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2024年8月

慢性蕁麻疹の治療について

先週の夏休み前にいただいた資料に慢性特発性蕁麻疹についての専門の先生方の講演がいくつかあり、休み中にゆっくりチェックしました。
(大阪医科薬科大学の福永先生、昭和大学の猪又先生、日本大学の葉山先生、島根大学の千貫先生)
特に誘因なく生じる特発性蕁麻疹の中には血管性浮腫(顔やまぶた、口唇が腫れる蕁麻疹)も含まれ、臨床症状も病態も様々です。

標準の治療である抗ヒスタミン剤の治療でコントロール不良の慢性蕁麻疹患者さんは60%もいると言われていて、ステップアップ治療が提唱されています。

まずは抗ヒスタミン剤2倍量増量、または2剤併用を試みます。次のステップは、さらに加えて胃薬で用いるヒスタミン2拮抗薬や抗ロイコトリエン薬を重ねます。それでも効果が乏しい場合は抗IgE抗体であるゾレア注射剤(オマリズマブ)へ変更もしくはプレドニン内服、シクロスポリン内服(保険外)内服というステップになります。最近はこれに加えてIL4/IL13阻害剤であるデュピクセント注射剤が蕁麻疹の適応にもなり、期待できる治療の一つになりました。

IL4はB細胞から産生されるIgEタイプの自己抗体やIgGタイプの自己抗体を誘導し、蕁麻疹の慢性化に関与することがわかっています。また、IL4/IL13は自己免疫性のシグナルの増強やかゆみ、そして浮腫などを起こします。
デュピクセントはIL4/IL13を抑制するため、これらの蕁麻疹の原因を直接抑え、IgEの働きを抑えるのではなくIgEの産生部分を抑えるため、葉山先生によると"蛇口から出てくる水を止めるのではなく、蛇口の元栓を閉める”イメージだそうです。

また、デュピクセントはアトピー性皮膚炎・気管支喘息・結節性痒疹・慢性副鼻腔炎にも適応がある薬なので、これらの疾患が合併している蕁麻疹患者さん、IgE高値の方には使いやすいと考えられています。また、事前にIgE値の採血が必要で通院注射が必要なゾレアと異なり、デュピクセントは事前の採血は必須ではなく自己注射が可能ですので患者さんにも負担が少ないと考えられます。

以前に比べると慢性蕁麻疹の治療も選択肢が増え、その分その方々それぞれに合った治療方法を的確に情報提供していく必要があると感じました。

夏休みも後半に入り、本日、高2の娘達の学校個人面談が二人分ありました。
付属校でもないため、話はどうしても大学受験の話です… 学校で受けた河合塾模試の結果を見せられて低ーい偏差値やら今後の残りの高2の進め方など、耳が痛ーい話を聞いてきました。結局のところ学校推薦は到底取れないし考えていません!一般受験で学科実力一本で頑張るしかないです、結局勉強やるしかないですよね……という話に。お二人ともご経験豊かな男性の先生である程度おおらかで細かくなく、私としては大助かりの面談でした。大学受験……長男のときの親も辛い苦しい受験期がまたやってくるかと思うと今から少し憂鬱です。でも、一般受験の苦しさを乗り越えるくらいの逞しさ、社会に出てこの先自分で生き抜いていかなければならない彼女達の今後の長い人生に必要だと思いながら、親として(あくまでも理想では)美しくスマートに支えてあげたい、と思いました。
娘たちの面談のあとにホームに入所している母の面会にいきました。昔から大好物のアイスを差し入れると子供のように目を輝かせて“食べたい!”と食べる母を見ながら、自分と娘達の将来の姿を重ねてしまい複雑な気持ちになります。私が娘達の将来を案じ考えるのと同じように、目の前の母も私や姉のことを考えてくれていたのだと思うと涙が出てきましたが、母の残りの人生が穏やかで幸せであるように、とにかく笑顔でまた面会にいきたいと思いました。

円形脱毛症とオルミエントについて

猛暑が続く7‐8月です。少し外を歩いただけでも熱中症になりそうな暑さです。皮膚科の講演会も週末ごとにありますが、今回はウェブで拝聴させていただきましたが、先週末Lillyさんの講演会で円形脱毛症で有名な杏林大学の大山学先生のお話をうかがいました。

まず、円形脱毛症は2つのフェーズに分かれ、まずは成長期(伸びる毛)の毛根部に炎症性のIL15(インターロイキン15)などのサイトカインが集まり炎症により免疫寛容が破綻して生じる"急性期”が1-1.5か月続きます。その後、疑似的な休止期(抜ける毛)に入りますが、この時期は炎症細胞が毛根でくすぶっていていわゆる "慢性期”に入ります。
オルミエントはこのうち、急性期が終わった慢性期(疑似的な休止期)に適応になる飲み薬です。炎症細胞がくすぶるときに関与するJAK(ヤヌキナーゼ)を阻害することにより、円形脱毛症の慢性期に効果のある飲み薬です。
最近円形脱毛症は(AA)、AAcubeといって3次元の3つの軸(病期・年齢・重症度)のポジションによって治療法を選択することが提唱されています。オルミエンとはこのうち、慢性期・成人・重症の円形脱毛症に適応となります。

治験では、慢性期、18歳以上、脱毛面積50%以上の方にオルミエント4mgを内服してもらった場合、内服9か月目で脱毛面積20%以下に改善する割合が50%と有効性が確認されました。

Lateレスポンダー(遅れて治療効果が出てくる方)がいるのも事実で、9か月目まで効果なく9か月目から急に生えてくる(効果が出てくる)方は、罹患時期が長く脱毛面積も多いいわゆる重症の円形脱毛症の方が多いそうです。
また、ゆっくりジワジワと効果が出る方もいるので、諦めずに2年近く続けてようやく反応が出る方もいるようです。薬代が高くお金もかかりますし、なかなか途中で諦めてしまいそうですが、2年を目安に継続できれば理想的です。

オルミエント内服を1年1か月継続して有効である方は飲み続けると、2年2か月までは治療効果が維持されることがわかっています。

逆に1年1か月継続で効果的な方は、内服をやめてしまうと治療効果が2割程度に落ちてしまい、オルミエント4mgを2mgに減量すると、治療効果は5割に落ちてしまうことが分かっています。早期にビシッときくearlyレスポンダーの方に比べ、効果が持続せずゆらぎがある方は減量すると効果が落ちてしまうようです。
内服を"やめる”と"減らす”を比べると、まだ減量のほうがまだ良く、減量中で悪化した場合また増量するとまた良くなるそうです。
また、オルミエントを内服しているのにも関わらず脱毛が再発してしまう場合、脱毛量が少ない場合は内服を続けると良くなるが多いそうです。

気になるのは、どの方が early レスポンダーなのか、 late レスポンダーなのかの見分けが重要になります。大山先生によると、開始9か月の段階で、拡大鏡で黒い硬毛化の気配が見られるとレスポンダー(効果がでる)の可能性が高いそうです。

円形脱毛症は従来有効的な治療法が少ない疾患でしたが、オルミエントやリットフーロなどの新しい内服薬がスタートしそれらの有効性も報告が多くなっています。今後も情報をアップデートしていきたいと思います。

夏休みに入り高2の娘達のお弁当がなくなり少し余裕の日々ですが、毎日寝てる二人に向かって"図書館行きな~”と声をかけて朝出かけるものの、適当にゆっくり起きて二人で化粧して重役出勤で図書館やら塾やら遊びやら、そんなあっという間の夏休みです。
保育園時代のママ仲間に合うと、お互いに大学受験の話や自分たちの仕事の話や兄弟の話、親の話……話は尽きません。でも、赤ちゃんや子供達の時代からお互い知っているママ達がどんなに有難いか実感します。昔に比べその子その子がどのように成長しているのかがわかり、ヒトの子ですが親戚のおばさんのような気分になり、お互いに慰めあったり褒めあったり。表面的でなく心からのアドバイスをくれる仲間たち、子供がいなかったら出会えなかった仲間たちの有難みが歳とともに感じます。
歳をとると気を使いながら人と会うことがもったいなくなって、本音で話せる仲間との時間が何よりの自分のご褒美になります。

誰も不在になった実家の売却が決まり、実家の全撤去や決済がようやく終わりました。最終日、空っぽになった部屋を見渡すと少し寂しいような気持ちになりましたが、片付けが終わりすっきりした気持ちも。入所している母に報告に面会にいくと、実家の写真を見てももう忘れちゃったわ~と、私のことも娘とはわかっていないと思いますが、警戒心なく、でも昔の母のように、愛想よく、話を合わせてくれます。そんな母の姿に安心し、社交的であった昔の母の面影を思い出し変わらないな~と少し嬉しくなりました。有料施設に入所して最初は少し不安もありましたが、穏やかな母をみて安心です。姉と二人でまた洗濯物交換にせっせとまた通いたいと思います。

 

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