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2024年9月

アトピー性皮膚炎の皮膚バリア障害の原因について

夏休みにデュピクセントやイブグリースなどの注射剤を開始したアトピー性皮膚炎のお子さん、学生さんが多くいらっしゃいますが、1~2か月経過した現在、痒みや紅斑、皮膚感染症のコントロールの成果が少しずつ出てきています。これらの注射剤は、アトピー性皮膚炎で低下がちな皮膚バリアを上げ、感染症の予防のみでなく、皮膚をもっちり肌に変えていくような効果があります。

アトピーにおいて皮膚バリア機能が障害される原因としては、遺伝的な要因・炎症や掻把による2次的な要因のほか、皮膚や腸内に常在する微生物コミュニティである“マイクロバイオーム”などが挙げられます。

医学雑誌“皮膚アレルギーフロンティア”に杉田和成先生(佐賀大学)・出原賢治先生(佐賀大学)・中島沙恵子先生(京都大学)の座談会が掲載されていました。

まず皮膚バリア機能障害の改善には、炎症をしっかり抑制しなければバリア機能は充分に回復しないことが分かっていますし、炎症・かゆみ・皮膚バリアそれぞれが密接に関わっていてどれか1つを良くしても長期に良い状態を保てないようです。
この3つ=かゆみ・炎症・皮膚バリアをどう治療していくか、それぞれの患者さんごとにどれを主に抑えていくか、その方その方の特徴をつかみ、指標となるバイオマーカーが少しずつ増えてきています。
アトピー性皮膚炎の病勢を示すマーカーとしては、好酸球数・LDH値・TARC(タルク)値・SCCA2(squamous cell carcinoma antigen 2)値が挙げられ、さらに、“ペリオスチン”はアトピー性皮膚炎の知覚神経に作用して痒みを引き起こすバイオマーカーが最近判明しています。それらを指標にしながら、個別にカスタマイズされた治療方法を組み合わせていく、オーダーメイド治療が今後将来考えられていくものと考えられます。

また、アトピー性皮膚炎の皮膚に生着する黄色ブドウ球菌が増殖すると、皮膚バリア障害を引き起こしたうえ、皮膚Th2の免疫誘導が行われ皮膚炎症を悪化させることが分かっています。
松岡悠美先生(大阪大学)の論文によると日本人乳児の頬の皮膚における実験にて、生後1か月の乳児(1歳児のアトピー発症有無に関わらず)の約45%に黄色ブドウ球菌の定着を認められ、また、生後6か月の乳児の黄色ブドウ球菌の皮膚定着が認められるとアトピーの発症リスクが顕著に高まったというデータがあります。このことから、もともと存在する黄色ブドウ球菌が何らかの要因で排除されるとアトピーは発症しにくく、逆に黄色ブドウ球菌の病原性が保持されると、ブドウ球菌が定着しアトピー発症を引き起こすことが予想されています。
今後、アトピー性皮膚炎の治療の1つの選択肢として、黄色ブドウ球菌のアトピー性の皮膚に対する病原性を低下させるような治療の研究がすすめられることも期待されます。

同じアトピー性皮膚炎において、同じ治療を行っても効果の高い方と効果の低い方がいるのが事実ですが、アトピー皮膚炎の多様性を考えると仕方ないとも思われます。今後はその方その方のバイオマーカーや指標をもとに、アトピー性皮膚炎患者さんの膨大なデータに基付く治療の可能性も面白いと思いました。
デュピクセントやイブグリースなど皮膚バリアも改善する治療法も外来でできるようになり、選択肢はかなりこの数年で増えてきました。
注射剤や外用薬・内服薬も現在でもその方その方に合わせたオーダーメイドで医師の経験をもとに行っていますが、今後はさらにそれに加えてデータベースをもとに治療法を判断するような時代がくるのかもしれません。


秋になり高2の娘たちの塾も増え、その後の食事や図書館へのお迎え(過保護?)などで毎週があっという間に過ぎていきます。本当に大学受験は本人たち次第で、いくらママ高2の秋は既にめちゃくちゃ勉強してたよ、と言っても全く響かず~。本当に苦労します。比べても仕方ないですが長男の時とは違い本人たちに任せきれない不安感がありますが……。まあ下の子たちって、そんなものですね。
私も今年は真面目に講演会や学会で勉強してその姿を見せていくしかないとも思います。
バレエエクササイズとバイクエクササイズの運動と、食物繊維タンパク質を心掛けた食事と、睡眠と、勉強と、今年残り数か月を健康に過ごしていきたいと思います。

 

 

 

白斑の治療について

この連休のなか日は、専門医のポイントを取るため仙台の講習会に行き、最新の白斑加療について話をうかがいました。まずは白斑の病態について近畿大学奈良病院の大磯先生に、最新の加療について大阪大学の種村先生にうかがいました。

まず、白斑とは、メラノサイトの選択的消失しますが、これはほとんどがメラノサイトの自己免疫(自分の細胞を攻撃してしまう)により生じると考えられ、遺伝因子と環境因子によって生じます。

尋常性白斑の病型は、分節型(皮膚の分節に一致して片側に生じる)と、非分節型(分節に関係なく多数生じる)、未分類型(1か所のみや、粘膜型)に分かれますが、分節型は若年者発症が多いと言われています。

発症の起因として遺伝因子が80%、環境因子が20%と言われますが、最近の傾向として環境因子の影響が強くなり、中高年発症者が増加しています。環境因子として海外では肥満傾向・マグネシウム・ビタミンD欠乏傾向・豆類摂取不足傾向の報告がありますが、そのほか紫外線や皮膚掻把などの物理的因子・薬剤や化学物質による化学的因子・微生物細菌叢やCOVID19関連などの生物学的因子があげられます。

病態時期は、メラノサイトが自己免疫性に障害される過程の前の、
・自己免疫感作期 ・自己免疫反応期(非顕在性) 
細胞障害性T細胞(キラーT細胞)がメラノサイトを障害し病変部が進行する
・進行期  
局所免疫応答が残存し、その後消失する
・非進行期/安定期 
に分類されます。

次に、白斑の治療についてですが、病態時期と年齢・分節型か非分節型かなどにより異なります。

・外用 ステロイド、タクロリムス(プロトピック)、ビタミンD3 海外ではJAK阻害剤外用

・紫外線(ナローバンド、エキシマ) 白斑メラノサイトと幹細胞を活性化

・ステロイド内服 

・外科的治療 分節型+1年以上進行しないとき

が挙げられます。

外用ですが、アメリカでは日本のコレクチム軟膏より濃度の高い、JAK阻害剤1.5%濃度のルキソリチブ(オブゼブラ)クリームが承認され、有効性が報告されています。(1日当たりの単価が、JAK阻害内服薬と同じくらい高額ですが。)

また、タクロリムス(大人用プロトピック)外用と紫外線の併用が、再発の予防に有効であるという報告もあります。

紫外線は週3日が理想的であまりに頻度が少ないと効果がうすく、total 200回まで照射可能、earlyレスポンダーで48回(週2回で6か月)、lateレスポンダーで72回(週2回で9か月)と考えられ、できれば週2回で最低半年(6か月)はトライし、9か月過ぎても反応がなければ再考することがすすめられます。

また、12歳未満の小児の発症の特徴として 
・体幹や四肢に生じやすい ・治療により色素再生しやすい ・家族歴が多い ・分節型が多い ・自然寛解が期待できる
が挙げられ、進行例でも早期に治療介入すると高い効果が得られるようです。

子供でも大人でも、進行例ではステロイドもパルス療法が必要になるため、専門の先生に紹介する必要があると思いました。

また体幹は改善しても手指は白斑が残存しやすく、種村先生はステロイド(ケナコルト)局注を行ったり(痛みも強いですが)、首や胸背中などの体幹難治例ではフラクショナルCO2レーザーで表面を少し削った後にエキシマ(紫外線)を照射することもあり、効果を上げているそうです。

それでも難治な例の部分的なカモフラージュとして、GRAFA社のダドレス液(5%DHA Dihydroxyacetone)は塗布して約6時間で角層内へ浸透完了し、約3日間肌色が持続するというもので、患者さんのQOL が上がります。

今後の展望として、アメリカではJAK阻害剤(キラーT細胞がメラノサイトに遊走する過程にJAK-STAT経路が関与)の内服薬 “リトレシチブ” の有効性が報告されていますので、日本でも円形脱毛症に適応のあるこの“リットフーロ”などJAK阻害剤が難治例の治療の主流になってくるのではないかということでした。今後も新しい治療や、来年に更新される新しいガイドラインもチェックしていきたいと思います。


週1‐2回ほどしか運動する時間がないと腰が痛くなり、トシを実感しますので、必要に迫られて“カーディオバー”やFEEL CYCLE で運動するようにしています。60分や45分だけでも思いっきり有酸素運動して汗をかくと腰も軽快し、体がスッキリすると気持ちもスッキリします。
まだ蒸し暑い9月ですが、運動でなるべくサラッとした汗をかきながら少しでも気持ちよい毎日を過ごしていきたいと思います。

 

 

 

 

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