« 2024年2月 | トップページ | 2024年4月 »

2024年3月

乾癬のベース治療 オテズラについて

このまま春の暖かさになってしまうのかと思うような日曜日の今日、乾癬の全身治療の内服薬 "オテズラ”の全国講演会があり、上出康二先生(和歌山 上出皮膚科)・猿渡浩先生(鹿児島 猿渡ひふ科)・五十嵐敦之先生(品川区いがらし皮膚科東五反田)のご講演をききました。

クリニックレベルではまだまだ外用のみの乾癬治療がほとんどで患者さんは現在の治療に満足しておらず、薬を塗ることによるストレスが多いというデータがあげられました。乾癬は痒みだけでなく皮膚症状の見た目から人と同じように温泉やお風呂に入れない、半袖短パンが着れないだけでなく、薬を毎日塗り続けないとすぐに同じ部位にカサカサ目立つ赤みが出てきてしまう、このストレスは医師側が思った以上に大きいものです。

それだけでなく、乾癬の炎症は皮膚のみにとどまらず、手の関節炎(乾癬性関節炎)や併発疾患として肥満・メタボ・糖尿病・心筋梗塞などが合併することがあり、"全身疾患としての乾癬”という概念が提唱され始めています。
手指の乾癬性関節炎が発症すると2年以内に関節変形が出てきてしまうため、早期発見が必要ですが、関節炎よりも乾癬の皮膚症状の方が先行するので皮膚科医の早期の治療介入が大切です。

乾癬の皮膚症状のうち、頭部や陰部に乾癬皮疹がある場合、そして手足の爪病変がある場合は関節炎合併が多いことがわかっています。特に爪病変は乾癬性関節炎の活動性と相関し、乾癬に伴う内科疾患(メタボ、心筋梗塞、糖尿病など)の関連タンパクの増加が認められていることから爪病変がある場合は、乾癬性関節炎やメタボ・代謝疾患・心筋梗塞などの全身疾患の発症に十分気を付けていかなくてはいけません。

オテズラ錠は、乾癬の炎症を引き起こす物質の産生を促す"PDE4”というたんぱく質を抑制する飲み薬で、体内で乱れた免疫バランスを整えて乾癬の炎症を抑えます。炎症をおこすたんぱく質をゼロに抑えるのではなく正常に近付ける"免疫調整薬”です。

全身治療のまずファーストステップとして、乾癬の皮膚症状を顕在化するボーダーラインを上げて症状を出しにくくする薬です。ですから、完璧を目指す薬ではないですが、全身治療の土台としてすすめられ、外用療法を軽くすることが出来ます。

具体的にはオテズラは、一日2回(最初の6日は少量を少しずつ増やします)一錠ずつ内服し、一か月の薬代は3割負担の方で約16,000円かかります。事前の検査は必要なく、光線療法との併用も可能、生ワクチンの接種制限もありません。
副作用として最初の一か月の間に下痢・吐き気や頭痛の症状が半分の方にみられますが、中止するほどでもないことがほとんどで徐々に慣れてくるようです。

乾癬の炎症は全身性に進行することがありうることが分かってきている今、全身療法を早期から考えた方がよいこと、そして全身療法の入口のファーストステップとして"オテズラ” は適しているということがわかりました。ただ完璧に炎症を抑えるというよりは"免疫調整薬”として、外用療法を軽くしたり治療を楽にする、という位置付けということが分かりました。今までのオテズラのイメージが変化し、三先生のお話はとても分かりやすくて、大変有意義なお話でした。今後の毎日の診療に生かしていきたいと思います。

 

娘たちの高1生活も終わりに近付き、今のクラスでの最後のお弁当時間として先生たちに内緒でピザ・ドーナツパーティーをするとのことで何人か分を差し入れました。"チアコママ、ピザ差し入れありがとう~!”とSNSで可愛い動画メッセージをもらい、こちらもハッピー。娘たちを通して少し青春を疑似体験できて、若さと皆の可愛さに自然にこちらまで笑顔になります。息子の時とはまた違ってやはり娘もいいものです。皆かわいく若さパワーあふれて、ピチピチです。高2となるこの春は大学受験もその先にすこし見えてきて、母娘のバトルも少し多くなるのであろうこの1年です。こちらもパワーをためて頑張りたいと思います。

実家の亡父の霊園の名義変更が無事終わり、お墓に報告してきました。実際父のお墓で話しかけると父が本当に聞いているかのように、まだまだ元気だったころの昔の父が聞いている感じがします。娘たちを愛してくれていたなあ、と良き父の姿しか思い出さず、今はしっかりと相続の資料や入所の母についてやるべきことをやっていくのをみててね、とお墓に報告してきました。
経験して初めてわかる亡き親への感謝の気持ち、忘れずに、私自身も子供に愛情を注いでいきたいと思います。

 

 

小児の食べ物アレルギー発症予防のために

メーカーさんからいただいたアレルギー雑誌(皮膚アレルギーフロンティア2023.11月号)に千葉大のテニス部の大先輩である下条先生の座談会が記載されており、小児アレルギーの専門である下条先生のお話を興味深く読みました。
(千葉大予防医学センター 下条直樹先生・中東炎遠総合医療センター 戸倉新樹先生・浜松医大 本田哲也先生)

新生児乳幼児期から、皮膚バリア機能を担うフィラグリンの遺伝子異常があるとフィラグリンが作れなくなり、皮膚の角質バリアが障害されます。するとアレルゲンが外から通過し、アレルギーの2型免疫にかかわるサイトカインが放出されてフィラグリンがさらに作られなくなり、よりバリアが障害される、という負のサイクルが回ってしまいます。
食物アレルギーでは、皮膚のバリア障害による食べ物アレルゲンの侵入が、それに対する食物アレルギーの発症につながることが分かっていて、ヨーロッパの報告ではフィラグリン遺伝子異常でピーナッツ感作からピーナッツアレルギーの発症がすすむことが分かっています。
また下条先生の研究でも皮膚に見える湿疹がなくてもフィラグリン遺伝子異常があると、卵白に対する感作率が高くなることが分かっているそうです。

腸管からの感作に関しては、腸管バリア障害を表すマーカーとして"ゾヌリン”というタンパク質があり、ゾヌリンが高いほど食べ物の感作が多いことがわかっています。つまり腸管も食物アレルギーの感作に関係していて、腸管で感作されたT細胞が皮膚に移行して皮膚炎症を悪化させる基礎研究はあるそうです。
主流は皮膚を介する経皮感作ですが、経腸管感作も食物アレルギーには関連しているということです。

また、アトピー性皮膚炎の炎症マーカーでもあるTARCの生直後の値が高い赤ちゃんほど食べ物アレルギーの発症も高いことから、アレルギーの発症自体は生まれる前から始まっていると予想されています。生まれる前から2型免疫に関わる2型サイトカインが上がっていてそれがバリア機能障害を起こすということです。

アトピー性皮膚炎の予防に関しては、生後数日から生後2か月の間の保湿剤使用により1歳でのアトピー性皮膚炎の発症率が低下すること、また、1歳半での石鹸使用頻度が少ないほどその後のアトピー発症率が上がるとの結果があり、適切な洗浄は大切であるといえます。

食べ物アレルギーの多くは小学校入学前に治りますが、下条先生の研究では小学生(1年~6年)で食べ物アレルギーが治っていない児童では、フィラグリン遺伝子異常が多いことがわかり、このことからも、皮膚バリア異常があると食物アレルギーの感作が長く続き、治りにくいことは明らかです。やはり清潔な状態での保湿スキンケアは重要であると考えます。

次に、小児の腸内環境と食べ物アレルギーの関係ですが、生直後からビフィズス菌やフラクトオリゴ糖を投与してもアレルギーの発症予防には効果なしと解析され、発症を予防するには妊婦さんの時から行う必要があるようです。
妊婦さんが摂取したオリゴ糖は妊婦の腸内でビフィズス菌や酪酸菌を増やし、酪酸菌の出す酪酸は血流にのって全身をめぐり、胎児にも影響する可能性があります。ただ、予防効果が高いということではなく、エビデンスレベルではやっても良いというということだそうです。

近年報告が増えている"食物タンパク誘発胃腸炎 FPIES エフパイス”は、摂取数時間してから激しい嘔吐など消化器症状や低血圧が生じるアレルギーですが、従来の牛乳だけでなく卵黄や大豆・ピーナッツでも起こる症例が報告されています。
欧米ではピーナッツアレルギーの予防として生後5-6か月からピーナッツを与える方がよいとされて摂取がすすんでいますが、ピーナッツを摂取後数時間で嘔吐する症例が増えているようです。日本でも卵黄のFPIESが増えているそうですが、その場合卵白から食べてもらい、1歳くらいから全卵のスクランブルエッグに進むとほとんどが卵黄も症状なく食べられていくそうです。

通常の食べ物アレルギーにおいても採血による特異的IgEが陽性だからといってその食べ物の経口摂取をやめてしまうと、その後本格的にIgEに対する感受性が亢進して即時型のアレルギーが起こりやすくなってしまいます。ですから、採血で陽性でも"食べるな”でなく摂取が可能であれば食べたほうが良いということです。感作が起こり何かの食べ物アレルゲンに対するIgEが産生されているということ、と、食べ物アレルギーの発症は違う、ということです。
皮膚の炎症をきちんと抑えると、フィラグリン遺伝子異常があっても食べ物アレルギーを発症しませんが、感作は防げません。皮膚炎症が長く続くとIgEの親和性も高くなりアレルギー発症につながりますので、乳児早期から皮膚炎症をしっかり抑えることはやはり重要です。

また乳児の卵アレルギーは、ナッツアレルギーの高リスク因子であるため、卵アレルギーの乳児はナッツも調べ、陰性ならどんどんナッツも摂取させる、陽性なら管理のもとで少しずつトライしていったほうが良いそうです。どんどん食べていきナッツに対する耐性を誘導していかないと、本格的にナッツアレルギーを発症してしまいます。

最後にビタミンDと食べ物アレルギーとの関連ですが、日本では紫外線予防の観点から乳児期にあびる紫外線が極端に少なく、母乳栄養児も多いため圧倒的にビタミンDが不足しているそうです。下条先生の研究では、ビタミンDを新生児期から投与すると、しない群に比べて卵アレルギーの発症率を3分の1に下げたそうで、アレルギー反応を抑える制御性T細胞を誘導するビタミンDは、食物アレルギーの発症予防に役立つことが考えられます。小児だけでなく、日本の若者のビタミンD不足が言われている昨今、皮膚科医による過剰な紫外線予防の啓発も考えなく直さなくてはいけないと思いました。卵黄は鮭とならびビタミンDが豊富な食材であることから、乳幼児期早期から卵黄は早くから摂取させたほうが良いようです。

 

小児アレルギーの専門である下条先生の最新の情報を教えていただき、私自身もアップデートすることが出来ました。アレルギーに関しては新しい情報の更新が多い分野です。今後も古い情報から新しく順次更新していく必要性を改めて感じました。

 

先日娘たちの保育園時代のママ友5~6人で半年ぶりに会合…6時間も喋りまくりました。10年以上親子ともども知っている仲間が集まると、子供の話のみでなく自分の話やら親の話やら話は尽きません。仕事はみなバラバラですが、カッコつけることも見栄を張ることもなく自分をさらけ出せる仲間は宝物です。歳老いていく親のことや、末には子供が間もなく旅立った後の自分たちのこと、はじめは子供経由で結びついていた友人も、子供が大きくなってくると"私”自身の価値観や考え・情・気遣いなどが自分と合致した方々……
歳により話題は変わるけれど、その人その人の雰囲気や個性や価値観は昔と変わらず、お互い学ぶこともあり自分を見直せるステキな友人たちは、今後自分たち自身がもっと年老いてきたとしてもずーっと大切な存在です。
私自身もいつ皆に会っても変わらない、穏やかな心を持てる毎日を過ごしていきたいと思います。

 

 

« 2024年2月 | トップページ | 2024年4月 »