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2022年5月

汗の重要性と、多汗について

腋窩の多汗症外用薬、"エクロックゲル”や"ラピフォートワイプ”が処方出来るようになってから、汗についての講演会や論文に触れる機会が多くなりました。先日、無汗症加療でご著名な埼玉医大神経内科の中里先生の講演を面白くうかがいました。

ヒトの汗管は生後2歳までに能動化するといわれていて、乳幼児期をどこで暮らしたか、が大きく関わっていると考えられています。例えば同じ人種でも2歳までロシアなど寒い地域に暮らした場合と、熱帯で多量の汗をかいて暮らした場合では、大人になってからの汗のかきやすさが異なります。日本人で日本でずっと暮らした場合は、寒い地域と暑い地域の方のちょうど中間ぐらいの発汗量といわれています。

また発汗には精神的発汗と温熱発汗があり、手足の汗は精神的発汗、手足以外は温熱発汗と考えられます。
発汗量は、"汗管密度”×"発汗能” で決まります。密度は加齢により変わりませんが、発汗能は年齢と共に低下していくので、若者の方が汗の量が多いのです。能動汗腺の密度が高い部位は、額、手のひら、足の裏で他の部位より発汗量が多くなります。

最近6,7月の真夏になる前に熱中症を発症する方がいるのは、暑さに慣れていないことが原因と考えられています。暑くなる前から少しずつ汗をかく刺激を与え、汗をかき続け、身体を暑さに慣れさせること、つまり"暑熱順化”の重要性が認識されてきています。

1日数時間の汗をかく刺激で7~10日で発汗が増え、順化してくるといわれていますが、そんなにハードに汗をかかなくても、やや暑い環境でややキツい運動や歩行を2週間程度行うことで暑熱順化してくるといわれています。特に汗をかきにくい低血圧の女性や、加齢にともない汗をかきにくくなっている中年以降の私たちは、真夏の前の今のうちから少し暑い環境化での汗かく運動や入浴などを行い、暑熱順化し、熱中症を予防していくことがすすめられます。
いつも音楽の楽しみと体力維持のために行っている"Feel cycle”で私自身もすでに知らずに暑熱順化できているのかもしれません。(週2日、45分間、暑い中で汗びっしょり、気分もスッキリ)

そんな大切な汗ですが、皮膚に残ってしまうと汗で増えるマラセチア(皮膚に常在している真菌)が痒みや皮膚炎症を悪化させたり、汗の中のグルコース濃度が増えるとアトピー性皮膚炎の炎症が悪化したり、また腋窩や身体の汗が多すぎると洋服にできる汗ジミで人目が気になる、制汗剤にお金がかかる、自分に自信が持てないなど、不都合な点もみられます。

汗をかいたらなるべくシャワーで流す、濡れたもので拭き取る、腋窩の多汗には"エクロックゲル”や"ラピフォートワイプ”で治療する、などきちんと対策を行いしっかり汗をかくことがすすめられます。これらの薬は大きな副反応もなく、他の部位がより汗をかきやすくなってしまう"代償性発汗”もないため、お子さんや思春期の方でも使いやすい薬剤です。エクロックゲルは12歳~、ラピフォートワイプは9歳~使用できます。
汗は夜間作られることから夜外用といわれてきましたが、朝でも夜でも有効性に差が無いことがわかったため朝起床後にぬる、でも大丈夫です。腋窩多汗は病気と考えられず諦めてしまっていた方にも本当にオススメです。

最近急に暑くなり、これからの時期早めに汗と上手に付き合っていくことが大切です。何より真夏になってから急に熱中症にならないために今のうちから汗をしっかりかいて暑熱順化することがおすすめです。若い時と違い、トシとともにまあまあキツメの運動や長めの入浴でもしないと汗をかく機会も少なくなりますので意識しないとなかなか汗もかけません。
ただ皮膚に残る汗は時間と共にメリットは損なわれ、デメリットの方が増えるのでしっかりとマメに流す、拭き取ることを忘れずに意識して汗をかき続けていきたいと思います。

 

6月1日からはアトピー性皮膚炎の新たな塗り薬・モイゼルト軟膏がようやく処方出来るようになります。

PDE4(ホスホジエステラーゼ4)はアトピー性皮膚炎の炎症細胞で増えている酵素で炎症を抑制するシグナルを分解し炎症を悪化させてしまいます。モイゼルト軟膏はこのPDE4を阻害する軟膏で、炎症を抑制するシグナルを上昇させ、アトピー性皮膚炎の炎症と痒みを改善します。
15歳以上は1%の緑のチューブ、2歳以上は0.3%の黄色のチューブが適応になります。塗ったときのホテリ感もなく、大きめ10gチューブで塗りやすく、効果が期待できます。コレクチム軟膏、モイゼルト軟膏と、非ステロイドの外用薬が増え患者さんの選択肢が増えることは素敵なことです。また今後も情報を集めていきたいと思います。


コロナ以前のようにはいきませんが、徐々に少人数の食事が出来るようになったり、久しぶりの同窓会などの話なども出てくるようになりました。この2年間本当に思うように会えなかった仲間や友人達と久しぶりに会えたり出来るようになるといいな~と願うばかりです。

 

かゆみの病態について

今年の連休は、コロナ関連のレセプトが大変で医療事務の方々の残業が続いたため1日休診にさせていただき、5連休とさせていただきました。あっという間の連休でしたが、義父のお墓参りや実父母の受診付き添い・娘達と買い物など、普段出来ないことも少し出来て良いお休みでした。旅行や帰省も少しずつ増えて、昨年よりは気持ちも明るい5月となりそうです。

今月号の日本皮膚科学会会誌の特集が"かゆみの病態”でしたので、森田療法を実践していくためにも患者様に"痒みのメカニズム”を簡単に説明するのも重要と考え、改めて勉強しました。まずは端本宇志先生(防衛医大)の論文です。

皮膚で生じた痒みイベント ⇒ 皮膚に存在する痒み選択的末梢神経(無髄C線維・有髄Aδ線維)を刺激 ⇒ 
脊髄内部の興奮性介在ニューロンと抑制性介在ニューロンで処理される(興奮性:痒みを伝達/抑制性:痒みを抑制)⇒
脊髄内の神経回路で処理された痒み刺激シグナルは"脊髄視床路”や"脊髄傍腕核路”を経由し、脳へ伝達され処理される

この中でまず、抑制性介在ニューロンは掻破・寒冷刺激・疼痛刺激で活性化されることが分かっていて、臨床的にも掻いたりクーリングしたりつねったりすると痒みが和らぐのは、この抑制性介在ニューロンが活性化して痒み刺激を抑制するから、と考えられます。
また、ある抑制性介在ニューロンはノルアドレナリン神経系にもコントロールされていて、交感神経優位(ノルアドレナリン優位)の昼間では痒みを感じにくいですが、副交感神経優位の夜間では痒みを感じやすくなります。

次に、脳と痒みとの関連ですが、
引っ掻く ⇒ 
脳の不快感を司る領域(前帯状皮質・島皮質)が抑制される+快楽を司る領域(線条体・中脳)が活性化される ⇒
痒いところを引っ掻くと、快感を覚える。
慢性的な痒みが続くと、これらの痒み関連の領域の機能や構造が変化し、痒み過敏/痒みの固定化が生じると考えられます。
また、アトピー性皮膚炎などの慢性的な痒みで引っ掻くことが癖になってしまうのは、脳のこれらの領域の関与が要因と考えられます。

痒みは *皮膚 *末梢神経 *脊髄 *脳 のステップが関与していて、"皮膚”に痒みの引き金が無くても、末梢神経や脳に異常や変化が生じれば痒みが出る可能性があります。このように皮膚に痒みの原因となる病変がみられない場合は"皮膚掻痒症”と呼ぶこともあります。

慢性的な痒みにおいて生じる、"痒み過敏”には"ハイパーネーシス”と"アロネーシス”があります。
"ハイパーネーシス”は痒み過敏に対して過剰に痒みを感じてしまう状態、"アロネーシス”は通常では痒みと感じない刺激に対しても痒いと感じてしまう状態です。
この2つの"痒み過敏”は、皮膚・末梢神経・脊髄・脳の全てのレベルにおいて痒みを感じる神経の感受性が高まることが原因であると考えられています。 
皮膚:炎症・神経の変化・加齢によるメルケル細胞の減少
末梢神経:痒み関連物質・受容体発現の変化
脊髄:痒み抑制介在ニューロンの機能障害・痒みを抑制するノルアドレナリン神経系の機能障害
脳:痒みに関連する領域の機能変化

次に、皮膚の痒みイベントにより刺激された痒み選択的末梢神経には、ヒスタミン(古典的な起痒物質)に反応する神経と、ヒスタミンに反応しない神経があります。
急性蕁麻疹のような急性の痒みではヒスタミンが病態の主役となるため、抗ヒスタミン剤は著効しますが、慢性の痒みであるアトピー性皮膚炎や結節性痒疹などでは抗ヒスタミン剤のみで痒みをコントロールできることは少なくなります。つまり、急性の痒みではヒスタミン依存性かゆみが主ですが、慢性の痒みではヒスタミン非依存性痒みが優勢となります。

最近ではこのヒスタミン非依存性痒みの一つであるTh2サイトカインの起痒物質をターゲットとした薬剤の開発がすすみ実用化されています。

デュピルマブ(デュピクセント)は、IL4,IL13を抑制する薬剤ですが、IL4,IL13は、痒み神経の閾値を下げてしまい”痒み過敏”を生じるとともにそのものが起痒物質としてアトピー性皮膚炎の痒みに関与しています。
IL31もTh2サイトカインでアトピー性皮膚炎や結節性痒疹や疥癬などの痒みを伴う皮膚疾患の皮膚病変部で発現していて、神経を直接刺激し痒みを生じることが分かっています。
ミチーガ(ネモリズマブ)はIL31を抑制する薬剤ですが、アトピー性皮膚炎や結節性痒疹の痒みに著効するといわれています。
このIL31はTh2細胞から産生されるサイトカインと考えられていましたが最近の研究では、全身の組織に存在するマクロファージ(貪食細胞)もこのIL31を産生し痒みに深く関与していることが分かりました。

従来のステロイド外用や抗ヒスタミン剤の内服だけではなく、痒みを担当する物質をターゲットとした薬剤の開発が今後も進むことが予想されます。痒み、奥が深く、まだまだです。皮膚の疾患と"痒み"は切っても切れない関係ですので今後も新しい情報を学んでいきたいと思います。

 

最近娘の一人は思春期のためか、22歳の兄に対して厳しい。実家にて自分の事をしない兄に対して、"自宅育ちで何も片付けない彼”を持つ女子の嘆きのツイートを送りつけて、あんたと同じ!何もしない!自分のことは自分でしろ!女にもてない!と口うるさく私の代わりに注意してくれます。ママがやっちゃうからダメなんだよ!!と私に対してもトバッチリが‥将来口うるさい女子になること間違いなしです。

思春期の娘たちを観ていると最近本当に面白いです。お化粧や美容、ファッションに興味津々。異性に対しても理想像が出来てくる頃なのでしょうけれど、いずれ将来そんな理想像は打ち砕かれて、所詮みな"兄”と同じ、ということが分かってくるのでしょう‥
この情報過多の時代にどんな思いでどんな将来を思い描くのか、とても“お利口さんで理想的な娘たち”ではないけれど、どんな女性に育っていくのか親としても今後が面白く楽しみです。そんな子供達とぶつかり合いながらも一緒に過ごす賑やかな毎日は、後から考えると貴重な日々なのだと思います。余裕があれば楽しみたいものです…





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