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汗の重要性と、多汗について

腋窩の多汗症外用薬、"エクロックゲル”や"ラピフォートワイプ”が処方出来るようになってから、汗についての講演会や論文に触れる機会が多くなりました。先日、無汗症加療でご著名な埼玉医大神経内科の中里先生の講演を面白くうかがいました。

ヒトの汗管は生後2歳までに能動化するといわれていて、乳幼児期をどこで暮らしたか、が大きく関わっていると考えられています。例えば同じ人種でも2歳までロシアなど寒い地域に暮らした場合と、熱帯で多量の汗をかいて暮らした場合では、大人になってからの汗のかきやすさが異なります。日本人で日本でずっと暮らした場合は、寒い地域と暑い地域の方のちょうど中間ぐらいの発汗量といわれています。

また発汗には精神的発汗と温熱発汗があり、手足の汗は精神的発汗、手足以外は温熱発汗と考えられます。
発汗量は、"汗管密度”×"発汗能” で決まります。密度は加齢により変わりませんが、発汗能は年齢と共に低下していくので、若者の方が汗の量が多いのです。能動汗腺の密度が高い部位は、額、手のひら、足の裏で他の部位より発汗量が多くなります。

最近6,7月の真夏になる前に熱中症を発症する方がいるのは、暑さに慣れていないことが原因と考えられています。暑くなる前から少しずつ汗をかく刺激を与え、汗をかき続け、身体を暑さに慣れさせること、つまり"暑熱順化”の重要性が認識されてきています。

1日数時間の汗をかく刺激で7~10日で発汗が増え、順化してくるといわれていますが、そんなにハードに汗をかかなくても、やや暑い環境でややキツい運動や歩行を2週間程度行うことで暑熱順化してくるといわれています。特に汗をかきにくい低血圧の女性や、加齢にともない汗をかきにくくなっている中年以降の私たちは、真夏の前の今のうちから少し暑い環境化での汗かく運動や入浴などを行い、暑熱順化し、熱中症を予防していくことがすすめられます。
いつも音楽の楽しみと体力維持のために行っている"Feel cycle”で私自身もすでに知らずに暑熱順化できているのかもしれません。(週2日、45分間、暑い中で汗びっしょり、気分もスッキリ)

そんな大切な汗ですが、皮膚に残ってしまうと汗で増えるマラセチア(皮膚に常在している真菌)が痒みや皮膚炎症を悪化させたり、汗の中のグルコース濃度が増えるとアトピー性皮膚炎の炎症が悪化したり、また腋窩や身体の汗が多すぎると洋服にできる汗ジミで人目が気になる、制汗剤にお金がかかる、自分に自信が持てないなど、不都合な点もみられます。

汗をかいたらなるべくシャワーで流す、濡れたもので拭き取る、腋窩の多汗には"エクロックゲル”や"ラピフォートワイプ”で治療する、などきちんと対策を行いしっかり汗をかくことがすすめられます。これらの薬は大きな副反応もなく、他の部位がより汗をかきやすくなってしまう"代償性発汗”もないため、お子さんや思春期の方でも使いやすい薬剤です。エクロックゲルは12歳~、ラピフォートワイプは9歳~使用できます。
汗は夜間作られることから夜外用といわれてきましたが、朝でも夜でも有効性に差が無いことがわかったため朝起床後にぬる、でも大丈夫です。腋窩多汗は病気と考えられず諦めてしまっていた方にも本当にオススメです。

最近急に暑くなり、これからの時期早めに汗と上手に付き合っていくことが大切です。何より真夏になってから急に熱中症にならないために今のうちから汗をしっかりかいて暑熱順化することがおすすめです。若い時と違い、トシとともにまあまあキツメの運動や長めの入浴でもしないと汗をかく機会も少なくなりますので意識しないとなかなか汗もかけません。
ただ皮膚に残る汗は時間と共にメリットは損なわれ、デメリットの方が増えるのでしっかりとマメに流す、拭き取ることを忘れずに意識して汗をかき続けていきたいと思います。

 

6月1日からはアトピー性皮膚炎の新たな塗り薬・モイゼルト軟膏がようやく処方出来るようになります。

PDE4(ホスホジエステラーゼ4)はアトピー性皮膚炎の炎症細胞で増えている酵素で炎症を抑制するシグナルを分解し炎症を悪化させてしまいます。モイゼルト軟膏はこのPDE4を阻害する軟膏で、炎症を抑制するシグナルを上昇させ、アトピー性皮膚炎の炎症と痒みを改善します。
15歳以上は1%の緑のチューブ、2歳以上は0.3%の黄色のチューブが適応になります。塗ったときのホテリ感もなく、大きめ10gチューブで塗りやすく、効果が期待できます。コレクチム軟膏、モイゼルト軟膏と、非ステロイドの外用薬が増え患者さんの選択肢が増えることは素敵なことです。また今後も情報を集めていきたいと思います。


コロナ以前のようにはいきませんが、徐々に少人数の食事が出来るようになったり、久しぶりの同窓会などの話なども出てくるようになりました。この2年間本当に思うように会えなかった仲間や友人達と久しぶりに会えたり出来るようになるといいな~と願うばかりです。

 

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