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2024年5月

早くも、虫刺されについて

まだ5月が始まったばかりですが初夏の暑さのせいか、虫刺されの患者様も出てきました。日本皮膚科学会会誌に谷口裕子先生(九段坂病院)の虫刺症に関する論文が掲載されていましたので最近の見解をチェックしました。

コロナ明けで海外渡航も増えいろいろな種類の虫による皮膚症状が増えてきましたが、通常の東京都心の生活では、蚊が圧倒的に多くなります。まず、蚊に刺されたことのない新生児では抗体もなく無反応ですが、刺される回数が少ない乳幼児期は遅れて強い反応(1~2日後に腫れが強くでる遅延型反応)が、幼児期~青年期は遅延型反応と即時型反応(刺されて反応がすぐ出る)が刺された回数により両方出ることが多く、壮年期になると即時型反応のみが、さらに高齢化すると無反応に移行します。つまり、刺された回数により症状に個人差が生じます。

また、ハチ、ムカデ、ブユ、などは刺されていくうちに特異的IgE抗体を産生するようになり、アナフィラキシーをきたすことがあり、注意が必要です。

虫刺されの種類の鑑別として、皮疹の部位・刺された時の痛みがあったか(ハチ、アブ、ムカデ、クモ、アリは痛みあり)・出血したか(ブユ・アブは出血あり)・そして何より、遅延型反応の場合1~2日前の被害時期の行動を問診し、診断をつけます。
最近増えているトコジラミの場合、初めて数匹に刺された場合、皮疹が出るのが1週間後であるので少し前の旅行歴なども大切です。

蚊以外の虫刺されの特徴

・イエダニ:露出していない、柔らかい部位(腋窩・腹部・胸・太もも)に好発します。

・ネコノミ:土の中に産卵し、成虫になると吸血するため、猫や犬などとの接触がなくても庭や公園にいる間に刺されることもあります。ネコを飼っていてネコノミに繰り返し刺されたヒトは、ついには刺されても無症状になります。

・トコジラミ:海外だけでなく、国内のホテルや旅館・インターネットカフェなどでも増えてきています。普段昼間はベッドやタンス、カーペット裏側に潜んでいて、夜間暗くなると出てきて露出部位を吸血します。刺されているヒトが動くと口器を差し替えて満腹まで近くを吸血するので数個の皮疹が列で並ぶこともあります。駆除にはカーバメート系またはオキサジアゾール系殺虫剤が必要になります。

・毛虫皮膚炎:この時期(6~9月)に0.1mm程度の毒針毛が触れて赤い丘疹が多発します。チャドクガが椿・サザンカ・お茶の木に生息し、モンシロドクガは桜や梅の木に生息します。

・ブユ:夏の高原・ゴルフ場などの水辺で下肢を刺されることが多く、数日後に腫れてぱんぱんにいたくなることもあります。

・ムカデ:5~9月に手でムカデを払いのけた時に刺されることが多く、毒牙が対になっているため2か所の出血斑が見られ、翌日以降に腫れが強くなります。稀にアナフィラキシー反応を生じます。

・疥癬(ヒゼンダニ):家庭内や病院、集団生活を送る施設、保育園などで長時間患者の肌の直接接触や寝具や衣類の間接接触でヒトからヒトへと感染し、皮膚角質に寄生することにより、痒みの強い丘疹や結節を生じます。通常の痒疹の治療として外用ステロイドを続けると疥癬は増殖し悪化するので痒疹と鑑別することが大切です。腹部や四肢に散在する赤い丘疹と手の指の間のカサカサした皮疹(疥癬トンネル)、陰部の結節が特徴的です。また乳幼児では手のひらの水疱やかさぶたが特徴的です。また、疥癬の治癒後に結節が長時間残存することがあり、通常は治癒の反応後の結節で疥癬の残存ではありませんが、長期間続く場合はリンパ腫との鑑別も必要となります。どちらにしろ、長く治りにくい掻痒強めの丘疹は疥癬も疑い検査することが大切です。

これから夏に向けて虫さされが増えてきます。たかが虫刺されですが、正しい診断と対策指導を心掛けたいと思います。

 

この連休中は実家の片付けやらで毎日FEEL CYCLE で運動しながらのんびりと過ごしています。
毎月いただくラジオのドクターサロンの雑誌に動脈硬化の予防における、運動療法について昭和大学循環器内科の木庭新治先生の対談がのっていましたので、遺伝性高脂血症を持っている身として真剣に読みました。

まず、長く続けられる"有酸素運動”は糖や脂肪酸を使って効率よくATPを産生できるので、効率の良い運動です。1日30分以上(10分を3回でも可)を週5日以上、1週間に150分以上の運動で、LDL(悪玉)コレステロール、中性脂肪を有意に低下させ、HDL(善玉)コレステロールを有意に増加させることがわかっています。
次に、筋肉に負荷をかけて行ういわゆる筋トレ(レジスタンス運動)でも同様にコレステロール値を下げる効果がありますが、残念ながら日本人対象の研究はありません。

有酸素運動でも、激しい運動だけでなく軽めの運動でも活動時間が長いと将来の動脈硬化予防のエビデンスがあることがわかっています。軽めの運動でもとにかく長く行うことが重要です。目標は成人で60分、高齢者は40分が(分割でもよいので)理想です。

筋力を保持、増加させるのは筋トレなどの "レジスタンス運動” がすすめられ、例えば血糖改善で筋肉を介するグルコースの利用には有酸素とレジスタンス運動の併用がとても効果的です。

また、じっと座って仕事せずに時々立った方が糖尿病の発症率が下がり、具体的にも30分ごとに立ち上がりそこで少し歩くだけで体のインスリン感受性が増加することが示されています。仕事の合間に、時々立ち上がり動くことが大切なのですね……

有酸素運動でも、激しいジョギングでなくても、ウオーキングやサイクリング、ウオーキングは少し速足が強度が上がり効果的です。歩く距離の目標は、10分で1000歩つまり1時間で6000歩くらいです。
ジョギングの場合はかなり激しく長い時間をスピードを出して走っている集団は必ずしも長寿でなく、軽めジョギングの方が最も長寿であると示されています。確かに私も長く続けているFEEL CYCLE で一番強度の強いプログラムばかりこいでいると何か疲れてかえって老けたような気分になります…
最後に新しい効果的な動きとして”インターバルトレーニング”が有酸素よりも効果が大きいことがわかっています。少し強めの有酸素の合間にゆるめ運動を繰り返す、具体的には1~2分間隔で少し早く走って、またゆっくり歩く、そんな運動が良いようです。
なかなか道路でやるには勇気がいりますが、ジムでもトレッドミルでは出来そうですし、私の続けているFEEL CYCLE でも1曲の中でも激しい部分とゆったり部分があるので、次のレッスンではインターバルトレーニングを意識しながらこいでみようと思いました。

汗をかいて美肌をめざす+ 体力維持やストレス発散の目的だけでなく、動脈硬化や糖尿病予防のためにも運動療法、継続していきたいと改めて思いました。特にこれからの本格的な夏に向けて、熱中症予防の暑熱順化のためにも汗をかくくらいの "運動療法” 、習慣にしたいと思います。

 

 

 

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