自身も必要なときに少しだけでも森田療法を実践していけるように、まずは"治療的自己”を顧み、"とらわれ”から脱却しあるがままの実践を心がけたいと思います。


本日はサンファーマさんのルコナック液発売6周年講演会があり、鳥取大学の山元修先生・さとう皮膚科の佐藤俊次先生・順天堂大学の小川祐美先生のご講演を聞きました。

・ルリコナゾールは、3層構造の厚い糸状菌(水虫菌)の細胞膜のみでなく細胞壁も傷害して薬液の浸透を高めること。
・爪の患部のみに塗るのではなく、正常部位に広がらないように、まずは周りの正常部位の爪に塗ってから患部に塗るようにすること。
・可能な範囲でニッパなどで、爪甲削除やデブリを行いマーカー型のルコナック液を塗り続けることにより、塗り薬だけでも完治できること。
・臨床的に治ったと思われても再発防止のためには、臨床的治癒から4ヶ月は外用を続けること、初診から数えて約2年程度は続けることが重要であること。臨床的なイメージでは重度の爪白癬だった場合は爪の濁りが消えて透明になるまで続けることが大切であること。

などを改めて認識し、なかなか少ない爪白癬の講演会を聴けて有意義な時間でした。特に最後の小川祐美先生は順天堂の医局の数年後輩にあたりますが、以前から理知的で明るく真面目な先生でしたが子育てもしながらこうしてご講演もされていらっしゃる姿に深く畏敬の念を抱きました。


まだしばらくはコロナはゼロにならないかと考えられますが、ほとんどの方が軽症~中等症となる中、1.6%の方が重症化しています。最近コロナの重症化と"腸内細菌”との関連を報告する研究が報告もされていますが、東京都医師会雑誌に山梨県の窪田良彦先生が"腸内細菌バランス”の重要性を書かれていらっしゃいました。
腸内細菌は *食べ物の消化 *ビタミン産生 *腸のエネルギー産生 *有害物質の解毒 *病原菌が増えるのを抑制 *免疫の刺激 などの働きを担います。
3歳くらいで成人に似た腸内細菌叢に近づき、この時期が最も理想的な腸内環境と言われているそうです。その後は加齢に伴い生活環境や食生活に影響を受け、乳児期のビフィズス菌(善玉菌)は老年期には100分の1に激減していきます。
この、加齢に伴う腸内細菌のバランス変化は、大腸ガンや炎症性腸疾患・さらには肥満や糖尿病・動脈硬化やアレルギー疾患にも関与します。

健康な人の腸内では、善玉菌:悪玉菌:日和見菌=2:1:7 の割合で腸内環境が維持されていますが、このバランスが崩れると免疫力低下による健康被害が起こってきます。このコロナ禍で自分自身の免疫機能を高めていくこと=腸内環境を整えていくことがとても大切です。

運動やストレス軽減、食生活をすこし気をつけて腸内環境を少しでも上手にコントロールしていきたいと思います。
我が家でも成長期の娘たちは少しずつ体型を気にして野菜中心に自分で気をつけたり、筋トレにはまる長男はタンパク質+野菜中心に自分で適当にやっています。今はコンビニも健康的で野菜や食物繊維・タンパク質豊富なものがたくさん売っていますので、忙しい時は無理せず大いに活用しています。本当に便利な世の中に感謝です‥。



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