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2023年1月

今年のスギ花粉症について

今年はアレルギー症状が早く出ている方が多くいらっしゃいます。昨年秋の気温が高かったため、季節外れのスギ開花現象が生じて”狂い咲き”がみられ11月から飛散していたようです。11月中旬から下旬にピークとなりその後12月に減少してまた2月から増加し始めます。本格的な飛散予測は関東で2月中旬ですが、今年は、例年の平均の2倍以上との予測もされています。今年の花粉症について五反田の遠藤耳鼻科 遠藤先生のご講演を聞きました。

本来スギ花粉などの花粉の80%以上は鼻に吸引されたあとに鼻の外に排出されますが、鼻粘膜に残った花粉がある一定の濃度(閾値)を超えるとアレルギー症状を起こします。スギの花粉より粒が小さなヒノキやさらに小さなブタクサ花粉などは、小さな分より奥に入りやすく喉の痛みや咳などにも症状が出るそうです。
遠藤先生の観測ですと、東京の雪が多い年はスギ花粉の飛散が少なくなる傾向のようで、今年は今のところあまり東京には積雪していないため、予想通り飛散量が増えると思われます。

1998年からスギ花粉症の"初期療法”が遠藤先生らによって提案され、初期からしっかり加療しそのシーズンのスギアレルギー症状をうまくコントロールする、ということが実証されています。ですから、抗アレルギー剤の中でも、有効血中濃度に短時間で到達し効果が長く持続する内服が望ましいと思われます。最近の抗アレルギー剤では眠くならずに効きが早く良いものがありますので初期治療として適しています。

コロナ禍になってからは、飛沫のエアロゾルの映像動画を見ることがありますが、アレルギー鼻炎症状による"くしゃみ”によるエアロゾルが多いことが報告されています。感染症予防のためにも、くしゃみをきちんと抑えることはこの時期重要です。

また、従来の治療に加えて有効な生物学的製剤として、ゾレア注射剤が挙げられます。これは、アレルギーを司るヒトIgE抗体製剤の皮下注射剤で、IgEと受容体の結合を阻害することにより、アレルギーが起こらないように根本を抑える薬剤で12歳以上でIgE値が高値である季節性アレルギー性鼻炎の方に使用できます。
重症な季節性アレルギー鼻炎のみでなく、もともと慢性蕁麻疹や気管支喘息にも適応があり、とてもよく効く薬です。鼻炎のみでなく、目の痒みに対しても効果があるため、目を掻かない、鼻をかまない生活により、皮膚も荒れない、メイクも落ちない、鼻ずまりがなく睡眠がしっかり取れる、とかなりQOLが上がります。IgEの活動を抑えるため、花粉が入っても反応しなくなります。

良い点  
*早ければ注射2日目から効き、効果が約1か月持続すること *月1回の注射治療で投与回数が少ないこと *眠くならない治療であること

悪い点
*保険適応であるが薬剤費が高額であること(平均的に使用する150㎎シリンジ1~2本で3割負担で 8744円~17488円)  
*注射量(1本か2本か)が血中IgE値と体重により決まるため、事前に採血と薬剤の発注が必要であり、即日に治療がスタート出来ないこと
*皮下注射になるため、2本注射の場合12歳や中学生が2本打たれることに抵抗感が出やすいこと

実際投与した方はとても満足されますので、費用対効果はあるかと思います。

条件としてまとめると、*12歳以上 *スギRAST採血が3以上 *昨年の前シーズンも重症な花粉症状があったこと *少なくても1週間以上抗アレルギー剤などの既存の加療を行ったが効果不十分であること *シダキュア(舌下免疫療法)の治療に関する説明も受けていること

となります。今年の花粉は近年の中では飛散量が特別多いので、難治性の場合や受験生などには "ゾレア注射”も選択肢の一つになると思います。
私自身と子供たちは今のところ花粉症ではないですが、唯一花粉症の院長(シダキュアはいつも挫折……)が今年はゾレア、トライしようかと考えているようです。飛散の多い今年の花粉症には良いかもしれません。

また、皮膚においても、アトピー性皮膚炎の方の30%がスギ花粉が皮膚症状の増悪因子としてあげられ、蕁麻疹様の紅斑や全身の多彩な赤み、丘疹が報告されています。アトピー性皮膚炎以外の方でも、皮膚のバリアが下がりがちな目の周りの紅斑(+目の痒みからの掻爬によりさらに赤くなる)が見られます。早めに外用薬(ステロイドや非ステロイドも)を塗って、痒みや固く盛り上がる苔癬化を防ぐことが大切です。

 


年が明けて担当していただいた各社MRさんが担当交代となったり、新たな時期の代わり目です。開業していると気軽に他の先生方と情報交換ができず、新しい情報をくださるMRさんは有難い存在です。仲良くなったと思うと移動や転勤があり寂しい限りです。
私自身は歳を重ね、子供も大きくなると生活もあまり変化しなくなり、波風が立たない生活です。親のヘルプに行く回数も増えて親には申し訳ないですがどうしても気持ちが暗くなりやすい毎日も、家で全く逆のエネルギー溢れる馬鹿な娘たちの会話を聞いていると可笑しくて気持ちは明るくなります。それで気持ちのバランスもとれている気がします。メイク練習に励み美容に興味津々のお馬鹿な娘達でかえってよかったとさえ思えてきます…
また、日々の外来で未来明るい子供たちやお元気な患者様に接していると気持ちが落ち着きます。仕事ができている今の自分の幸せを感じながら、健康のありがたみを感じながら、1年1年歳を重ねて50代を過ごしていきたいと思います。
そして何事も熱意を持った一年にしていきたいと思います。体力維持のために楽しんでいる暗闇中でのバイクエクササイズのインストラクターさんも様々な方がいらっしゃり、中でも人気なのが、やはりレッスンをより良く一生懸命行ってくれる、"熱い”かつ"センス”のあるイントラさんです。一生懸命さ、ヒトの誠実な"熱意”とは必ず伝わるものだと、とても勉強になります。
それにしても歳とともに何事にも"体力”は重要ですので運動も続けていきたいと思います。

 

 

帯状疱疹の増加と帯状疱疹ワクチンについて

年が明けてもコロナの蔓延は変わらずですが、コロナ禍で発症が増えている疾患の一つが帯状疱疹です。確かに昨年一年間も帯状疱疹の患者様が年齢関係なく以前より多かった気がします。この休み中にコロナと帯状疱疹の増加についての講演(山梨大学皮膚科川村教授)記録集を読みました。

帯状疱疹は、水痘・帯状疱疹ウイルスに特異的な細胞性免疫が年齢とともに低下することにより発症リスクが上がると考えられています。帯状疱疹を発症させないためには、水痘・帯状疱疹ウイルス特異的メモリーT細胞を十分維持することが大切なのですが、生活の中でこの水痘ウイルスに曝露されるとこれらの免疫が再活性化されてメモリーT細胞などが増殖する、いわゆる “ブースター効果” が得られます。
すなわち、水痘患者さんから水痘・帯状疱疹ウイルスの曝露を受けて人にはブースター効果がもたらされ、帯状疱疹の発症が抑制されますが、このブースター効果を受ける機会が減り帯状疱疹が増えていると考えられています。
具体的には2014年から水痘ワクチンが定期接種化され、水痘発症の子供が減り、さらに少子化により子供や孫など水痘患者からのブースター効果を受ける機会が減りました。さらにコロナ禍で人と人の接触が減り、感染対策により水痘発症の患者さんが激減していることもあり、帯状疱疹の発症が高まっていると考えられています。
また、コロナワクチン後の帯状疱疹の発症も増えています。ワクチン接種後平均6日で発症することが多く、接種による発熱・炎症・ストレスなど特に若い方ほど免疫力が高いことにより、帯状疱疹の発症引き金となっていると推測されています。

アトピー性皮膚炎にも適応となったJAK阻害剤の内服も帯状疱疹の発症増加に影響を及ぼしている可能性も指摘されています。

どちらにせよ、ある一定の年齢に達したら帯状疱疹の発症の可能性は以前より増えていますが、現在50歳以上の方に帯状疱疹のワクチンが推奨されています。2種類あり、従来からの水痘生ワクチンとサブユニットワクチン(シングリックス)です。

水痘ワクチンは 皮下注・1回のみ・予防効果50%・低価格(6000円くらい)・効果持続が約5年

シングリックスは 筋注・2回必要・予防効果90%・免疫抑制者にも接種可能・発熱などの副反応60%・高価格(2回で45000円くらい)・効果持続が約10年

などの違いがあり、免疫状態やご本人の希望を考慮した使い分けが求められます。私自身も50過ぎたので接種を考えています。

 

この3年のコロナ感染後の皮膚への影響の報告として驚いたことは、コロナワクチン接種後の皮膚充填剤(ヒアルロン酸注入など)の注入部位の局所的な腫れと浮腫性紅斑です。ワクチン接種により免疫的な誘因が生じ、遅延型過敏症反応でヒアルロン酸注入部位が腫れると考えられます。ヒアルロン酸ベースの皮膚充填剤は2~5年顔面構造内にとどまるため、遅延型炎症反応が生じると推測されます。
口唇や顎、顔面全体が腫れ1~2日間くらいで自然消退することが多く、必ず治ります。アメリカのガイダンスでは、注入とワクチン接種の間に4~8週(1~2か月)空けるのがよいと提案されていますが、これから報告の集積が待たれるところです。どちらにしろ完全に回復する遅延型反応なので、ヒアルロン酸など充填剤を使用したからといってワクチン接種を見合わせないこと、または接種したからといってヒアルロン酸注入を止めることがないように、というのが現在のところの認識のようです。知っていないと蜂窩織炎や血管性浮腫と判断を誤ることがあるので問診も大切だと感じました。

コロナとの付き合いは残念ながら長く続く可能性があるのでいろいろコロナ関連の皮膚科疾患の情報も今後引き続き収集していきたいと思います。


年末年始はクリニックで少し仕事をしたり、ヨガやフィールサイクルしたり、親族で集まったり、それなりにゆっくりと過ごせた1週間でした。毎年お正月に合う従妹たち家族との新年会では今年の抱負を子供も一人ずつ話しますが、年賀状のように一年に一回だけの再会のこの会ですが成長していくお互いの子供たちにも会え、親たちも普段聞けない我が子の抱負を聞くこともできて貴重な一日です。

今年も変わらず、運動・睡眠・食事バランス・親のヘルプ を大切に昨年と同じように過ごしていきたいと思います。

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