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2023年6月

フットケアの重要性について

通常の保険診療をしていると、足についての相談・治療が案外多いことに気付きます。足にトラブルがあると歩行がスムーズでなくなり、特にご高齢者では"サルコペニア”(歳とともに筋肉が減少していくこと)の原因にもなります。
私自身も、今のところは痛みなくスムーズに歩行できることの大切さを実感しながら、なるべく歩くようにしています。
今月号の美容皮膚科雑誌"ベラペレ”は"フットケア特集”でしたが、各方面の専門家の方々のお話を読み、足のケアの重要性を再確認いたしました。

*外反母趾について(下北沢病院 菊池恭太先生・高田研先生)

足の親指の根元から指先までを”第一列”といい、荷重を支える意味でも、足のアーチの一部としても構造的な安定性おいても重要な部位ですが、外反母趾ではこの"第一列”が途中で曲がり、破綻するため、親指の荷重支持機能が低下し、代わりに第2・3列(第2・3指)への荷重が増加します。転倒リスクも増加しやすくなり、軽症であっても脚の不安定性を訴える方が多いようです。

外反母趾の原因としては内的要因として、遺伝、性別(女性が多い)、年齢、個別の解剖学的要因(扁平足・親指が長い・第一列の可動性が大きすぎる)などが挙げられ、外的要因として、長時間の圧迫(ハイヒール、先細りの靴)が挙げられますが、ヒールでなくても足底アーチへの負担が大きいバレエシューズなどの"ペタンコ靴”もより症状を悪化させることもあるようです。

靴としては横幅のせまい靴は避け、ヒールは1~1.5cmが理想、靴の中で足が前後にずれないように靴ひもやストラップなどで調節できるものが理想です。
また"Hoffmann体操”のような、左右踵をつけた状態で両親指をゴムにかけ、親指を外転させる運動は軽症例では有効であることと、アキレス腱のストレッチも重要だそうです。アキレス腱が硬くなることで歩行時の足底アーチが低下させ、外反母趾が悪化するそうなので、アキレス腱を柔らかく保つことが大切なようです。


*足底の角質増殖について(順天堂 小川尊資先生・須賀康先生)

①胼胝・鶏眼
外的な荷重や圧が常にかかってできる胼胝(たこ)、繰り返し1点に荷重がかかりできる鶏眼(ウオノメ)は削り処置やスピル膏貼布により角化部位を除去して圧迫を解除します。

②VSLDN(verrucous skin lesion on the feet in diabetic neuropathy)
糖尿病神経障害を持つ方の足底が乳頭状に角化・増殖し出血や潰瘍ができる状態で、糖尿病歴が長くコントロール不良の方に多くみられます。患部から二次感染を生じると感染が重症化することもあるため、慎重な処置が必要であるのと、インソールなどで荷重を除去することも必要になります。

③遺伝性の掌蹠角化症
点状のウオノメ様角質増殖が多発する”点状掌蹠角化症”や、足底に痛みの強い胼胝様の角質増殖がみられる"線状掌蹠角化症”はともに、外的刺激なく遺伝子変異による遺伝的な角化症で、処置や外用(尿素軟膏・サリチルワセリン・ビタミンD外用)の対症療法を継続していくことになります。

④更年期角化症
更年期以降の女性の足底に円形に角化局面を生じ、亀裂を生じ歩行時の痛みを伴うことも多く、ホルモン減少の関連が考えられています。若い方でも卵巣摘出を受けた方、甲状腺機能低下の方にも発症することがあるといわれています。

⑤掌蹠膿疱症
炎症期の水疱や膿疱が落ち着くと角質増殖や落屑(カサカサ厚い角質がむける)が主体となることもあり、鑑別が必要です。ビタミンD外用や免疫抑制剤内服・生物学的製剤の注射など治療の選択肢が増えてきたため、あきらめずに加療して寛解維持を目指します。

どのような病態においても基本は対症療法にはなりますが、患者さんの日常生活が良好に保てること、外観上だけでなく痛みなく歩行することができ、筋力低下に進まないようことが目標となります。

また、自由診療ではありますが、踵や足の足底関節にヒアルロン酸やハイドロキシアパタイトなどを注入し歩行時の痛みを緩和させる治療もあります。なにより、足の形や骨格は人それぞれですので個人に合ったインソールや靴を選択し、正しい歩き方を学ぶこと。体幹を鍛えて足の負荷のみで歩かないように心がけること、など足に関するフットケアはますます奥深いと実感した特集でした。私たち皮膚科医も局所の皮膚の治療のみでなく、足から全体のアドバイスができるように心がけたいと思いました。

 

あっという間に6月に入り一年の半分が過ぎてしまいました。 私も姉も、仕事が半日の日と週末は実家のヘルプが増えてきました。実母は認知の症状が徐々に進み、外出時に見失うと迷子になりやすく、また夜間も突然出かけようとすることがあります。自分の体調も限界の父が一人でみるのはすでにいっぱいいっぱい、私と姉のヘルプも精一杯で、実家近くの有料老人施設でショートステイを行って慣れてから入所してもらうことになりました。いざショートステイも初めは大変かもしれませんが、徐々に慣れていってもらうしかない、ということで姉と意見が一致していて話を進めています。父もいろいろ思うことがあることと思いますが、その時々にまた姉と父と相談して母がなるべく穏やかに暮らせるように願っていきたいと思います。

そして変わらず、何事にも体力は必要、運動と休養を忘れずに残り半年を過ごしていきたいと思います。

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