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2023年7月

新しい薬 ベピオローション・アポハイドローション について

あっという間に7月です。皮膚科の講演会や勉強会も多い6月でしたが、6月から処方できるようになった外用薬がいくつかあります。
まず一つ目は、ニキビ面皰の治療薬のベピオゲルの乳液タイプ、ベピオローションです。角質剥離作用のある従来のベピオゲルはそのピーリング作用により、慣れるまで乾燥や赤みが出ることがありますが、ローションタイプはそのピーリング作用はそのまま、乳液状になり、乾燥しにくいのが大きな利点です。出した感じもまるでヒルドイドローションのように白い乳液状でまるで保湿剤のよう。皮膚にのばした感じも乾燥感がなく、毎日夜使用できます。今まで以上に抗菌剤のポイント使いと併用して面として外用できそうです。こうして処方できるようになるまではマルホの研究者の方の長い開発の苦労があったようです。今までのゲルタイプより処方しやすくなりました。思春期の方の赤ニキビの前の面皰にベピオローション、良いです。

6月からの新しい皮膚科薬2つ目は、手のひらの多汗症の塗り薬"アポハイドローション”です。二宮君のテレビCMでも認知度が上がり、今まで悩んでいた患者様から相談を受けることが多くなりました。

腋窩多汗の発症する平均年齢が19.5歳であるのに比べて手掌(手のひら)多汗症の発症平均年齢は13.8歳で若いことが特徴です。
紙やノートやテストを汗で濡らしてしまう、スマホやPCの操作がしにくい、スポーツや音楽楽器が手汗のため制限されてしまう、など、若い方でも学校生活にも支障をきたすことがあり、周囲の目が気になり人との接触を避けるようになってしまうケースもあります。治療法があることの認知が広がっていないために成人になっても手汗のために困っている方は多いと考えられています。
アポハイドローションは、エクリン汗腺に発現している"ムスカリン受容体”に対して抗コリン作用により発汗を抑制しますが、抗コリン薬なので目の中に入ると眼圧が上がるため、寝る前直前に手のひらに塗り、朝は水洗いすることが必要になります。

具体的には、さらっとしたローションタイプの薬を寝る直前に5プッシュを両手のひらに塗り、就寝。翌朝手を水洗いします。治験では12歳からのデータがありますが、それ以下の子供に処方できないわけではありません。
今までは薬もなく我慢してきた方にとっては塗れば効果がある”アポハイドローション”は朗報です。

 

また先日、比較的新しいアトピー皮膚炎の新しい外用薬:モイゼルト軟膏の1周年記念講演会がありました。
アトピー炎症に関与する"PDE4”というサイトカインを抑制する塗薬ですが、炎症を抑えることにより、アトピー性皮膚炎の"寛解維持”(良い状態を維持させる)の治療薬に適している塗り薬です。
辻学先生(九州大学病院油症ダイオキシン研究診療センター)の講演ではアトピー性皮膚炎では、皮膚の角質バリアの "フィラグリン・ロリクリン” が低下することにより皮膚バリアが下がることが分かっていますが、"PDE4B”という成分がフィラグリン・ロリクリンの発現を下げていることが分かりました。モイゼルト軟膏の成分"ジファミラスト”はその"PDE4B”を抑制することにより、フィラグリン・ロリクリンの発現を誘導させてアトピー性皮膚炎の皮膚バリアを改善させます。
つまりモイゼルト軟膏はアトピー性皮膚炎の炎症を抑えるのみでなく、皮膚のバリアが上がることがわかりました。

また、免疫担当細である好塩基球の研究で著名な鳥山一先生の講演では、モイゼルト軟膏の"ジファミラスト”は好塩基球のIL4産生を抑制することがわかっています。アトピー性皮膚炎の方の約半数の方が急性掻痒フレア(急に悪化して強い痒みが出る)を経験していますが、この急性掻痒フレアに好塩基球が関与していると考えられています。
好塩基球が分泌する"ロイコトリエンC4”が "急性掻痒フレア” を引き起こすことがわかっていて、モイゼルト軟膏により急性フレアが予防できるのでは思われます。

アトピー性皮膚炎の治療は、炎症を抑える"寛解導入”の治療と、良い状態を保つ"寛解維持”の治療に分けられますが、モイゼルト軟膏は皮膚バリアを上げる・急性掻痒フレアを予防するという観点からも、寛解維持の時期に有用な治療薬と考えられます。

6月は実家の父が暑さのせいもあり、食事量が減って体力がなくなり姉と交代でヘルプに行く日が増えてきました。できれば施設やホスピスでなく家で過ごしたい希望があり、在宅医療に切り替えるための準備や点滴のために短期間入院することになりました。認知症の母を一人にできないため、母のショートステイ先を探してもらい、バタバタと準備。母には申し訳ないですが父入院期間は近くの施設へショートステイしてもらっています。姉と良く話すことは、認知発症前にはよく、"(親のことよりは)自分たちの家族・生活を第一にね” と言っていた母なので、今のこの状況も多分許してくれるだろうと思います。
自分たちのことを考えると、自分が元気なうちにいずれ娘達には同じように伝えておかなきゃ、と思います。娘たちが罪悪感なく母親を施設に預けられるように。認知を発症してしまうと伝えたくても伝えられないですし……

 

もうすぐ高1の娘たちは夏休みの課題で"オープンキャンパスに行く”ことが必須となり、少しずつ調べたりしています。まだまだ大学受験には危機感ゼロの様子ですが、徐々に大学、それに向けた受験の認識が出てくるのかしら…出てきてほしいところですが、まだまだメイクと美容ダイエットに夢中なJKです。まあ楽しく学校にいくのが一番ですね…そう考えることにします。

 

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